UNICORNのアルバム『シャンブル』は2009年発売。1993年『SPIRINGMAN』を出して以来のアルバム。バンドは1993年に解散、2009年に再始動。
スタッフの披露宴での演奏のために集まったことが再結成のきっかけのひとつとか。
『ボルボレロ』はそんな、久しぶりに出たUNICORNのアルバム『シャンブル』の収録曲のひとつ。
ボルボレロ 曲と歌詞
作詞・作曲とボーカルはEBI(堀内一史)。バンドのベーシストで、独特の声質は響きの位置がちょっと高め。
歌詞とタイトルに出てくる「ボレロ」はクラシック音楽で有名なあの「ボレロ」のことか。
モーリス・ラヴェルの書いた3/4拍子の舞踊曲。
ラヴェルのボレロはごく静かにはじまって長い時間をかけてエンディングに向かって徐々にクレッシェンドしていき、最後には狂ったようになる。蓄積する記憶や感情の肥大を私に思わせる音楽。
“悲しみが 少しずつ 降り積もる
まるでボレロのように それはボレロみたいになる”(『ボルボレロ』より、作詞・作曲:EBI)
そんな音楽作品の前例を何かに重ねたのかどうかわからないけれど、EBI氏は詩人だなと思う。
歌のなかで「ボレロ」は出るがタイトルにある「ボルボレロ」というかたちでは出てこない。
ボルボレロってなんだろう。「ボル」は、ぼったくる(不当につりあげた値段を客から店や事業者がとる)の「ぼる」という言葉があるけれどこの曲においては関係なさそう?
ボルボ(VOLVO)というクルマがある。その「ボルボ」と「ボレロ」を組み合わせたことばなのか? ほかにもサンシャインとかブルースカイとか、この曲に出てくるカタカナ語は車に関係する単語っぽく私に響く。ブランドや車種、販売店やメーカーなどの名前っぽい。車に疎い私だし、EBI氏が車に乗ったり愛好したりしているかどうかまで知らないから憶測。
音楽、曲がすごくいい。
「ボレロ」を思い出させる、独特のリズム形のストロークではじまる曲。
コーラス部の、マイナーコードとメジャーコードをミルフィーユして徐々にメロディの反復とともに音域を上げて行くところなんて最高。彼のセンスを私はめちゃくちゃ気に入ってしまった。
『ボルボレロ』と私
この曲は、八王子のあるライブハウスの店内でスピーカーから流れていたのを聴いて知った。その日の運営側にユニコーン好きのミュージシャンがいて、彼に訊いたらユニコーンのボルボレロだという。奥田民生ソロのほうが当時の私にとっては目立つ存在だったし、ユニコーンといえば主な(多くの割合を占める)ボーカルは奥田民生だという意識が強かったから、ユニコーンの曲だとは気づかず「へぇ(なるほど、そりゃ良いわけだ)」と思った。
以来『ボルボレロ』はラヴェルの「ボレロ」のように深く長い余韻を私にもたらして、最近ふと『ヒゲとボイン』を聴いていたら「ユニコーンと来たら俺はこれだー!」と思って私の中で『ボルボレロ』がクロスフェードしてボリュームを上げてきた。最高っす。
“EBI”の由来
『シャンブル』ではメンバーがみんな曲を書いている。EBI(堀内一史)はUNICORNのデビューアルバム『BOOM』(1987)でも『Alone Together』を書いていて、これが彼のソングライティングのはじまりだという。ちなみにEBI(エビ)という名前はバンド・ARB(エーアールビー)に由来。彼がARBを好きで、しかも自身がそのメンバーにもなってしまった。
好きなものの名前(ARB)を語ったら、その人自身(EBI)がそのものの名前(ARB→エビ)で呼ばれるようになり、しまいにはその人(EBI)がオリジナル(ARB)の一部(メンバー)になる。なんだか寓話のよう。
青沼詩郎
EBI氏へのインタビュー記事へのリンク
https://natalie.mu/music/pp/unicorn/page/5
『ボルボレロ』を収録したユニコーンのアルバム『シャンブル』(2009)
ご笑覧ください 拙演
“UNICORN再始動時のアルバム『シャンブル』(2009)。
メンバー全員曲作りに参加している。
収録曲『ボルボレロ』の作詞・作曲はベースのEBI氏。
リズムとコードとメロディの妙で独特の浮遊感。構造が複雑なわけでも演奏の技巧に走るのでもない。なんてセンスがいいんだろう。曲で聴かせていてすっかり好きになった。
ライブハウスでユニコーン好きのスタッフがBGMでかけていて知った。こんなのあったんだと思った。ユニコーン、まだまだ聴く余地を残してばかり。楽しみがたくさんとってある。”