ボン・ボヤージ波止場 小坂忠 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:細野晴臣。小坂忠のアルバム『HORO(ほうろう)』に収録(1975)、編曲:細野晴臣・矢野誠。アルバム『MORNING』(1977)にも異なるバージョン(編曲:細野晴臣)を収録。

小坂忠 ボン・ボヤージ波止場(アルバム『MORNING』収録)を聴く

カッッコイイ。そのままいしだあゆみさんのボーカルで聴こえてきそうな平熱感があります。脱力、洒脱。

左右いっぱいに響きが開いたエレクトリックピアノ。ロータリースピーカーでしょうか、ゆらめいてふわふわとダイナミクスが風にあおられます。波止場に立って海風に吹かれている気分。

ガツっとドラムスのアタックと輪郭がワイルドです。粗暴な雑味も感じる野生的なサウンドなのに引き締まってシュっとしてもいます。大人の、キレイなファッションのちょいワルな着崩しの趣を感じます。前面に感じるドラムサウンドで、ベースがドラムにスポットライトの独占を譲った(許した)感じがするバランスが刺激的。

ドラムスのキックとビブラフォンのコンコンというリズムのキメのストロークが同調します。

ストリングスがフワーッと保続の響きで線を描きます。シンセ、つまり作った音としての人工的なストリングスっぽい音ですがバンドと馴染んでいます。スピーカーから出力した音をマイクで拾ったのでしょうか。バンドの生楽器の音の余白に整合した妙です。

間奏のハーモニカがシンプルで、5度の跳躍を基調にした音形を描きます。複雑でおしゃれな和声の間で、立ち尽くすことなくふわふわと海風に舞ってみせます。テンホールズでも演奏できそうな旋律ですが、ボディの密度の強さや芯の太さを感じる独特の響きはクロマティックハーモニカでしょうか。オトナなイキフンの曲にはクロマティックハーモニカがよくあいます(インスタントにチープで中毒性あるグルーヴを醸し出しやすいのはテンホールズだとつくづく思います)。

アルバム『ほうろう』収録を聴く

アルバム『モーニング』のほうを先に聴いて知り、そちらがオリジナルだと勘違いしました。アルバム『ほうろう』収録の方が先の発表でした。

海の環境音のオープニング。カチカチとアナログのメトロノームが時の刻みを演出します。

ボーカルのダブルの線の複雑さ。心を主観的に語るのではなく、情景に代弁させる・想像させる手法としてはダブルにしたボーカルのほうが合うのかもしれません。

ストリングスが生楽器の音でしょうか。緊張感をかもす独特の音程で乗っかります。おしゃれですね。

ぽつねんとしたベースのパターンと口笛、波の環境音でフェードアウト。

複雑なままに波止場に投げ出された心境を想像させるおしゃれな曲想でもありますが、エンディングのごきげんでかろやかな口笛を聴くに案外そう重く思い悩む結論ではないのがうかがえます。もうすぐやってくる朝、新しい日に何してやろうか。目先のページのスケッチブックが白紙である自由を思わせるエンディングが軽妙です。

カチっとした仕上がりの『モーニング』収録バージョンとは好対照ですね。よい旅を。

青沼詩郎

参考Wikipedia>小坂忠

参考歌詞サイト 歌ネット>ボン・ボヤージ波止場

小坂忠 公式サイトへのリンク

『ボン・ボヤージ波止場』を収録した小坂忠のアルバム『ほうろう 40th Anniversary Package』(2015年、オリジナル発売1975年)。アルバム『ほうろう(HORO)』収録曲すべてのボーカルを再録した2010年バージョンの『ほうろう』とオリジナルをセットにしたスペシャルパッケージ。

『ほうろう』収録と異なるバージョンの『ボン・ボヤージ波止場』を収録した小坂忠のアルバム『モーニング』(オリジナル発売年:1977)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ボン・ボヤージ波止場(小坂忠の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)