ドリカムさんは私が物心ついたときにすでにいた……はオーバーかもしれないが、公式ページ1988年1月に結成とある。私の生年月日は1986年5月14日だから、「物心ついたときにすでにいた」も、著しく間違ってはいなそうだ。

LOVE LOVE LOVE』のシングルリリースが1995年7月24日。作詞:吉田美和作曲:中村正人。ドラマ(TBS)『愛していると言ってくれ』の主題歌・挿入歌。

MVに写るメンバーは3人。鍵盤を担当する西川隆宏は2002年3月21日に「DREAMS COME TRUEより独立」と公式サイトにある。現在は2人組の印象だけど、そう、かつては3人組だったのだ。

クリシェ(コード内のどこかに半音進行させる声部をもたせた表現)を多用したコード進行、滑らかな歌メロが美しい。

古典楽器(チェンバロ?)のイントロ。バンドが熱量を控えているイントロやエンディング付近のおいしいところでこの古楽器が目立つ。バンドの音がしっかりしているところではズンズンとピアノのストロークがリズムと響きをプッシュ。ホルン系を思わせるトーンの拍頭&裏打ちのバッキングフレーズ。スライドギターの合いの手がボーカルの隙間に鳴いたり、ボーカルに添ったり。コーラス(バックグラウンドボーカル)のアレンジが多彩。吉田美和の味わいのなんと幅広なことか。

コーラス(バックグラウンドボーカル)と、途中でドラムスが入ってきてから目立つハイポジションのベース・プレイに私はついザ・ビートルズのサウンドを思い出す。ドリカム(あえて略させていただく)のバックグラウンド(音楽的背景)としてはブラック・ミュージックの影響が強いのだろうか。当然ビートルズその人だってブラック・ミュージックの影響を受けているだろう。ドリカムに至ってはそのいずれもから多大な恩恵を受けているのかもしれない。偉大な音楽のシャワーを浴びて『LOVE LOVE LOVE』に至っているのかもしれない。

編曲、サウンドの構築の文脈が深い時層、広い地平を持っている。チェンバロ、それに帯同するピアノのプレイやアレンジ、ストリングスのピツィカートの響きなどにはほかでもない西洋音楽の様式を感じる。先に述べたように、ベースプレイやバックグラウンドボーカルにはどこか私に20世紀の顔、ザ・ビートルズを思わせるところもあるし、カーペンターズなども私の頭の中に顔を出す。ボーカルのパワフルさにはゴスペル、黒人霊歌のそれを感じる。ホルンっぽい音を生じさせているのはシンセサイザーだろうか、1980年代というか、サンプリング音が音楽の幅を広げ自由度を高めた時代を思わせるスタイルも感じる。

エンディングのドラムスには吹奏楽のマーチングのような趣もあって壮大な曲想を醸し主題の愛の永続性への願いや祈りのような思念を映す。ゴスペルや教会音楽のような壮麗さがあるし、コーラスの声部が折り返しから増えるなど緻密にアンサンブルの熱量をコントロールしている。歌詞の“LOVE LOVE 愛を叫ぼう 愛を呼ぼう”のフレーズが始まる部分からバグ・パイプも入ってきている(上のリンクのMVでは2分43秒あたりから)。スカートをはいたおじさんが名物のイギリスの伝統を思わせる音色である。

ずっと聴いていたいけれど、アンサンブルはフェイド・アウトに頼ることなくすっぱりと終わる(好感だ)。1行のラインを4回くりかえし。この時層の広さ・深さの映るトラックを3分台にまとめあげたのは偉業だ。冗長感とは無縁に、さわやかな、せつない希望を私に与えてふわっといなくなる。潔いぶん胸に残るのだ。MVで青い空のような背景に天使の羽のようなものを背中につけた吉田美和が映っている表現は、こうした、私が抱く「希望もあるせつなさ」の表現と重なる。

幅広い楽器・音色の編成はまさにそうした雑多で深く広い音楽の時層をすくって、現代のものとして表面に提示し直すポップのスタイルのお手本である。無計画な足し算を重ねた持ち寄りパーティの鍋料理ではこの美しさは醸せない。核心には主題の愛への誠実な態度と思いがある。それを真正面から描くために、これほどの編曲の洗練が必須だったのかもしれない。その響きの神々しさに私は唸る。

『LOVE LOVE LOVE』の神々しさをライブが伝えてくれる。かっこよくて私、溶けました。

青沼詩郎

『LOVE LOVE LOVE』を収録した『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』(2015)

『LOVE LOVE LOVE』含むライブビデオ『DREAMS COME TRUE CONCERT TOUR 2017/2018 THE DREAM QUEST』(2018)

『LOVE LOVE LOVE』(シングルと別バージョン)を収録したアルバム『LOVE UNLIMITED ∞』(1996)

DREAMS COME TRUEのシングル『LOVE LOVE LOVE/嵐が来る』(1995)