嘆き喘ぎのサイケデリック

Bセクションに入ったときにボーカルの音価がせせこましくなるところがカッコイイ。

吉田拓郎さんから提供を受けた『たどり着いたらいつも雨降り』を実演したバンドとしても私のなかに刷り込まれているバンドのファーストアルバム。このアルバムの半分くらいは英語詞のカバー、半分くらいは職業作家から提供を受けているオリジナルです。

サイケデリックと銘打たれます。ファズトーンのギターが常にじくじくぎすぎす言っています。ボーカルはOh,とかNo,とか何かとあえぎ声を挿入してきます。未だに私にはサイケデリックがなんなのかよくわからないのですが危うげ、妖(あや)しげなエレキのひずんだサウンド、恍惚としたトランス状態から滲み出る表現がサイケデリックなのでしょうか。黄色や原色の際立ったジェケットアートイメージ、命のベクトルに忠実そうなのびた髪やヒゲのちらかり具合が野獣っぽいメンバーの風貌のイメージが音楽の内容とあいまって私のなかで渦巻きマーブル模様を呈します。

モップスのメンバーの星勝さんは井上陽水さん関連作品を筆頭に、アフターGSブームの世の中においてもプロデュースやアレンジなど確かな活躍をみせます。特定のジャンルに押し込めて終わるのでない可能性の片鱗が、初期の頃のモップスの音楽から拾うこともできるのかもしれません。このファーストアルバムにはシングル曲『ベラよ急げ』『朝まで待てない』が含まれます。

朝日よさらば ザ・モップス 曲の名義、発表の概要

作詞:阿久悠、作曲:村井邦彦。ザ・モップス(The Mops)のアルバム『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』(1968)に収録。

ザ・モップス 朝日よさらば(アルバム『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』収録)を聴く

リード・オブリのギターと、2・4拍目にリズムとコードを刻み入れるギターが右寄り定位でおおむね重なっています。左にはベースが定位をふってあります。おかげでか、空間がひろい。古い時代の楽曲の泣き別れ定位については私は個人的には気にならない、好きだと思えるものが多く、この曲もまぁサウンド的に好きではあるのですができればベースを中央に近づけて2本のギターをそれぞれ両サイドに振り分けたいなと思ってしまいました。

ベースはビートルズ時代のポールマッカートニーを思わせるような、ポンポンとかろみあるほどよくサスティンが減衰するサウンドです。このベースの支配的でないかろみのある音色・プレイもサウンドの空間の聞きやすさに貢献しているかもしれません。ドラムスはキックとスネアの両方でダン・ダン……と4分音符の感覚で一歩ずつ朝が近づいてくるのがじれったいフィールを意匠するかのよう。

ボーカルはダブルで入っている……と思ったのですが、どうやら一人のボーカリストのオーバーダブというよりふたりのボーカリストのユニゾンになっている部分が多いよう。ときどきバラけるのがわかります。定位も左寄りと右寄りで、ふたつのボーカルトラックがほどよく振ってあり聴き分けができます。

エレキの音色はぎすぎすと攻撃的ではあるのですが、倍音で空間を支配するようながむしゃらな感じではないので常になんだかボーカルが寂寥を浮かべる余白があります。あくまで輪郭のぽつねんとしたベースとドラムスの4分打ちがゴトゴトとビートを運び、ギターやボーカルがウワモノとして乗っかる構図が安泰。

朝の到来を愛の終わりと重ね見る曲想。朝やその光は希望の到来の象徴として用いられることもあるでしょう。ある希望がはじまりを告げるということは、何かが終わることでもあります。シンプルで必然の道理かもしれませんが、今朝がはじまれば確実に昨日は終わっています。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・モップス

モップス ビクターサイトへのリンク

『朝日よさらば』を収録したザ・モップス(The Mops)のアルバム『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』(1968)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『朝日よさらば(ザ・モップスの曲)嘆き喘ぎのサイケデリック【ギター弾き語り・寸評つき】』)