遠くからきたふしぎな存在、プリンス。それと、あの娘。主人公はこのふたりを観察している状況でしょうか。主人公の意中の人があの娘。あの娘と逢引きしているのは星のプリンス。“銀の瞳”というのが観察者たる主人公、あるいはリスナーの私の平凡な容姿とかけ離れた星のプリンスの独特の雰囲気を物語っています。宇宙人?
ラブソングとしては割と珍しい部類かもしれません。自分と意中の人を結ぶ線と、その周辺を描くのがラブソングの常套ですが、「ぼく」はどちらかというと、二人の周辺にいるだけに見えるのです。ふたつの点のどちらにも立てていない。疎外感。ちょっと寂しい雰囲気はこのせいか。
ですがエンディングはランランラン……。ランランいってる場合じゃないよっ! ちょっとツッコませます。それくらい、「敵わない相手」然とした特異な光を放っているのが、主題の星のプリンスなのでしょう。あわよくば星のプリンスになりたい。
あの娘への強い思いのディティールが描かれているかといわれればそうでもない。「あの娘に対する、ぼくの思い(愛情・恋愛感情)」に、そこまでフォーカスしていません。星のプリンスを、「いいなぁ」……と思って、陰からみている。蚊帳の外っぽいトホホ感。今はまだそうだとしても……
「ランランラン」と言える未来がくればいい。エンディングは希望の象徴です。
久美かおり版
1:41頃でやっと久美かおりさんが出てきます。“星のプリンス”の部分のみの歌唱。ほぼタイガースです。モノラル音源でしょうか。音がまとまってきこえます。
2:35頃“あの娘を明るく”……でふたたび久美さん。ですが字ハモのハーモニーパート。最後の“星のプリンス”とエンディングのランラン……はユニゾンです。
久美かおりさんを認知を広めるインフルエンサーとして『星のプリンス』は大きく貢献したのかもしれません。楽曲『星のプリンス』の作品の内容に久美かおりさんが占める成分は非常に少ない。歌声、素敵です。歌手として作品を出した期間はあまり長くないようですが、他の作品を聴いていきたい。せっかく『星のプリンス』がきっかけをくれたのですから。
むすびに
タイガース版は定位もついていて音が臨場感があります。ドラムスなんか右にがっつり振られていますね。ハイハットの代わりにスタンドにタンバリンを取り付けてスティックで叩いているのでしょうか。左のほうからビブラフォン。ベースは残響が左右に広がる感がありますが一応まんなかでしょう。エレキギターの存在感が薄く、間奏のソロではっきりします。ストリングスがうるわしい。タイガースのBGVのハーモニーが気持ち良い。みんなまっすぐで良い声です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ザ・タイガース 世界はボクらを待っている
『星のプリンス』を収録したザ・タイガースのアルバム『世界はボクらを待っている』(1968)
久美かおりのアルバム『星のプリンス コンプリート・コレクション』(2014)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『星のプリンス(久美かおり、ザ・タイガースの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)