コンドルは飛んでいく El Condor Pasa 曲の名義、発表の概要など

1913年、Daniel Alomía Robles(ダニエル・アロミア・ロブレス)作曲。有名なカバーにSimon and Garfunkelの『El Condor Pasa (If I Could)』がありアルバム『Bridge Over Troubles Water』(1970)に収録、作詞:Paul Simon。

「サルスエラ」と呼ぶスペインのオペラ・ミュージックとして、ペルーの作曲家のロブレスが作曲したのが最初のようです。そのサルスエラ作品の題名がずばり『コンドルは飛んでいく』。有名な部分は「序曲」だといいます。

ネット検索する限り、サイモン&ガーファンクルの有名な発表は、ロス・インカスの演奏を下地にしてボーカルを吹き込んだものであるように読めます。

かなりの粗雑さと偏りを承知のうえで、楽曲『コンドルは飛んでいく』の伝播(発表)の前後関係をここで名前を挙げたもののみについて書き起こすとロブレス作曲によるサルスエラ→ロス・インカス→サイモン&ガーファンクルという順番になるでしょうか。

サイモン&ガーファンクルが用いたというロス・インカスのオリジナル音源の発表がなんなのか私の安易な検索だと特定しかねます。WikipediaのLos IncasページではEl Cóndor Pasa, 1970”とディスコグラフィにあり、サイモン&ガーファンクルのアルバム『Bridge Over Troubles Water』(1970)と同年です。

参考Wikipedia>コンドルは飛んでいく ダニエル・アロミア・ロブレス

参考サイト 世界の民謡・童謡>コンドルは飛んでいく 歌詞の意味・和訳 アンデス地方のフォルクローレ サイモン&ガーファンクルもカバー

上記「世界の民謡・童謡」サイトには、ロブレスによるアンデス地方の民族音楽の採取がベースになっていると書かれています。ロブレスの作曲したメロディと、実際に採取した旋律にはどれほどの差異がある(どれくらいロブレスの手が入っている)のでしょうか。

ベトナム戦争が激化した時代性を末尾に言い添えてポール・サイモンの歌詞を和訳したものが掲載されており、端的な歌詞が想起させる・暗示する広まりを印象づけます。余白の多さ、高原の空のような開放感を思わせる最小限の言葉、あるいは「宙」「言葉の外側」が醸す美しさを感じるのは私の幻覚でしょうか。

サイモン&ガーファンクル コンドルは飛んでいく El Condor Pasa(If I Could)を聴く

撥弦楽器のトレモロが雄弁なオープニング。ビート(拍子)から解放された永遠の時性、文明の悠久さを思います。複弦の弦楽器が含まれているでしょうか、シャワシャワと至極華やかで厚みとふくらみのあるストラミングです。

メインボーカルが真ん中からうるうるの残響感とともに日の出のようにあらわれます。ケーナというのか、おそらく縦笛でしょうか、高音担当の笛が左に、下ハモ担当の笛が右に振ってあるように聴こえます。

ロス・インカスが完成させた音源に、ただ「ボーカルを足す」感じでこうなるでしょうか? ミックス前のトラック別になっている段階のテープなどの貸与を受けてボーカルミックスを作り上げたのか? それともネット記事などを私が読み違えているだけで、あくまでロス・インカスが作り上げた器楽アンサンブル(アレンジ)をベーシックにしているというだけで、レコーディング自体は今作の音源のためにロス・インカスを迎えてサイモン&ガーファンクルが一緒に演奏を行ったのでしょうか。

コントラバスのベースがまた雄弁で、時折上行音形のピツィカートで大地から芽吹くようにオブリガードを「生やし」ます。右のほうからはオモテ拍、ダウンビートを強調する太鼓がズン、ズン、ズン、ズン……と4分打ちを鳴らします。マーチングバンドが含んでいそうな、ストラップなどで持ち運びながら演奏できるサイズ感のシンプルな太鼓をマレットで演奏している……そんな機動性のあるサウンドに聴こえます。遊牧民だとか、コンドルのような「根のなさ」を私に印象づける太鼓の音色です。

中間部でボーカルの音域が上がり、儚げで透明な響きです。ヴァースとは別録りした別トラックを思わせる、特異な存在感があります。浮世離れしているというか、来世から聴こえて来る声、神のお告げ、大地や雨の権化……そんな演出味を感じるサウンドです。

『スカボロー・フェア』もそうですし、サイモン&ガーファンクルは悠久な音楽の文脈の探求と昇華の功労者であると、なおいっそう私のうなずきを深くさせます。

青沼詩郎

サイモン&ガーファンクル ソニーミュージックサイトへのリンク

参考Wikipedia>サイモン&ガーファンクル

『El Condor Pasa (If I Could)』を収録したサイモン&ガーファンクルのアルバム『Bridge Over Troubles Water』(1970)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『コンドルは飛んでいく El Condor Pasa(If I Could)(ダニエル・アロミア・ロブレス→ロス・インカスを下地にしたサイモン&ガーファンクルによるカバー曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)