虹色の愛

レット・イット・ビー的な間奏、カノン進行系のコード進行を敷きます。おおまたぎな4分打ちのピアノにボーカルが16分割を与えます。ボーカルに情報量の比重がもたらされ、リスナーの注意も声とメロディと歌詞に惹きつけられます。ささやくようなソフトな声、低い音域であえぐような声、ファルセットに抜ける儚く頼りなさげな可憐な声、少しつぶしたしゃがれさせたような声が七色の変化をみせる伊勢正三さんの歌唱が魅惑です。低いところから高いところまで声域が広く、2オクターブちょっとくらいの使用音域があるようにみえます。

パパとママがいるめざす理想像、「お前」呼びの二人称を含む詞など、凡庸な作家が悪手を打てば好ましくない意味でステレオタイプ的に映りかねない表現態度にも思えますが、そこは絶妙なバランス感で博愛のフェアさへ導く伊勢正三さんのソングライティングには不思議な魔法がかかっているみたいに思えます。僕、お前がいて、愛が生じる。それは風や虹や空みたいに不定の形・量・質・時空にまたがり変化と動きを続けるから語り尽くせないのです。

お前だけが 風 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:伊勢正三。風のアルバム『風 ファーストアルバム』(1975)に収録。

風 お前だけが(『風 ファーストアルバム』収録)を聴く

河島英五さんのバラードでもはじまるのじゃないかというイントロの4分打ちのピアノ、2度の音でぶつけた響きでしょうか。ヴァースの歌、ベースやドラムスのベーシックパターンの平熱ぶり。最初から最後まで落ち着いて聴いていられます。歌唱のニュアンスやボーカルメロの音域は広いのですが、演奏に統一感があります。シンセで出した感じのストリングスがほんのり清涼みを加えます。

あまり極端な定位感をみせず、おおむね中央にまとまって安定した音像です。モノラルかと聴き紛うくらいで、ずっとこのままの音像で1曲をおえるのか?と思ってきいているとバックグラウンドボーカルが入ってきて左右の広がりが出ます。

コンガの音色がバンドになじんでいて、ラテンパーカッションがいることによる特有の存在感をあまり感じません。今、ヘッドフォンであらためて聴き直して「いたんだ」と思いました。

エンディングに近づくころ、ピアノが高い音域に浮き上がりながら絢爛なオブリガードを見せ始めますが夜すでに短し、一日ははじまってしまう。常に語り足りないからこそ愛なのかもしれません。

青沼詩郎

参考Wikipedia>風 (フォークデュオ)、風ファーストアルバム、大久保一久

参考歌詞サイト 歌ネット>お前だけが

伊勢正三|ISE SHOZO OFFICIAL SITEへのリンク

『お前だけが』を収録した風のアルバム『風 ファーストアルバム』(1975)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『お前だけが(風の曲)虹色の愛【ピアノ弾き語り・寸評つき】』)