華やかな主題歌・挿入歌
ケニー・ロギンスの楽曲『Footloose』。まっしぐらなビートにギター、シンセなどが絡み、ベースが推進力と拍動の解像度を与え、ケニー・ロギンスの的確かつニュアンスとパワーとソウルに富んだ歌唱が命を吹き込み青春の躍動を表現します。
映画を鑑賞する動機も基本、音楽から入る私です。このステキな楽曲を主題歌に据える映画『Footloose』を観てみたい。
Amazonプライムで観られたら良いのですがサブスク対象にはなっていない模様(2026年8月下旬時点)。幸い、作品単体の有料配信ならあります。100円くらいだったのでアリだなと思い決済。早速くだんのゴキゲンな音楽とともにボロボロのスニーカーが機敏に踊る足元が大写しになるオープニング。
青春ダンス映画だ(含むネタバレ)
予習せずに観始めました。これはダンス映画だ。まるでミュージカル映画みたいに、音楽と踊りが主体のシーンがしばしばやってきます。
主人公の身体能力の高いこと。器械体操もこなします。鉄棒のシーンあり。前転宙返りだかヒネリだか正しい技名がわかりませんが、主人公レンを演じるケヴィン・ベーコンがバチ!っとイナズマほとばしるような機敏で力強い体捌きをみせます。
主人公は都市から離れた街に転入してきた、街の人から見たらヨソモノの高校生。お父さんはいないみたいで、母親といっしょに叔父さんらしき世帯の世話になるようです。アメリカの、ちょこっとイナカくさい街という設定みたいです。日本でいったら、東京をぐるっとかこむ隣県……あたりの気風や立地条件が多少は似たものが見出せるかもしれません。千葉埼玉栃木群馬茨城神奈川……どことは言いませんが。そんな街のヤンチャな高校生たちの話、といった感じでしょうか。
主人公はダンスが好きなよう。体操部のキャリアを有する(出身 or 所属?)、という設定みたいです。ですが、物語冒頭付近から、牧師のお説教のシーンがあり風紀を質す雰囲気があるのです。たとえば音楽を爆音でかけようものなら。その空気振動を摂取して、心のままに踊ろうものなら……その牧師がオーディオデッキのストップボタンを押してしまうのです。
この街はかつて、ハメをはずしすぎた?若き命が事故にあって失われた傷を抱えているようで、それからというもの、心の枷を解いてしまうような扇情的な音楽や踊りはよからぬものとされている様子。さまざまなシーンや登場人物の発言、心情描写などからそれが鑑賞者に語られます。
ダンスを己を語る手段として信頼している、つまり踊ることを相棒のように思っているのが主人公なので、そんな禁忌に納得がいくわけがない。おれは踊りたいんだ!自由の権利行使にひたむく主人公の心と、いなか街が抱える傷に由来する保守の気風との格闘こそが本作の主軸です。
教会でお説教を街人に熱心に注いだり、ティーンエイジャーらの駐車場での乱痴気騒ぎのオーディオデッキのストップボタンを押したり、高校生の娘と対立してばちばちしたりしている牧師のショー(この牧師の男性の名前です)が本作における、主人公の最たる攻略対象の1人でしょう(あくまで、無闇に「ダメ」を押し付けているわけではなさそうな知性や慈愛、それと抱き合わせの「影」を感じさせもします)。
ショーの娘で高校生のアリエルが本作のヒロインです。物語の前半はカッコつけたこだわりがちょっとイタイ感じの車を乗り回すボーイフレンドと付き合っていますが、だんだん主人公のレンに惹かれていきます。これ、なんの映画?と思うくらいヒヤヒヤしてしまうようなヤンチャぶりが友人たちの目にも余るようなシーンといえば、並進する2台の車の間にまたがって立ち、調子に乗って風を感じながら、対向車に大きなトラックがやって来て迫る場面でしょう。この映画をどう観ていいのか戸惑わせる問題児なシーンでしたが、アリエルの跳ねっ返りぶり、街の保守的な(若者の青いエネルギーからしてみれば馬鹿ばかしくも映る)信条への反抗心を描く意図があったのかなと観終わった今では解釈できます。家が嫌なのか牧師の父親が嫌なのか、アリエルは都会の大学に進んでやろうかという野望があるようです。
主人公がやってきて以降に街に起こる種々のバッドニュース、生じる問題事項、諸悪の根源を主人公レンのせいみたくされてしまう風向き。レンとしては、ふっかけられた喧嘩にとりあえず応じた、そして喧嘩に勝ってしまったというだけだったりするのですが彼への風当たりは決して暖かく優しいものとはいきません。ちなみに物語の序盤で高校の廊下でおあつらえ向きに男子生徒と肩がぶつかって因縁をつけられるレンですが、機転の効くレンはすかさず男子生徒の帽子をどこで買ったのかと好意的に褒め、一目置かれてその場で男子生徒と名前を名乗りあいます。この男子生徒がウィラードで、本作の主要な2.5〜3枚目キャラ。これ以降、レンの重要な友人ポストとしてずっと登場します。ウィラードはダンスがからきしダメで、男女複数グループであるとき踊れる酒場に繰り出していってもビールばかりを追加して、踊りたくてムズムズしている一緒にいた女の子(同級生のラスティ)を酒場に居合わせた誰ともしれないオッサンの踊り相手に取られてしまう始末。(自分は踊れないが)俺のツレだとふっかける度胸は見せるのですがブン殴られて鼻血が痛々しい始末。物語の中盤〜後半にはついにレンからダンスの手ほどきを受けつつ、終盤の大団円では彼の人懐こさが表れた嬉々としたダンスを披露する成長ぶりをみせます。
