クラブナイト andymori 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:小山田壮平。andymoriのアルバム『光』(2012)に収録。

andymori クラブナイト(アルバム『光』収録)を聴く

小山田さんの歌唱は突進力があります。声が深いところから出ていて、声を張り上げても常にどこか哀愁漂う独特の質感が(おそらく)シンガー本人の胸にもリスナー本人の胸にもざらっと引っ掛かりグサグサと刺さるのです。深い。そして声域も高いです。カリスマ性とはこのことよ。隣にいてくれそうな路上の声でもあり、遠く及ばない神懸かりな存在感の両方を覚えます。

ブルージー:哀愁感があるのは声質によるもののみではなく実際にフラットした音程を最高に胸キュンで独自なピッチで歌唱中に頻用します。andymoriが、近代バンドの多くにみられるスクウェアな音程やテンポ感を凌駕する特異な存在である一因がこの小山田さんの独特の歌唱表現・技術の機微にひとつ(もちろんほか数多ですが)あると思います。

ドツ・ドツ・ドツ・ドツ……。クラブからの音漏れを思わせるキック。生音をそれっぽい味付けにお化粧したのでしょうか。「……ッタカタ」というスネアの合いの手が3拍目裏から4拍目表にかけてかかります。恒常的なリズムをキープするドラミング。本作はドラマー・岡山健二さんがいる編成での2枚目のアルバムですね。

ジャンジャカ・ジャンジャカ……のリズムで右のエレキギターと左のアコギがひたすら踊り狂います。小山田さんを象徴するのがギブソンの少し小ぶりな箱ギター(CS-336だそうです。参考リンク>ギターマガジンRecording Gear|小山田壮平×濱野夏椰 初ソロ作『THE TRAVELING LIFE』の使用機材)。この曲でも使われているのもそれでしょうか。小山田さんの声質にも似て、ラウドにがなりあげてもひっそりと声を鎮めても、いつも哀愁と奥行きと芯の質感をまとうような、風合いのある魅力的なギターで私も大変あこがれました。

藤原さんのベースは8分割でひたすら動きつづけます。身軽な音色で自由にどこかを旅して行ってしまいそうなベースプレイ。フットワークが軽く、まるで体力が無尽蔵です。

楽曲を印象付けるトランペット、ファンファンfromくるりですね。装飾音の引っ掛け方がおしゃれで気が利いています。陽気で艶やかで質量があって暖かな音色です。andymoriをイメージさせる黄色などの暖色系のフィールと好相性な音色で魅せてくれます。歌詞のないところでリードするだけでなく、少し奥のほうからカウンターメロディ的に立ち上がるなど、突進する3人バンドと協調します。

今ああ 誰もが風に吹かれて旅は続いていく 求めては愛されてふられて 星を見上げる 輝いた時代のアルバムをめくる手を止めて クラブナイトへおいでよ 君の好きなレコードをかけるよ

『クラブナイト』より、作詞:小山田壮平

音楽への愛が主題のひとつでしょうか。音楽に、自分自身も救われているし、君を救ってもいる。その接点:舞台としてクラブで音楽がかかる機会:クラブナイトを挙げ、唱え、呼びかけます。

メロディアスかつ字数が多くたたみかけるような変則的でスピーディなリズムがandymori作品のボーカルメロディの特長のひとつでしょう。直線的なイメージの楽曲中、変化で景観に揺らぎを与える大サビの部分です。過去の回顧を思わせる“アルバムをめくる”映像と、いまここにいる「クラブナイト」の場をクロスさせます。

何週間も漂って 心は疲れ果てて でも弱音は吐けない もう少しだけ頑張らなくちゃ 光と闇が君の前に見えたら 光を目指そう 君の好きなレコードをかけるよ

『クラブナイト』より、作詞:小山田壮平

ダウナーな堕落感と、きらめき・エネルギーの噴出する振れ幅。光と闇の両面。誰もが持つ多面性をandymori作品は鋭く言い当て、背中に手を添えたりドロップキックをかましたり悦楽で煙に巻いたりするウィットがあります。通底するのは音楽の光(と闇)、そして愛でしょうか。“君の好きなレコードをかけるよ”がリスナーとの関係を結ぶ印象的・象徴的な句であり、この楽曲の主題でしょう。

青沼詩郎

andymori 公式サイトへのリンク

参考Wikipedia>光 (andymoriのアルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>クラブナイト

『クラブナイト』を収録したandymoriのアルバム『光』(2012)

CDデビュー15周年を記念”と謳い、アナログリリース(2024)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『クラブナイト(andymoriの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)