ほんとうの幕開け

8月が終わればいつも決まって今年は残り三分の一。あと4か月になります。スピッツの4番目のアルバム(『君が思い出になる前に』を含む)収録曲『夏が終わる』。同年のシングルカットのB面です。この3年くらいあとにリリースされる『チェリー』の予兆のようなサウンドはホーンセクション、ストリングス、ランパーカスにじわじわにじむ深みのあるアルペジオギターなどのサウンドがおしゃれ。“遠くまで うろこ雲 続く 彼はもう 涼しげな 襟もとをすりぬける”に繰り返し回帰する歌詞が簡潔で、風通しが良すぎて、少し寂しくて夏が終わる無情さと重なります。言葉の外側の含みが豊かです。理知的クールなオシャレ曲。ちなみに本曲の発表となった1993年の夏は冷夏だったそうです。現代は「暑すぎた夏」が恒常的になってしまいましたが……(この記事の執筆時:2026年夏)。

夏はハイシーズンの筆頭。人生のハイライトの比喩のようにもおもえます。しかし青春以降のほうが長いのです。青春体験をずっとひきずって歩くとも解釈できるし、そこからほんとうの長い夏がはじまっているのかもしれません。

夏が終わる スピッツ 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:草野正宗。スピッツのアルバム『Crispy!』(1993)に収録。

スピッツ 夏が終わるを聴く

剥き出しの青さは残酷で無慈悲です。この曲がほんとうに映しているのはそういうひりひりする辛さ。スパッと切れる鋭さ。それに由来する、長く尾を引く中間色。

そんな気がするのですが、とにかく音数が豊かでおしゃれ。ピチカート・ファイヴみたい。エレキトリックピアノがぽぅんと過ぎり、生暖かく中低域のホーンが背中をなでます。

違う、おれにはほんとうの味方ってそんなにたくさんいるわけじゃないんだ。

でも社会の有象無象と出会っておりあっていきていかなきゃいけない。

その意味での無慈悲さもあります。ただ青く鋭いままではいられないし、青く鋭いことはそれ自体が境界的で中間色でもある。

「深く潜ってたのに」のところでD→Eと、Cメージャーキーにない世界の響きがふりそそぎ、湧き、ふつふつと煮えてくるのですがすぐGに接続・経由してCキーに戻り、くだんの「遠くまでうろこ雲続く 彼はもう……」のフレーズに繰り返しもどってきてしまう。

心の景色は経過して変化する。引き出しの内容もごちゃごちゃと増えていく。でもずっと小中学生くらいの頃の学習机についたままの人格が窓に吹く風の色を見ているのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Crispy!君が思い出になる前に

参考歌詞サイト 歌ネット>夏が終わる

スピッツ 公式サイトへのリンク

スピッツのアルバム『Crispy!』(1993)