ダンスや扇情的な音楽に異を唱える立場を表明する牧師のショーではあるのですが、物語の中盤〜後半くらいでは、青少年に有害そうな図書を焼き払う動きを止めに入ります。また、あるとき(扇情的な文学を肯定的に教材にでもしたのか、)国語教師の追放の物議に反対したのもショーだった、というような彼の内なるポリシーがにじみ出るようなエピソードやシーンがあります。
主人公のレンは、ダンスが有害なもの、むやみやたらに扇情的なものとするのはいかに誤った解釈であるか、町の総会?らしき公衆の場で、聖書の解釈をまじえて熱弁し、自分たちの卒業シーズンにかこつけた、この街でのダンスパーティの開催の容認を訴えます。その場ではレンの熱弁が歓迎されたようにも見えましたが、では開催してよいのかふたつ返事でよい結論が出たのかといえばそれもなんだか微妙な感じでこの夜の総会?はとじられます。
私には少しよくわからなかったのが、確かこの総会よりあとのシーンだったと思うのですが、レンが夜な夜なショーの元を訪ね、落ち着いたトーンで彼と話をします。レンはなにやら写真をショーに見せて、おだやかな諭すような声色で語らい、それでなんだかダンスパーティの開催に最終的なショーの合意も得られたみたいになったところがなんだったのか私にはちょっとよくわかりませんでした。あの写真を見せたことで、なぜダンスを認めない立場だったショーが最終的に軟化してしまうのか、何か理屈があるようなのですが……。ちなみに、この街に傷を残すこととなった、かつて命を落とした若者はほかでもない、このショーの息子さんです。アリエルのお兄さんにあたる、ということでしょうかね。
やや街から離れた場所でのダンスパーティーの開催にこぎつけた高校生の面々。ここで踊り散らかしてハッピーエンド!の前に、アリエルの元カレのちんちくりんが会場の敷地に殴り込んできて、「今夜は喧嘩しないと心に決めているんだ(だからやめてくれ)」というビシっとハレの衣装を着たウィラードに暴挙をふるい、地面に転げて砂埃まみれのウィラード。ですがレンが入って力で制圧します。
主題歌『Footloose』に合わせて心の解放を謳歌するダンスを次々に披露する高校生の面々。お前誰だ⁈(こんな奴いたっけ?) ダンスうますぎるだろ!と私に驚嘆させる華やかな団円です。ダンス苦手の克服を証明するウィラードもこのシーンで確認できます。会場の外には、心配なのか気掛かりなのかショーとその妻のバイの姿。アリエルの味方でもありショーの味方でもあり、ひいては街のみんなの味方であるようなバイの器の大きさによって物語が無事鑑賞者のもとへ綺麗に包まれて送り届けられる功労あり。
若く青い足のかるさ
街には若い命が失われた黒歴史があり、それによってダンスが禁じられている。そこにダンスを最たる自己表現の手段とする主人公が転入してくる。彼の街への参入によって、紆余曲折ありながらも人々の心の態度とダンスへの解釈が変わりハッピーエンドとなる。私の弁で雑に本作の起伏をくくるとシンプルなものです。バレるほどの凝った「ネタ(逆転劇、種明かし)」はそもそもないタイプの作品でしょう。
挿入歌、主題歌が非常に魅力的で個性が立っており華やかです。本作の監督:ハーバート・ロスは振り付け師のキャリアを有する人だそうで、それを知ってみるとなるほどと思います。私自身が盲目的なまでに音楽を溺愛し信頼するように、ダンスも人の心の自由の権利行使の象徴なのでしょう。原始的な儀式であると同時に平和の建設と本能と理性・知性の昇華行為です。
そこに、高校生たちのヤンチャな日常の波乱万丈がテクスチャ(質感の詳細)を与えます。主題歌『Footloose』の明瞭でパワフルなサウンドがいかにも1980年代らしさを雄弁に語って思えますが、こうした高校生たちのヤンチャの詳細も、ひとつの時代・ある地域の世代の「らしさ」を物語っているのかもしれません。
私の人生の指針をぐらつかせたり、考えるべき課題をズシンと課すような命題を孕む「映画らしい重み」のある作品とは違いますが、逆に「映画らしいかろみ」も認めうるでしょう。ストーリーやことの運び・その見せ方やそれに割くしかるべき分量・整合性についていえばツッコミの余地は随所にあると思いますが、それも含めて愛嬌、若さ・青さだと思えます。その意味で本作はエンターテイメント映画として、主題に誠実でノイズの少ない潔さが私には好感です。私が「音楽っていいね!」と思っているのと同じように、「ダンスっていいね!」
青沼詩郎
参考Wikipedia>フットルース (1984年の映画) アリエル役のロリ・シンガーはチェロ弾きだというのに驚き。
フットルース [DVD] Footloose パラマウントサイトへのリンク
映画『Footloose』(1984)DVD、BD
『Footloose』サントラ