背景 おれもそれやりたい

2026年、私の最も敬愛するバンド、くるりが結成30年の節目を迎えます。色んな時代に色んな挑戦や仕事をして色んな曲を発表してきたくるり。いちリスナー、ユーザーとしても、日々いろんなきっかけでくるりの曲にふれ、意味を得たり価値を感じたり心をうごかしたりしており、そうした意味やきっかけ、関係のレイヤー(層)は非常に大きく広く、厚く・深く、複雑なものです。

近日、多くのくるりファンがバンドの30周年にちなみ30選曲を披露しています。おれもそれやりたい!……しかし、私にとってくるり作品の海・空・宇宙はあまりに大きく広い。あえて外側にヒントや記憶のしっぽを求めずに……つまりネットや情報物質との接触、ノイズを断った環境で、いまこの瞬間の青沼詩郎(私です)に潜る形で直感的にパっと思いつく「30周年に聴きたいくるり曲」を挙げ、30曲に達したら潔くやめる方法をとってみました。

1 ハイウェイ

2 東京

3 How To Go

4 WORLD’S END SUPERNOVA

5 琥珀色の街、上海蟹の朝

6 ロックンロール

7 ジュビリー

8 ハローグッバイ

9 ばらの花

10 奇跡

11 赤い電車

12 Morning Paper

13 春風

14 シャツを洗えば

15 潮風のアリア

16 宿はなし

17 男の子と女の子

18 京都の大学生

19 キャメル

20 愉快なピーナツ

21 loveless

22 Liberty & Gravity

23 THANK YOU MY GIRL

24 水中モーター

25 ワンダーフォーゲル

26 ハッピーターン

27 ワンダリング

28 坂道

29 ブレーメン

30 太陽のブルース

31 真夏日

観点をカテゴライズ

31曲なのはご愛嬌。さて、まるまる1曲聴いたらざっくり5分と仮定すると、30曲ほど聴くとたぶん2時間半以内程度でしょう。1曲につき5分くらいは聴いた感想を書く時間が欲しいなぁと思うと、「聴いて書く」をやると倍の5時間くらいかかる可能性があります。それくらいかけて全部やってもいいのですが、せっかくの30周年です。上の項に私が挙げた約30(31)曲について、私がどんな無意識(直感)の下に選出したのか、直感の正体を言語化して整理してみます。そしてそのカテゴリにあてはまる曲だけを一度抽出し、なんなら「そのカテゴリテーマだとはっきり分かれば、この曲も」という思いつきを新たに加えるのを自分に許可してみましょう。

1990~2000年代を高校~大学生くらいで過ごした人(≒同世代)とワイキャイしたい

1 ハイウェイ

2 東京

4 WORLD’S END SUPERNOVA

6 ロックンロール

9 ばらの花

17 男の子と女の子

3 How To Go

16 宿はなし

28 坂道

25 ワンダーフォーゲル

リバー

くるりがバンドを結成して10年以内くらいまでの頃、私はざっくり中高校生~大学生くらいでした。自分が精神面と社会面での自立に向かう境界人間だった頃にどんなくるり曲に触れたか。おおむね似た年代、似た境遇の人とそれらの共有を試みたい同胞愛のようなものが自分のなかにあるのに気づきました。

あえて最初につけた思い付き番号を残してあります。番号がない曲はそのカテゴリテーマでふと思い出して書き加えた曲です。

ライブで存在感

5 琥珀色の街、上海蟹の朝

12 Morning Paper

18 京都の大学生

16 宿はなし

9 ばらの花

1 ハイウェイ

6 ロックンロール

2 東京

29 ブレーメン

19 キャメル

27 ワンダリング

22 Liberty & Gravity

15 潮風のアリア

everybody feels the same

このカテゴリテーマ「ライブで存在感」はきわめて期間が限定される私の見聞です。私が純情息子(くるりのファンクラブ)会員になったのは2023年で、くるりのライブツアーやくるりが主催する京都音楽博覧会を“生”で観に行くようになるのもおおむねそれ以降です。コロナ禍の頃の配信形式の“音博”は観ました。それまでは主に、くるりの録音作品に魅せられていたファンだったのですね。

