マル・マル・モリ・モリ! 薫と友樹、たまにムック。 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲・編曲:宮下浩司。薫と友樹、たまにムック。のシングル(2011)ドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ、2011年)主題歌。
薫と友樹、たまにムック。 マル・マル・モリ・モリ! を聴く
『マルモのおきて』公式サイト(本文末尾付近にリンク)のあらすじを参照するとあらすじとドラマの各回の基本的な構築の趣向がよくわかります。亡くなってしまった親友のところの双子のお子さんをあずかる(一緒に暮らす)ことになったのが主人公のマモルことマルモ(マルモことマモル? 演じるは阿部サダヲさん)で、おまけに拾い犬のムックまでついてきた、と。暮らすうちに教訓として覚えるのがこの家の「おきて」なのだとか。1話(もしくは数話)の中でわっちゃかいろんな起承転結が起き、それが無事解決したり丸くおさまったりして「では今回の教訓はこれです」みたいなことで登場人物も視聴者も一緒に得心する……というのがこのドラマの持ち味なのかな(未視聴なので想像)。テレビ画面の中とテレビの前がつながったような共感を覚える瞬間なのかもしれません。この双子が薫と友樹、演じるのが芦田愛菜さんと鈴木福さんなのですね。ちゃんづけ・くんづけで親しんだ俳優さんのご両名ですが、おふたりともすでに20歳に到達しています(この記事の執筆時:2025年1月)。ちなみに犬のムックは人語をしゃべる(設定)とのこと。日常系の作風に加えて、その点においていえばファンタジー要素も混じった作品といえるかもしれません。
そんなドラマの前提をふまえて聴くと、おや? と思う聴き味があるのが歌詞です。
マル・マル・モリ・モリ みんな食べるよ
ツル・ツル・テカ・テカ 明日も晴れるかな
『マル・マル・モリ・モリ!』より、作詞:宮下浩司
ドラマのあらすじを知らないで曲(の一部)だけを認知したのみの状態で長いこと私は過ごしてきました。マルマルモリモリみんな食べるよ……のフレーズ。犬の「マルモ」がモリモリとお皿に配膳された食事をきれいにたいらげて、どんどん成長する愛らしく微笑ましい姿、成長の経過がなす物語を(勝手に)想像していました。
違うんですね。マルモ、犬じゃないじゃん。阿部サダヲさんが演じる護(マモル)さんじゃん。人間じゃん。しかも大人。
いえ、もちろん人間のマルモことマモルさんがモリモリきれいに食事をたいらげて、今日も元気! 明日も元気! 夢がいっぱい! 星がきれい! でも構わないのですが……
「みんな食べるよ」の「みんな」を私は勘違いしました。「全部」の意味の「みんな」じゃなくて、「全員」のニュアンスでしょうか。薫も友樹も護(マルモ)もムックも、みんな(全員)モリモリ食べてみんな(全員)元気! 明日も晴れる(晴れた天気みたいに素敵な日になる!) という素敵な幸せと波乱の物語を歌っているのだと解釈します。
楽曲は宮下浩司さんによる作詞・作曲・編曲です。
シンセサイザーやDAW中心の制作を思わせるサウンドで、そのピコピコシュワシュワはじける印象が愛らしく、主題や歌い手、ドラマの物語との素晴らしい相性を発揮しているのではないでしょうか。
音数が豊かでにぎやかです。エレクトリックピアノの音色がリズムと和音でぶんぶん背中を押します。ストリングス系の音もオルガン系の音も髪をたなびかせ、愛嬌と爽快感を増幅します。
ダイナミクスのそろったベースとキックのサウンドが薫と友樹の唄をのせて地盤を安定させ、我が国の誇る鉄道網の正確な運行のように確実にエンディングまで送り届けます。
薫と友樹の唄はあどけない可愛さもあるのですがまっすぐに安定した素直な声でメロディと言葉を確実にとどけます。どれくらいのピッチやタイミングの修正を要したのか、あるいは要さなかったのか……などとヨコシマな雑念が頭をよぎる私を正直と云ってくれ。
エンディング付近まで、各コーラスにおける歌詞の全量的な繰り返しが少ないです。「マルマルモリモリ」のお決まりのフレーズや「ツルツルテカテカ」などが一部共通しているくらいで、「マルマルモリモリ」に続くフレーズが各コーラスで異なります。当然ながらメロの歌詞も各コーラスで異なります。フルサイズで聴くと、結構テキスト量が多くて聴き応えがあります。
「マルマルモリモリ」のサビはじまりの構成で、歌詞「大きくなったら……」や「大人になっても……」の部分がAメロっぽくない。いきなりBメロからはじまるみたいな感じのフィールがあるのです。
この「いきなりBメロ風」を経て「マルマルモリモリ」のサビに突入したかと思えば、すぐ「悲しくて泣いていた……」のCメロ風の展開に。あるいはBメロのバリエーションって感じでしょうか
かと思えば曲の中盤では「大人になっても……」(いきなりBメロ風)の展開の直後にサビではなく「お星さまキレイだね」と、Cメロ風と私が上段で表現した部分に接続します。
ひとつひとつのまとまり(メロ)がコンパクト。冒頭や前半のサビなんて最小単位が4小節と解釈しうるのではないでしょうか。
サビは、曲の中盤以降は「みなさんグッナイまた明日」や「いちにのさんしで ゴマ塩さん」の展開に接続して、サビに折り返し部分が補完されます。
それでもやっぱりひとつひとつの部品がコンパクトな印象が私に強く残ります。どんどん変化して展開していく。子供の成長みたいにめまぐるしいのです。こないだ会ったかと思えば、もう雰囲気が変わっている親戚や友人のところの子みたいな。
こうした意味での楽曲内の構成・展開の目まぐるしさと、DAW直系のサウンドを中心にしていると思われるした耳との距離が近い感じの聴き心地が意匠的な相性の良さを呈しています。
「ダバデュア ダバジャバ」……とスキャット? も披露。「おなか出して寝るなよ!」などのかけ声は『ドリフのビバノン音頭』の歯磨けよ! とか「風邪ひくなよ!」といったかけ声を思い出させます。日常を楽しく鳴らしていこうと前向きな気持ちにさせますね。“ツルツルテカテカ”あたりはキテレツ大百科を思い出させます。
青沼詩郎
薫と友樹、たまにムック。のシングル『マル・マル・モリ・モリ! 』(2011)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『マル・マル・モリ・モリ!(薫と友樹、たまにムック。の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)