絢爛な撹乱と壮健

みずみずしく凛々しくも愛嬌に満ちた歌声、BPM=124くらいのぐんぐん歩いていけるテンポに乗って勇気づく気持ちが高まります。けれど歌詞をみると「遠く離れて思う気持ちはすり切れてゆく シューズによく似てた」などほろっとせつなくなる押し引きがあって絶妙です。でも結論はあくまで肯定的で、「愛することは心に届ける見えない手紙」との大サビ(セクション)が結論で主題の「愛は元気です」を肉づけします。アミューズメントパークみたいでメルヘンなイントロとブリッジ(大サビ前)が理屈の水平を掻き乱し絢爛。ぐらぐらと揺れる感情の向こうに健気な愛の気配がします。

愛は元気です。 谷村有美 曲の名義、発表の概要

作詞:戸沢暢美、作曲:谷村有美。編曲:西脇辰弥。谷村有美のアルバム『愛は元気です。』(1991)に収録。

谷村有美 愛は元気です。を聴く

となりにいそうな身近さなのに異次元のエンターテイメント。

The Doobie Brothersの傑作『What a Fool Believes』を思い出させるはじける明るさ。3連符系という意味ではなく、あくまでスクウェアなビートに乗ってサウンドがはじけて・はずんでいます。可愛さが健常で安定がすごい。ミュージカルシンセサイザー・キーボードの類で出す音色が幾重にも織り重なります。しゅわしゅわした音色が風に色をつけます。ドシっとカツとしたリズムで足元もOK。

谷村さんの声のトラックの多さ、その緻密さ、歌唱の正確さ、描き込みの細かさが圧巻。こういった方向性には山下達郎さんのアレンジが私の引き出しのなかにありますが、ふたつが私のなかで結びつくでもない。あくまでそれぞれにすごい。器楽的なくるくる感(器械的に細かい挙動)をボーカルによって実現します。私を撹乱するトラックが右に左にたくさん行き交います。エンディングでは「トゥットゥトゥットゥ」……と左右に別れてトップラインを声でハーモニー。そこからオケがフェードしていって声だけのこる。右のほうにはなんだかデジデジした享楽的な音色がはりついている。ピッピッピ、ピッピッピ……とホイッスルの先導と谷村さんのダバダバボーカルが私の記憶のなかのオモチャ屋さんを蘇らせる。ホイッスルと太鼓を鳴らしつづける器械じかけのくまのぬいぐるみが昔、地元のおもちゃ屋さんの店頭にいたっけ。

まんなかには大サビも入って、これでもかと転調で地平を底上げ。ずばり元気でしょう。“目に見えるものたちより 100倍 確かさ”(『愛は元気です。』より、作詞:戸沢暢美)これだけの音の物量、解像度、精度と生命感・シズル感で表現されれば納得がいく。愛は形がないから確かなんだと。

青沼詩郎

参考Wikipedia>愛は元気です。

参考歌詞サイト 歌ネット>愛は元気です。

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谷村有美のアルバム『愛は元気です。』(1991)