アイスクリームショップガール 小坂忠 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:細野晴臣。小坂忠のアルバム『モーニング』(1977)に収録。

小坂忠 アイスクリームショップガールを聴く

冷遇をくれるあの娘をアイスクリームショップに重ねた気の利いたソングライティング。細野晴臣さん作詞作曲です。何を頼んでも、品揃えは冷遇のみ。だってここはアイスクリームショップなのですから。チャンコかチゲか中華まんかラーメンか知りませんが、温もりが欲しいのなら他所へお行きなさいということ(?)なのです。繰り返しますがここはアイスクリーム屋なのですから。

小坂忠さんの歌唱もどこか気だるげ、アンニュイなフィールで私に響きます。なぜか空虚な気持ちになるのです。演奏、オケ全体もトリプレットのビートですが、躍動したハネた、生き生きとした感じがしない。溶けかかったアイスクリームのように、のっぺりと、べったりと…どうせあの娘は振り向かないし……やる気を無理に出すことはない。気楽にいこうよ。それしかできないんだから。そういう「諦観」が通底した演奏、歌唱のような感じがします。アイスクリームがつめたくって、頭がキンキンしてしまう気分になるのです。やるせない。けど甘い。

“いつもの席へ座ると あの娘は少しさみしそう きっと 恋に破れた その顔 ぼくを見もしない それでぼくもちょっぴり さみしくなり ヴァニラとモカをほおばりゃ とても冷たくって泣けてくる そうさ つめたいあの娘は アイスクリームショップガール ぼくはくびったけ”(『アイスクリームショップガール』より、作詞:細野晴臣)

あの娘は「主人公に向けて、冷たい態度をとる」というよりも、あの娘が誰かほかの知らない人との恋に破れて心が意気消沈してしまっている=冷たくなっていることを表現して「つめたいあの娘は」と歌っている趣でしょうか。

コーラスの部分だけに注意して聴くと、主人公はあの娘に夢中で、でもあの娘は主人公に冷たくする、という構図にみえるのですが、歌詞をメロからストーリー(前後関係)があるものとしてみると……主人公とあの娘はあんまりちゃんと知り合っている状態でもないのかもしれません。一方的に主人公のほうがあの娘に対して憧れ・興味を抱き熱を上げかけている状態かもしれません。いきおい余ってたくさんほおばると、お互いの温度差の対比から余計に冷たい思いをします。

アイスクリームのイメージ

“それでもぼくはストロベリー しゃぶって毎日かようよ 彼女の今はかがやくその顔 ぼくを見もしない それで ぼくもちょっぴり さみしくなり ヴァニラとモカをほおばりゃ とても冷たくって泣けてくる そうさ つめたいあの娘は アイスクリームショップガール ぼくはくびったけ”(『アイスクリームショップガール』より、作詞:細野晴臣)

どれだけ主人公はアイスが好きなんでしょう。ストロベリーも出てきます。ほおばるのはヴァニラとモカ。

いえ、主人公がそんなにも好きなのは、実際アイスよりもあの娘なのでしょう。もちろんアイスクリームも食べたらおいしいでしょうが……主人公がアイスクリームショップに通う最たる動機はあの娘に会える……いえ、姿を(一方的に)みかけることができるから。

もはやあの娘なんて本当はいなくて、本当にアイスクリームが人間のようにふるまったり表情豊かにみえるくらいに好きで好きでしょうがない主人公の歌かもしれません。

そりゃあつれないわけです。だって相手はアイスクリームですからね。アイスクリームが、アイスクリームショップガールに見えている主人公のサイコな歌……なんて茶化すつもりはないのですが、とにかく報われない主人公の姿がこっけいにさえ見えるキュンとなるアンニュイな歌です。こちらがあんまり熱をあげると溶けてしまうのでしょう。

青沼詩郎

参考歌詞サイト プチリリ>アイスクリームショップガール

小坂忠 公式サイトへのリンク

『アイスクリームショップガール』を収録した小坂忠のアルバム『MORNING』(1977)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『アイスクリームショップガール(小坂忠の曲)ギター弾き語り』)