ドンじゅらりん 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲・編曲:岸田繁。スイちゃんが歌うNHK『みいつけた!』エンディングテーマ(2020年3月9日登場)。岸田繁によるセルフカバーの配信シングル(2020年6月3日)がある。

ドンじゅらりんを聴く

岸田繁

ドンはジュラ語(?)だと私は思います。恐竜の多くに「〜ドン」がつく。「〜ザウルス」も多いでしょう。

ドンやリンといった擬態語のような名詞の末尾のような音韻を、メロディが華やかかつ動きが多くなるところにあてる作詞作曲が秀逸です。

またBメロというのかブリッジというのか、歌詞“ゆめにでてきた エリマキトカゲ”のところで和声がドミナントモーションを連ねて転々とします。ふわふわとした「夢」の感触を音楽で表現する妙味。ビート感もここでひっそりとし、枕のまわりを静かに保ちます。

どんどーん、などとバックグラウンドボーカルに子供の声。スイちゃんの声なのかな?

岸田さんのプログラミングの手腕によるものであろう、オケ。音が多彩。一体どれだけのトラックが込められているのでしょう。低音をつかさどるテューバ系の金管、トランペット、エレピやオルガンやクラヴィネット……リンリンと自転車を思わせるベルのトーン、クレシェンドし印象づけるシンバル。キックドラム。恐竜の咆哮のような効果音が要所で私の頭をよぎります。

生楽器のエアー音はほとんどボーカル類のみの様相でしょうか。プログラミング主体で構築された音景は想像の世界の純度を保全する意匠です。くるりのレパートリーでここまでプログラミングで貫徹するのも方向が違います。ソロ作家としての岸田さんの発想の世界、ある種のコンパクトさとある種の自由と広がりが天真爛漫に大発現しています。耳に近い輪郭の明瞭な音から、奥のほうに色彩を添える音まで、温度や色彩に富みます。

スイちゃん

かわいすぎて鼻の下が伸び、ニンマリ顔が私に張り付いてしまいます。かわいい。

スイちゃんのボーカルのポジションが、やはりちいさなからだから発せられるかろみがあるせいでしょうか、オケの低いパートの臨場感が豊かに感じられます。デデン! とインパクトするティンパニー。低音の金管は金管じゃなくてサックスの類(分類上木管楽器)などもいるのかな?

コッシーのサイドボーカルの賑やかしが存在感がありコミカルです。これまた私をニヤつかせる声色。スイちゃんのリードボーカルは響きが明るくてハッピーで楽しい声色です。口角がきゅっとあがっているのかな。“くぐったオバケー”のところのヒュードロ感せまる歌唱、コミカルで印象的、素敵です。後半のコーラスで作曲者の岸田さんのボーカルも加わってきて楽しさのボルテージが上昇。私の心のジュラ紀の火山が吹きそうです。

ビートのクラブミュージックあるいはブラックミュージックやヒップホップみたいな描き込みの細かさも際立って感じられます。岸田さん名義のオケトラックとスイちゃん名義のオケトラックでどこまで違いがあるのか細部まで比べかねている私ですが、同じ曲にこれほどまでに違う聴き心地や知覚の差異を味わえること自体に驚き、楽しみを覚えています。

歌詞 めくるめく古代のサイクリング

むかし パパは ディモルフォドン

むかし ママは ヴルカノドン

ドンドンドドドン ドドンドーン

ジュラきのタマゴで おやこどん

『ドンじゅらりん』より、作詞:岸田繁

ディモルフォドンは翼竜の類。空を飛べます。ヴルカノドンは首がちょっと長くて小顔、草食系の恐竜と察します。固有名詞からパっとその恐竜の姿を引き出せなかったので検索してしまいました。私も昔、恐竜好き少年だった自覚はあるのですが、パッと名詞を聞いてビジュアルを引き出せるのはせいぜいティラノサウルスとかトリケラトプス程度なのかもしれません。

ドンは恐竜の名詞の末尾のドン……かと思えばまさかの「おやこどん」。ドンはドンでもです。連想の趣、遊び心を感じます。恐竜を示すはずの「ドン」が大好きなご飯類のメニューを示す「丼」になってしまって、私の中の幼児が嬉々として高らかに笑います。ちょいちょい、食べちゃうの?! とツッコミを入れる私の中の幼児。

りんドンじゅらじゅら ドドンドーン

こだいのサイクリング りりんりーん

じゅらじゅらドンドン りりんりーん

『ドンじゅらりん』より、作詞:岸田繁

擬態語や名詞の末尾やらなんやらの音韻が大集合し大フュージョン。“りんドンジュラジュラ ドドンドーン”には私のフェイバリットキッズソング、『あわてんぼうのサンタクロース』の後半のコーラスの歌詞のラインを思い出します。“リンリンリン チャチャチャ ドンシャララン”(作詞:吉岡治)のところですね。

擬態語(+ほか)が大集合して、オケのサウンドもいろんなトーンが入れ替わりたちかわり賑やかしたかと思えば、オルガンのまろやかで暖かな音色が目立ってきて、去っていく自転車のように颯爽と音がやみます。

古代のサイクリングはそれ専用に地面からちょっと浮いた夢のような発明品の自転車でするんです、きっとね。めくるめく恐竜たちの姿、密林、火山、原野の数々。目をいくら輝かせても輝かせ足りない未知の世界を想います。

青沼詩郎

参考リンク

Shigeru Kishida | 岸田繁 オフィシャルサイト

参考Wikipedia>みいつけた!

コッシーを演じるのはお笑い二人組:サバンナの高橋茂雄さん。スイちゃんは増田梨沙さんが演じ、『ドンじゅらりん』の歌唱も増田さん。

スイちゃんは演じる子が代替わりします。増田さんは2019年4月1日から2024年3月29日、スイちゃんを務めました。

参考歌詞サイト 歌ネット>ドンじゅらりん

音楽ナタリー>くるり岸田繁書き下ろし、スイちゃん歌唱「みいつけた!」EDテーマ配信リリース

くるり公式サイト>ニュース 2020年3月6日 Eテレ「みいつけた!」岸田繁が新エンディングテーマ書き下ろし!

くるり公式サイト>デイスコグラフィー>ドンじゅらりん(うた:スイちゃん)

くるり公式サイト>ニュース 2020年6月2日 岸田繁 「ドンじゅらりん」セルフカバーを6月3日より配信!

岸田繁の配信シングル『ドンじゅらりん』(2020)

スイちゃんの配信シングル『ドンじゅらりん』(2020)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ドンじゅらりん(岸田繁の曲)ウクレレ弾き語り』)