豊かに加速する青春
1992年、8番目のオリジナルアルバムでしょうか、佐野元春さんのアルバム『Sweet 16』収録曲。
直線的でビートに溢れるボーカルの質感、同音連打の多いメロディでA,B,コーラスと各セクションを走り抜け、やがてDセクションのような部分が現れるところでCメージャー系に行きます。響きの地平に大きな核心と衝撃をもたらしたと思ったらまたすぐ元のAメージャー系に戻るのです。ちょうどそのあたりに当たる部分の歌詞で“トンネル抜けた小鳥のように哀しみが消えた”と、トンネルを抜けた瞬間のように元のAの響きの光に迎え入れられる歌詞と音楽の協調。スピード感も疾走の焦点も鋭く保たれます。
気を衒わない佐野元春の曲としてシズル感あるアイデンティティを持っているのですが、どのセクションに回帰するかのバリエーションがあり、まっしぐらな印象を発露しながらも豊かな発展の可能性を示します。はじめて迎える青春の渦中にある人格の見地からのまっしぐらさを中核に据えながらも、青春をレイヤーに包み持ち歩き、新たな青春を重ね続け獲得する見地が両立している、この時代の佐野さんだからこそ書きうる楽曲だと思わせる主題とその向こうにそびえる背景(バックグラウンド、土壌)すら広い視野でフレーミングします。
ただでさえ突き抜ける衝動性と手の内の豊かさを実現していますが、楽曲後半では半音上への転調。これでもかと衝動の慣性を保つどころかなお拍車をかけ青春 ver. 2に突入するかのような高揚。甘いだけじゃない、苦い辛い旨い青春がずっと続くんだと私(リスナー)のなかに回転しながらスピードを増すエネルギーが芽生えるのです。
スウィート16 佐野元春 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:佐野元春。佐野元春のアルバム『Sweet 16』(1992)に収録。
佐野元春 スウィート16を聴く
猛烈なドラムスのタムが風雨のように激しく間断なく降り注ぎます。コーラスを迎えてようやくスネアのオープンサウンドが登場し、ここまでのセクションでタムが豪雨を降らせた16分音符をハイハットが引き継ぎ空模様を変化させます。10代の青春が雨霰でも振り返って距離をもってのぞめば天晴れなのです。
エレキギターのサウンドも終始オープンに倍音豊かに降り注ぎます。佐野さんのボーカルも第一声から複数の声のトラックを率います。駆け抜ける衝動、物量、質量がジェットコースターのようなスリルとともに加重を増します。後半の半音上への転調は何度聴いても圧巻です。小手先でなく体全体で加速しつつ、聴き応えのあつ物量でぶつかってくる。心にドカンときますね。オルガンの音色が雨が降っていてもはるか上空に熱量がある示唆、暖色のイメージです。オルガンのトップノートに同調したようなシンセチャイムのような音色がシンプルな音価のカウンターラインを彩ります。
青沼詩郎
佐野元春 Motoharu Sano Official Web Siteへのリンク > スウィート16の歌詞とコードが載っているページ
佐野元春のアルバム『Sweet 16』(1992)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『スウィート16(佐野元春の曲)豊かに加速する青春【ギター弾き語り・寸評つき】』)