はじめに
B’z『いつかのメリークリスマス』はミニアルバム『FRIENDS』(1992)に収録されている。未シングル化作品。人気のある曲で、クリスマスシーズンの度に動き、またそれ以外のシーズンにおいてもカラオケで動くという。私もB’zのことを思うと真っ先に思い出す曲のひとつ。
歌詞 情景と抽象の対比
映像を想起させる、情景描写のヒラウタ。対してサビではやや抽象的になり、お互いを引き立てている。そのままドラマの脚本になりそう。
『FRIENDS』と『いつかのメリークリスマス』 創意と試みの一端
全体でひとつのストーリー性を持つように書かれた楽曲群がミニアルバム『FRIENDS』であり、『いつかのメリークリスマス』はその中の1シーンを担うものだという。「いつかの」とタイトルにあるところからも、ある年のクリスマスを「回想」した情景や登場人物(の主観)でつづられた1曲。全体のテーマならびにあてがわれたシーンに沿って書くという創作方法が楽曲のまとまりを生んだのかもしれない。
ある時期のB’zは曲先(曲を先に作り、あとから詞をつける)を多用したそう。この『いつかのメリークリスマス』も曲先で書いたものか。稲葉浩志は移動中の飛行機内で作詞したという。作曲は松本孝弘、言わずもがな。
Bメロのコード進行 減音程・借用、上下行の均衡と反復
前段
Ⅳ|Ⅲm|Ⅶm-5・ⅢM|Ⅵm・Ⅴ/ⅶ・Ⅰ
後段
Ⅱm・Ⅴ|Ⅰ・Ⅳ|Ⅶm-5|ⅢM・Ⅴ
このコード進行をたいへん私は気に入っている。
前段、ルートが下行の動きで始まったかと思えばⅦm-5・ⅢMの減音程や借用の響きで一瞬惑わし、乱す。下行で始まったのに対して根音の上行で前段を結んだ均衡がキマっている。
対して後段は、根音をみるに2・5・1・4・7・3と、キレイに4度上がって5度下がるの反復。おしりの2小節はⅦm-5にたっぷり(まる1小節)時間を持たせたのち、5度下がったら4度上がるを守って借用のⅢMの響きに行ってしまう。それを最後のわずか2拍のⅤで主調の感性に引き戻し、サビ頭のⅠ(主和音)を最高に引き立てている。
後記 私がギターを始めたきっかけ
私もギター弾きでありソングライターの端くれなのだけれど、私がギターを始めたきっかけはある友人にある。彼は小学校の同級生で、B’zの大ファンだったのだ。「松本さんかっこいい。青沼、ギターやろうよ」を彼は私に百回くらい言ったのではないか。幼少期からピアノをやっていて音楽を好きだったので、私は「いいよ」を言って、中学に入学して最初の誕生日に親にエレクトリック・ギターを買ってもらった。あれが人生のターニングポイントだったかもしれない。『いつかのメリークリスマス』は、そんな友人の彼と一緒に楽しんだ『B´z The Best Treasure』にも収録されている。だから、B’zといえば真っ先に浮かぶ、私の思い出の1曲なのだ。
青沼詩郎
『いつかのメリークリスマス』を収録したB’zの『FRIENDS』(1992)
『いつかのメリークリスマス』を収録した『B´z The Best Treasure』(1998)
ご笑覧ください 拙カバー
青沼詩郎Facebookより
“B’zのミニアルバム『FRIENDS』(1992)。
コンセプトに沿って書かれた楽曲群のひとつが『いつかのメリークリスマス』。飛行機の中で作詞されたという。作詞:稲葉浩志、作曲:松本孝弘。B’zの作品は曲先が多いというがこれもそうなのだろうか。そのままドラマの脚本になってしまいそうな情景と物語が頭の中に立ち上がる。Bメロのコード進行が好き。特にⅦm(-5)→ⅢM(Ⅵ調のⅤ)を含む流れ。ここでちょっと不協和な響きを見せておくことでサビのシンプルなコード進行が映える。
私はB’zの曲をバラバラに知っているものが多い。コンセプチュアルなミニアルバム『FRIENDS』含め、改めてちゃんと聴いてみたい。『FRIENDSⅡ』(1996)もあるそう。”
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