Eight Days a Week The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲: Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Beatles for Sale』(1964)に収録。

The Beatles Eight Days a Week(2009 – Remaster)を聴く

その曲の大部分を作った人、あるいは作曲において主導権を発揮した人がリードボーカルをとることが多いビートルズ曲だと思いますが、この曲はポールのアイディアを元にジョンが手伝い形になったような記述がみえます(参考Wikipedia>エイト・デイズ・ア・ウィーク)。

曲の核といえそうなタイトル「週に8日」的なものは、リンゴ語録だとする説と、車の運転手語録だとする説の両方があるそうです。

一週間は7日ですからありえないのですが、リヴァプール人は洒落が好きとも聞きますし、一般の人が日常で言っていてもおかしくなさそうにも思います。実際、ビートルズが曲にしてこの表現を世界的に知らしめる前から、市井の人にも用いられたことのある言語表現なのかもなと想像します。それを採取して曲にするアンテナと実現する、実行するところにビートルズの普遍的で革新的な作品を創出する能力を見出せます。

リンゴ・スターのことばづかいはしばしば聞き捨てならないものがあるらしく、それは文法的にちょっとオカシかったりするがためにその言葉を聞いた人に引っ掛かりをもたらすそうなのですが、リンゴが何気なくそういうリンゴ語録を発するのも、やはり彼らの故郷でそういう言葉づかいをしてしまう気風がすでにあるからリンゴがふと言うのだという説明もできそうに思いますがどうでしょう。

イントロとエンディングのギターの輝かしい響きと2拍目ウラに引っ掛けるリズムが印象づけます。フェード・インの処理であるところもビートルズ作品における初めての手法だと評価する向きもあるようです。

アコギのストラミングがリッチで、左には短くタイトに切ったエレキギターのカッティング。右には高らかにクラップが鳴ります。そのぶんドラムのハイハットのシャリシャリ感は左に比重を感じるのですが、オープニングとエンディングのドラムは右サイドに振ってあるように感じます。

ベースは4分音符をオモテ拍で恒常的にとっていくリズムで、延々とつづく「週に8日」を思わせます。表拍を実直に遂行していくリズムでも、ハネたようなスウィングしたような躍動あるグルーヴ感なのが秀逸です。

バンドの音をバンとブレイクして(放って)ボーカルハーモニーが映えます。空虚な感じのする調和したハーモニーに、「週に8日」の虚無感を幻視する気分です。

現実の器をはみ出る、現実の器では不足するくらいの物量の愛を表現する「喩え」とブライトなバンドの響き、どこかうつろなボーカルハーモニーがこの曲の持ち味です。シンプルで、あまり裏読みとか深読みをとかを気にせず楽しめる、娯楽作品的な意味でビートルズの傑作のひとつだと思えます。

青沼詩郎

参考歌詞掲載サイト KKBOX>エイト・デイズ・ア・ウィーク

ビートルズ ユニバーサルミュージックジャパンサイトへのリンク

『Eight Days a Week』を収録したThe Beatlesのアルバム『Beatles for Sale』(1964)

参考書

『ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫) 』(2015)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Eight Days a Week(The Beatlesの曲)ウクレレ弾き語り』)