俺的This is Quruli

9 ばらの花

6 ロックンロール

1 ハイウェイ

5 琥珀色の街、上海蟹の朝

27 ワンダリング

11 赤い電車

29 ブレーメン

20 愉快なピーナツ

3 How To Go

30 太陽のブルース

31 真夏日

Remember me

Birthday

Superstar

だいぶ曖昧なカテゴリですが、おそらく前項に紹介した、「同年代とワイキャイ希望」と「ライブでの存在感」に、「音楽愛好者一般、社会、青沼詩郎(私)」それぞれから注がれる視線の折衷案をとったのが本項目の「俺的This is Quruli」だと思います。俺(青沼詩郎)が思う、音楽好きさんも社会一般も青沼詩郎個人も納得する塩梅のくるり曲、ということだと思います。

録音物として(オトが)好き

3 How To Go

8 ハローグッバイ

23 THANK YOU MY GIRL

24 水中モーター

13 春風

真夏の雨

ずばり収録されているオトが好きなくるり曲。演奏映え要素少々ですが、主に録音あるいはミックス上の音質や加工の手技を経由した録音物としての個性がどれだけノーガードの私に沁みついているかという点だと思います。でも結局「同年代とワイキャイしたい」のニラミがかなりこの項目にも影響してしまっています。ホントは全然もっと(ほかにも)あると思う。

霊感に来る

aleha

7 ジュビリー

10 奇跡

Remember Me

California coconuts

oh my baby

瀬戸の内

doraneco

29 ブレーメン

リスナーとして泣いちゃう曲。私の思う「同年代とワイキャイしたいくるり曲」以後の曲が目立ちます。どこかの誰かが思っているかもしれない感情を憑依したようなイタコ的ソングライティングと、キャリアの蓄積と正比例して増す岸田さんのボーカル表現の奥行きがこのカテゴライズ項目の重要要素だと思います。

コラボや他媒体とのタイアップ・主題歌アイデンティティ

14 シャツを洗えば

11 赤い電車

3323

奇跡

1 ハイウェイ

コトコトことでん

愛の太陽

SAMPO

八月は僕の名前

特別な日

Remember Me

誰かからのお願い。誰かとの共同。ほかのメディア(媒体)作品や組織、集合体の特長、気風、歴史、文脈を音楽に翻訳、解釈・抽出し進化・発展させるクリエイティブチームとしての職能、趣味・研究の伝道者としての愛がしたたるカテゴライズです。発表後に二次使用としてタイアップになるものも、結果としてそうした要素を備えた楽曲なのだと思います。

俺も唄いたい(弾き語りたい)

6 ロックンロール

9 ばらの花

25 ワンダーフォーゲル

17 男の子と女の子

16 宿はなし

カレーの歌

1 ハイウェイ

29 ブレーメン

八月は僕の名前

特別な日

landslide

真昼の人魚

28 坂道

「同年代とワイキャイしたい」のニラミは相変わらず効いていますが、ギターやピアノを弾きながら、私自身も「おれのレパートリー」として歌いたいと思える、歌いやすいと思える平易さ、洗練・練磨が鍵になっています。あるいはその高みとして挑戦したくなるもの。コードとメロディと歌詞とリズムを一人で表現することに意欲を湧かせるもの、との観点のカテゴライズです。これも全然ほかにもあると思う。

2026年(いまこの瞬間)の偶然、現在進行中の空気や気分、ラジオ、おれ個人の意識

31 真夏日

happy turn

27 ワンダリング

はたらくだれかのように

地下鉄

くるりが出演(DJ)するラジオで最近聴いたとか、ご本人らのポストで聴くきっかけを得たとか、たまたま由来で猛烈に魅力や特長を見直しているといったふわっとしたフロー性に依拠した小カテゴライズテーマです。言い換えれば未知数で流れるように自由。

