楽曲の出自 日本での扱い
Harry Belafonteの『Jamaica Farewell』が原曲。Harry Belafonteのアルバム『Calypso』(1956)に収録。作詞・作曲:ロード・バージェス(Lord Burges。あるいはアーヴィング・バーギー:Irving Burgieとして知られる)。ハリー・ベラフォンテのシングル『バナナ・ボート』(1956年、日本では1957年か)のB面に『さらばジャマイカ』を収録。
1973年6〜7月にNHK『みんなのうた』でボニージャックスの歌唱が放送された。日本語詞の作詞は峯陽、作曲は西インド諸島民謡(パブリック・ドメイン)とされている。『【復刻盤】続NHKみんなのうたより 名曲100歌~〈1969-1977〉思い出の歌たち~』(2021)に収録。
世界の民謡・童謡>さらばジャマイカ Jamaica Farewell 歌詞と和訳
歌詞の映す、主人公の哀愁ただよう心情とジャマイカの風情が伝わってくる和訳です。レゲエのルーツとしての文脈でジャマイカの輩出するミュージシャンの存在についてふれています。コーヒーやバナナの産地であることも関連づけられています。作者のロード・バージェスが民謡をつないで編んだ作品であることがわかり、日本語で歌ったボニー・ジャックスの作曲の名義がパブリック・ドメインとなっている理由がうかがえます。曲の出自、曲の歌詞の内容、それらが描く周辺情報やこの楽曲と音楽ジャンルの背景についてまで触れた記事が大変貴重でありがたいです。
Discogs>石原裕次郎* / 沢たまき* – アナスタジア / さらばジャマイカ
石原裕次郎の『アナスタジア』とのカップリングで沢たまきのパフォーマンスする『さらばジャマイカ』が1957年には発表されていることがわかります。
J-WIDで曲名:『さらばジャマイカ』をアーティスト名:沢たまきで検索すると、訳詞:大高ひさを、作曲:TRADITIONALであることがわかります。
高石ともやとザ・ナターシャー・セブンのパフォーマンスする訳詞は高石ともやによるもののようですし、ボニージャックス版の峯陽含め、日本語版が数多く存在するであろうことがこれだけでも察せられます。
森山良子さんもパフォーマンスしています。ひょっとしてフォークとしても流行った文脈があるのでしょうか。だとしたら、1950年代に入ってきてから、1970年代前後にも『さらばジャマイカ』を愛好する人が日本に一定層いたのかもしれません。
ボニージャックス
“別れはつらいさ でもまたいつかあえるさ 丸い地球をゆけば またここへ もどるわけさ ほら 聞こえてくるだろう やさしいあの歌 うたえば いつも 僕らは いつも 希望とふたりづれ”(『さらばジャマイカ』より、作詞:峯陽)
地球の地の理をかたる歌詞。そりゃそうだ、どこまでもおなじ方向にいけばもどってきます。現代人の常識ですが、ひと昔前の人にしたら驚愕の真実だったかもしれません。
ヴェテランミュージシャンがデビューしたての頃の表現にまわりまわって近づくことを原点回帰などと評することがありますが、地球の真の姿をいくさまと重なるように思います。原曲の、主人公の哀愁みたいなものを、ポジティブにやさしくあたたかく表現した感じの日本語詞が好きです。
ハリー・ベラフォンテ
ボサノヴァを思わせるような非常に軽い発声が気持ち良いです。ギターの発音もこれまた軽妙。力が抜けていて、ラクちんに響いている感じが聴き心地よいです。ちょっとボーカルが右に抜けていくようなミックスを感じます。非常に近くに感じられるボーカル。明瞭ですがウォームな音像です。ハーモニーパートのボーカルが本当によく調和しています。極楽な土地を思わせます。こんな場所へなら旅行してみたくなりますね。
Spotifyにあるものと演奏内容は同一ですが音像が全然違います。異マスターでしょうね。
楽曲が愛好された地域的・期間的な振れ幅をベラフォンテのオリジナルと日本のミュージシャン諸氏のカバーの広さが物語っています。末長くカバーしたい歌。
青沼詩郎
ボニージャックスの歌唱を収録した『【復刻盤】続NHKみんなのうたより 名曲100歌~〈1969-1977〉思い出の歌たち~』(2021)
『Jamaica Farewell』を収録したHarry Belafonteのアルバム『Calypso』(オリジナル発売年:1956)
ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『さらばジャマイカ(ハリー・ベラフォンテのヒット曲の日本語版)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)