12小節単位のラブソング

アルバム『Let It Be』に収録されたジョージ曲。

12小節で完結する楽節を連ねていきます。形式や様式面を観察すればコテコテのブルースですが、聴けばビートルズ印。ジョージのボーカルの質感や内容の純粋さも相まってのことでしょうか。儚げで繊細なジョージの歌声はロマンチックで夢想家な響きにも思えます。間奏には気ままなセッション遊びのフィーリング、go, Jonny, go!だとかElmore Jamesの固有名詞(人名)だとか、ロックンロールやブルースのレジェンドを想起させるしゃべりが含まれています。

ニュィーンとマイルドなサウンドでポルタメントして伸びるラップスティールはジョン。コチコチとアタックがエフェクティブで余韻が短く切れる独特のピアノはポール。ホンキートンクピアノをイメージして紙をハンマーと弦の間にはさむという一風変わったテックによって実現したサウンドだそうです。対して確かな質感と安定のリズム基盤の伴奏に徹したリンゴのドラムがジャズっぽくも漢気タッチ。

本アルバムの標題曲『Let It Be』は特に日本人にも標題曲ばかりが一人歩きして有名・認知度がある気がしますが、改めてこの『For You Blue』含めアルバム単位で聴く起伏が愉快、輪郭があってないような自由なビートル印の革新性を思い知ります。

For You Blue The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:George Harrison。The Beatlesのアルバム『Let It Be』(1970)に収録。

The Beatles For You Blue(アルバム『Let It Be』収録、2009 Remaster)を聴く

冒頭に人声。何を言っているのかきこえない小さなレベル。イントロにアコースティックギター、ピックのアタックと響きの質感がよく出ており流暢です。このアコギ、イントロを経るとあんまり存在感がない。イントロより後はほとんどアコギ入っていないのではないでしょうか? 

左にラップスティール、右にヘンテコピアノ。楽節の変わり目にレ、ファ、ファ♯、ソ……とベースが上行していくパターンで低域がズンと出てきますが、ピアノとラップスティールの低域なのか、ベースギターの存在感もほとんどなく思えます。ベース、入ってる?(一応ポールのベースがクレジットされているよう。バンドのなかではみ出さない緻密なタイム感と音量で、根音だけをストイックにストロークしていっているのでしょうか)

左寄りのラップスティールのサウンドがつねに耳あたりがマイルド。右手をブリッジミュートみたいに使っているのか、そもそもトーンを絞って尖った倍音を削っているのか。右のピアノのダイナミクスレンジ、表現が豊かです。間奏ではラップスティールとピアノがソロを前半・後半で受け渡しあいます。アクの強いモチーフや素早さで翻弄するようなソロではありません。アルペジオのように和声音をばらかすスティールギター。リズムのエッジとダイナミクスレンジで魅せるピアノ。ビートルズメンバーの個性が出た間奏です。ちょっと皮肉っぽい微笑みが目にうかぶジョージのしゃべりにちょっと和みます。

ドラムはシンバルが全然出てきません。ベースギターも感じられない。トップとボトムを欲張らず、余韻が次のフレーズやセクションに被さらないこじんまりしたタイトな合奏。ジョージの繊細なボーカルが活きるアレンジです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>フォー・ユー・ブルー、レット・イット・ビー

参考歌詞サイト Genius>For You Blue

ザ・ビートルズ | The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『For You Blue』を収録したThe Beatlesのアルバム『Let It Be』(1970)

参考書

『ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド』(中公文庫、2015年)