バチクソかっこいい。演奏に息遣いを感じます。
定位を広くつかっておりボーカルやバックグラウンドボーカルの近くをすっきりした空間に感じます。ドラムスでも定位を出している感じです。ベースもステージ全体から音が飛んでくるイメージなのですが真ん中のボーカルを邪魔しません。複数のマイクや回線で録った音をうまく振って真ん中をすっきりさせているのでしょうか。
バックグラウンドボーカルの音域がワイド。男女混交ボイスです。低いパートの声:オブリガード:相槌をうつ遊びっぽい声は私にダウン・タウン・ブギ・ウギ・バンドの演奏を思い出させます。彼らも「ブギ」の名のつくレパートリーをたくさん持っており、低音ボイスであやしいオブリを入れた曲があるのです。
エレキギターにしびれますね。左にリードギター、右にリズムギターの様相でしょうか。間奏で3本目のリードギターがちょっと控えめの音量ですが至極鋭い音で加わり左のギターとツインギターのような趣をだします。エンディングのコーラスにもこの第3のギターが加わり、音数が最大になって痺れるカッコ良さ。音数が最大といっても、あくまで骨と肉・声のみで勝負する感じのロックバンドの体裁です。
エンディングの“こげこげこげこげこげこっ”は「漕げ漕げ……」でしょうか、ペダルを漕ぐ、の表現をつかった遊びだと思います。ゲコゲコ……とひっくり返って蛙の趣。このフレーズが見事に左のリードギターとユニゾンしており、最後の最後に痺れさせる替え玉追加といった感じで満腹です。曲は短いのに。
私がチャリに乗るのはおおむね、自分が居住しているベッドタウンのなかをうろうろしたり買い物に行く時である場合がほとんどですが、銀座を自転車で疾走していくのはいかにも公私の加藤和彦さんやその交友関係の人物像を思わせるシチュエーションですね。
かくいう私も自転車による「ちょい遠出」も好きで、住んでいる西東京市から1時間くらいかけてたま〜に都心のほうへ行くこともあります。銀座も自転車で走ったことあるかも。駐める場所がないですよね。通り抜けるだけでした。
“マンボ・ズボン”というのは初めて知りましたが、裾がすぼまったズボンのようなので自転車乗りに向くのかもしれません。白いマフラーとおしゃれに決めます。後続のメロでは“ポニーテールに粋なサンダル 赤い口紅つけて”と、主人公像ではない人格、“かわいあの娘”の表現が出てきます。白と赤の対比が一曲のなかで演出されており、遊びの権化のような曲ではありますがソングライティングとして至極「ちゃんとしている」。歌詞はつのだ☆ひろさんですね。ブギなんだかマンボなんだかロックンロールなんだか。なんでもいいけどかっこいい好きな曲です。
青沼詩郎
『サイクリング・ブキ』を収録したサディスティック・ミカ・バンドのアルバム『SADISTIC MIKA BAND』(1973)
ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『サイクリング・ブギ(サディスティック・ミカ・バンドの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)
Cycling Boogie