Good Day Sunshine The Beatles 晴れた日の横断

Good Day Sunshine　The Beatles　曲の名義、発表の概要

作詞・作曲：Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Revolver』（1966）に収録。

The Beatles　Good Day Sunshine（2009 Remaster）を聴く

これ、すごい変則的なツインドラムですね。ヘッドホンで両耳で改めて聴いて気づきました。

スネアでタス、タス……とオモテ拍を打つ。ヴァースのところはドッタ、ドッドタ……とベーシックを叩きます。

コーラスで変化が。メインのドラムが左寄り（スネアだけ？）ですが、右側から、ボーカルメロの“Good day sunshine”のリズムを強調するドラムが入ってきます。オープニングから最初のコーラスに入るところでもサスペンデッドシンバル風のトレモロを入れてコーラスの拍頭を強調しています。

ジョージ・マーティンの酒場みたいなピアノソロのところでも2台目のドラムが右チャンネルでスネアを打っています。

ギターが入っている説と入っていない説があるようです。ピアノとベースが組み合わさった倍音やゲイン感がなんとなく、トーンを絞ったギターの完全五度のストロークがいるようなサウンドになってもいます。そういうギターがいるかな？　というふうにも確かに聞こえますが、ピアノやベースのストロークとあまりにもタイミングがよく合っているので、やっぱりピアノやベースの倍音が組み合わさって幻のトーンを絞ったギターがいるように感じるだけかなとも思います。でもハイコードのポジション移動をするようなグリッサンドのニュアンスがやっぱりいるような気もするのですが、それはフレットを滑るベースのニュアンスがそう勘違いさせるのかもしれません。完全五度っぽい響きはピアノが出しているのか、それとも単にピアノやベースの倍音なのか。

ジョージ・マーティンのピアノのソロの終わりの音の切れ方とか、エンディングでディレイしたボーカルだけが残るときのバンドの切れ方とか、テープ録音・編集の時代を思わせる切れ方がざっくりばっさりしていて面白い。写真をちぎって貼って一枚の絵をつくるコラージュみたいな感覚が楽曲を横断している気がします。間奏の短いピアノソロもそうですし、２台目のドラムスの出入りのしかたとかもなんだかコラージュ的な感覚に満ちているのです。

キーは私はBだと思います。ヴァースでAキーに行って、間奏ではDキーに行く。フラフラしていて変てこでもあるのですが、安定感と晴れやかな気持ちよさが同居してもいます。この独創性がかえって気味がわるいくらいです。メジャーキーをうろうろするからでしょうか、常に笑顔すぎて気味が悪い人みたいな……陽光のありがたみがひとえにさわやかに映り込んだ楽曲だとも思えるのですが、おふざけと命懸け（真面目）のグラデーションとポーカーフェイスこそがビートルズが長年にわたって世界のファンの心を掴む一因でしょう。この世で至高のウィットだと思います。

コーラスのボーカルメロが絶妙で、「♯ファー♯レー♯ファー♯レー」（ぐーっでーいさーんしゃーいん）の「しゃーいん」のときの音程が根音F♯の和声に対してシックスの音程になっています。このメロセンスがポールだなぁと思います。これ私、1人で何気なく真似してこの曲をギターで弾いて歌おうとしてみるとついシックスじゃなくて五度の音程で間違って歌ってしまうのです。

コーラスのボーカルメロディのリズム形の反復はごくシンプルですが、コロコロと変わる拍子を挟んで単調なビートを奇天烈な味わいに変えるマジカル。

ジョージ・マーティンによるピアノソロのスケッチ。短2度のずりあがる・さがる旋律音程を大部分に含むフレーズです。ちょっと千鳥足のごきげんな飲み客みたいな趣です。うまいことおだてたらおこづかいくれそう。

The Beatles　Good Day Sunshine（2022 Mix）を聴く

メインのドラムが真ん中に。ボーカルの近さ、各パートの艶めきが増して感じます。やはりメインのドラムが真ん中にいると複数のうわもの（ピアノ）がのびのびと左右に開く印象になり、定位のバランス感は現代の感覚（美観）に近づくように思います。エンディングのコーラスの返しでボーカルパートが増えるところも鮮やかな印象です。

2009 Masterに戻って聴いて、もう一度2022 Mixを聴いて……なんてやっていると、私の願望が映り込むのか、ますます幻のギターがいるような気がしてきます。なんだか、ピアノのストロークのタイミングとちょっとずれたアップストロークのギターが左寄りにいるような気がするのです。ここまで気になってくると、むしろ「いてほしい」という私の願望が幻聴をもたらしているのか……とにかく、ピアノやベースギターの弦の倍音って、ときにほかのパートがいるように錯覚させるくらいに豊かに出ているのだと濁して退散します。また時間をおいて聴きたいです。