作詞:橋本淳、作曲:筒美京平。平山三紀のシングル(1970)、アルバム『ビューティフル・アルバム』(1971)に収録。

ビューティフル・ヨコハマを聴く

平山さんの特定の帯域が飽和してしまいそうな強烈な音波がすごい。顔面のどこかが鳴りまくってこの声になるのでしょうか、真似の利かない独特の声です。レーザービームのような強い帯感があり、“ヨコハマ”とリフレインするときのちょっと手綱を緩めるような可憐な抜き方などが巧く、強みのある個性的な声のニュアンスを幅広く用いてどこか挑戦的な曲想を魅力的に表現しています。

Bメロのところのストリングスのシックスティーンのボウイングがヒリヒリと緊張感を演出。右でトランペットが高らかに。オクターブ違いで左にもいるでしょうか。左にはズンと低いサックスもいるでしょうか。同じオブリガードのモチーフを左右に広げる手法は、左のフルートと右のグロッケンの組み合わせにも見ることができます。右にはビブラフォンも出てきます。

ベースが熾烈なストロークで16分割でブイブイいいます。ドラムスもちょっとスネアに触ったようなゴーストノートを時折感じる。フィルインのタムも華麗。べースとドラムのグルーヴィで昇天しそうなファンクネスです。

ギターが非常に短く2・4拍目を強調するカッティング。タンバリンのオン・オフもキビキビしており高精度。Bメロではチキチキと短いパーカッション、シェーカーなのかマラカスなのか、カバサか何か?奥ではオープンハイハットが緊張感を高めます。

イントロ・エンディングや随所で入るオブリガードは複数の楽器の組み合わせが独特のサウンド。何が合わさってこうした音になっているか。ピアノとエレクトリックピアノとかなのか、それにギターもいたりするのか、ストリングスも同じモチーフに加わっているような所もあったり。

贅沢・潤沢に素材を活躍させます。熱量があるのに統制が完璧でテキパキと一級の仕事人が入れ替わり立ち替わり流れて出入り、一夜で「ヨコハマ」の街を築き上げてしまったみたいなミラクル。ウソみたいなホント。演奏の力を感じますし、編曲の鑑です。

歌詞

「ヨコハマ」とカタカナでつづる。実在の街を被写体にしつつも、つくりかえたおとぎの夜城を感じます。

それぞれの長所を持ったたくさんの男性を擁する街でも、主人公の意中の人は一匹狼みたいなふるまい。……と、私がそう感じるだけかもしれませんが……群れを離れた所で孤独な過ごし方を選ぶ気質の人のよう。

いろんな男がいることを伝えてはいますが、主人公がそういう男たちと実際に遊んでいるということを直接伝える歌詞ではありません。ただ観察しただけで、意中の人は終始、ただ1人なのかもわかりません。

派手な髪色を黒にするのはその1人への想いのあらわれなのだと。

“ビューティフルなお話しね”の決まり文句が、ちょっと斜に構えた感じがするところがいっそう平山みきさんの一筋縄ではいかない大物感を印象付けます。ヨコハマとカタカナでつづることで架空の街っぽい印象を与えますが、あえて「ビューティフルなお話し」と、引っ掛かりのある言い方をしているところも、本来の「ビューティフル」が意味するところそのものを言おうとしているのでないところを思わせるのです。肯定も否定もしないが、素直な感じもしません。ナナメなのです。

ナナメ……と、なんでもカタカタにすると、本来のそれそのものとちょっと違うフックが生じます。そういう、方向のねじれた表現を発する人が意図しているのではないかと。これは何かあるな……と、平山みきさんを鑑賞者に追いかけさせる。これはワナ?

アオヌマシロウ

異なるバージョン。声のふしの利き方がブルージー。声の輪郭もちょっと変化して感じます。少し後の年代になって歌手として何かしらのキャリアを経た時間を思わせます。歌の内容も違ったものに感じるほどです。ワウのきいたミャウミャウギターが印象的。テンポが速く颯爽としています。サウンドも軽快です。エンディングのシンセも、70年代後半にさしかかる時代のしるしか。

参考Wikipedia>ビューティフル・ヨコハマ

参考歌詞サイト 歌ネット>ビューティフル・ヨコハマ

平山みき 公式サイトへのリンク

『ビューティフル・ヨコハマ』を収録した平山三紀の『平山三紀ベスト・ヒット・アルバム』(2007年。1972年の『The Best Of Miki Hirayama』を基に再発売したものか)

異なるバージョン(1975年バージョンか)の『ビューティフル・ヨコハマ』を収録した『GOLDEN☆BEST 平山三紀 筒美京平を歌う アンド・モア』(2003)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ビューティフル・ヨコハマ(平山三紀の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)