編曲・録音・演奏・作曲の審美、できばえ、独創、芸術的洗練

金星

15 潮風のアリア

29 ブレーメン

Liberty & Gravity

大阪万博

I Love You

3 How To Go

広義な審美、構造の仕掛け、演奏や音の構築・レイヤー・テクスチャーの総合的な独自性・高みを意識した項目。「録音物として好き」のカテゴライズと似てるかもしれませんが、全然違います。

作詞

2 東京

31 真夏日

たまにおもうこと

27 ワンダリング

5 琥珀色の街、上海蟹の朝

言葉が洗練されているとか、物語や論理が緻密に構築されているとか、シネマティック・ドラマティックであるとか、字脚(母音の数)・単語や文章のイントネーション・抑揚とメロディが互恵しているとか、作詞のすばらしさを語る観点はたくさんあると思いますが、このカテゴライズではもっと直感面での「作詞」を重視しています。たとえば「きっかり15分与えられて作詞してみて、頭をリセットしてまたもう一度15分与えられて書き直したとしたらまったく違ったものになる」ような、即興性とまでは言い過ぎですが、言葉や思いが「歌詞」として機能する偶然を味方につけたようなかろみを意図しています。

カテゴライズの総括

さて、「30周年だから」とのざっくりしたきっかけのおかげで、私がくるりの楽曲に透かし見ている魅力や特長の分類と言語化が幸いにもなんとなくできたという副次効果がありました。これまでに挙げたカテゴリテーマを総括してみましょう。

・同年代とワイキャイできる

・ライブで映えてる

・音楽好きにも、世間一般にも、自分自身にも誇れる

・ステレオ録音物としての愛着と畏敬の念

・霊感に作用する古今東西に偏在する感受性の媒介

・コラボやタイアップに見る、共同や多(他)媒体に渡り串を通す表現翻案・調和に至る職能

・音楽と社会との関係や立ち位置の定義づけの不断の更新に由来する現在性、挑戦、野心、遊び心

・ユーザーを選ばない工芸・民芸品のような意匠(俺もこれが歌ってみたい・使いたいと思わせるデザインの普遍)

・瞬間(いま)の心象・感情や風景をつかむ風のような生命感と自然の摂理に添える肯定

くるりの楽曲群にどうやら私はこんな価値や快さの指標を抱き、感じているようだと見えてきました。

以上をふまえて複数のカテゴリに登場した曲を挙げます。

6 ロックンロール

1 ハイウェイ

3 How To Go

9 ばらの花

16 宿はなし

2 東京

31 真夏日

5 琥珀色の街、上海蟹の朝

27 ワンダリング

22 Liberty & Gravity

11 赤い電車

10 奇跡

Remember Me

29 ブレーメン

15 潮風のアリア

あたりでしょうか。15曲になってしまいましたがご愛嬌。私がどんなものさしでくるりの曲を見ているのかの自己分析で文字嵩が今日はつきてしまいました。あれこれ欲張るのは容易いですがふるいにかけるのも案外一大事です。文字通り「聴きたい」願望のピックアップと自己分析が出来ただけでよしとしましょう。ここまでお読みいただきありがとうございます。またお会いできますように。

青沼詩郎

くるり / QURULI 公式サイトへのリンク

くるりの2026年のアルバム『儚くも美しき12の変奏』に寄せる全曲レビュー記事 “くるり 儚くも美しき12の変奏 起源は未来 ~アルバム全曲評~”

くるりのMV集(2020)。特典のオーディオコメンタリーもファン垂涎。

20周年時のベスト『くるりの20回転』(2016)

10周年時のベスト『ベストオブくるり TOWER OF MUSIC LOVER』(2006)

30thイヤーにあたるくるり15番目のオリジナルアルバム『儚くも美しき12の変奏』(2026)