映像

がむしゃら感すごいドラムスのオルタネイトストローク。ハーモニカを体を揺らして吹くウェーブした髪のトータス松本が若々しいです。ちょっとスピッツ・草野マサムネとも似て見えます。美男子です。ややうしろからナメたカットの映像でアゴの下の細さが際立ちます。ドラムス・サンコンJr.はレギュラー・グリップ。

画面の色は情熱を映したライティング。照明・色彩で曲のホットさを表現しているように思います。大きなハットをかぶったギタリスト・ウルフルケイスケが複数の弦を豊かに響かせたソロ・ギター。バックグラウンド・ボーカルしながら演奏するメンバーそれぞれの個性が滾ります。トータス松本に同調してアツく歌うサンコンJr.、朗らかに歌うウルフルケイスケ、ちょっとシャイそうに歌うジョンB。シンプル・イズ・リッチといいたくなる映像です。

YouTubeウルフルズチャンネル概要欄より、“このMVは99年発表の「ラブソング・ベスト Stupid & honest」に新録音で収録された時に制作された。”とのこと。

曲の発表・名義についての概要

作詞・作曲:トータス松本、ウルフルケイスケ。ウルフルズのアルバム『爆発オンパレード』(1992)に収録。

聴いて雑感

高校生くらいの頃に初めて聴きました。元気! オラ感すごい! スリーコードで弾ける! テンション高い! そう思っていました。

3連音符の拍子。1拍を3分割しており重みがあるビートにも思えるのですが、前に快調に進むエネルギーがあります。重みは情熱の質量か。

“長いこと待った甲斐があった”という歌い出し。このたった1ラインで、主人公らの物語の津々浦々への興味が湧きます。何を待ったのか? 胸熱ストーリーを期待させ、裏切らないウルフルズ。

コードはとにかくシンプル!と思っていたのですが、その運び方にうなります。

3つしかないコードですが、それらをうまく回して、どこにどれくらいの長さで・どんな順番で当てるかの妙によって、各小節のアタマにくるコードをうまいこと散らしているのです。

たった3コードでもこんなにも音楽が豊か。これを直感でやっていたらすごいですが、むしろ直感だからこそやれる妙技な気もします。アタマで考えて思いつくアイディアではないのでは……? もちろん、狙ってやったのかもわかりませんけれど。

・Ⅳ|・Ⅰ|・Ⅴ|

たとえば ↑歌詞「やっとみつけたよ おまえいい女」のところの和音です。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、||で囲ったところの頭を太字にしているところがおわかりいただけますか。たった3コードなのに、小節のアタマにくるコードが循環(いつも変化)しているのです。

太字だけ(各小節のアタマの和音だけ)見ていくとⅠ → Ⅴ → Ⅳ → Ⅰというおおまかな流れがみえてきますね。Ⅴ→Ⅳという、逆行っぽい動きがみえてきます。Ⅴ→Ⅳへの直接の連結は、古典音楽ではやらなかったポップスならではの語彙です(もちろん、ここでは小節のアタマにくるコードのみを抽出してみているだけですので、『いい女』のコード進行にしても直接逆行しているわけではありません)。

スロットがまわって、フェイス(おもて)がめくるめく変化していくかのようなコード進行です。ウルフルズはDメージャーキーでパフォーマンスしています。

『爆発オンパレード』収録の『いい女』

私が長いことオリジナルだと勝手に思い込んで聴いていた版は1999年の新録版でした。彼らのファーストアルバム『爆発オンパレード』収録の『いい女』はもっと滾っていてテンポが速い。コードもすこし回し方がちがう部分があるのと、歌がないところの楽器の様相など細部は結構違うところがあります。LとRのふたつのトラックに収まった音楽作品であるのを疑わせるくらいのはみ出し感。レコーディング時の熱量がこちらのスピーカーの前まで溢れてきそうです。スコンスコンと抜けまくったスネア、狂い咲くハーモニカ、若々しいトータスさんの歌唱のコミカルではじける元気がまぶしい。

青沼詩郎

ウルフルズ 公式サイトへのリンク

『いい女』を収録したウルフルズのファースト・アルバム『爆発オンパレード』(1992)

『いい女 (1999 New Recording)』を収録したウルフルズのアルバム『ベストだぜ!!』(2001)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『いい女(ウルフルズの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)