六月は祝日がありません。そのせいか、ソングライターのまなざしをかえって浴びることがあるように思うのです。日陰に視線をやるように。

June スガシカオ 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲: スガシカオ。スガシカオのアルバム『TIME』(2004)に収録。

スガシカオ Juneを聴く

ざらざらの画用紙のうえにで絵筆をすべらせた水彩画みたいな独特な声がスガシカオさん作品のはんこだとつくづく思います。この方が声を、吐息をのせたら画面はたちまち「スガシカオ一色」になるのです。

バンド全体のサウンド、一つひとつのパートの確かさ、その噛み合わせの良さに思い出すのはスキマスイッチのサウンドです。オフィス・オーガスタつながりでなんだかやはり毛並みが合うアーティストがつどうのかわかりません。

「奇を衒っていない」と表現してしまうのは私の語彙の陳腐さの罪ですが、なんというんでしょう、確かな腕のミュージシャンの頭数を揃えたら、ライブで録音作品のアレンジが再現できる種類の「確かな気持ちよさ」を感じるのです。こうでなきゃね、と私をうなずかせる種類の端正さです。

エレクトリックピアノのリフが要です。間奏で、それまでのエレピのリフのモチーフがオルガンに乗り移ったみたいに展開されるオルガンソロがうま味。オルガンはロータリースピーカーに突っ込んで収録しているのでしょうか、左右の広がり感がありつつも中央付近〜奥にいるような印象です。バンドの音像に溶け込みつつ、かつ個別のアレンジが埋没しない気持ちの良いサウンドはオルガンひとつとってもそうですし各パートについてもそうです。

Aメロなどは左サイドが少しすっきりしていて空間多めです。ワウギターがミャウと鳴くための、スルーパススペースをとってある感じなのです。このワウギターがいいですよ、また。スガシカオさんのファンクネスある音楽性と、切っても切れない要サウンドのひとつがこうしたワウギターではないでしょうか。

各パートの演奏の確かさで聴かせますが、オープニング付近とエンディング付近にトラックメイキング的な工夫を感じる点があります。オープニングはプログラミングなのか、メインのドラムとは違うリズムトラックが入っているようです。このローの伸びた艶々のリズムトラックが怪しい艶やかな色めきです。ワウギターとコンビネーションしている感じでしょうか。

エンディング付近には、広がりのあるスガシカオさんのボーカルパートが降臨します。それまでのベーシックな字ハモとは扱いが違うサウンドに聴こえます。エンディングで、トラックの華やかさが最高潮になる細かい工夫が効いています。

June 君に書く手紙には つい ”元気でいます”と 書きはじめたけど… それでいいと思う

『June』より、作詞:スガシカオ

強がって「元気」と書いてしまったけど、実は「元気」と能天気一辺倒に言えはしない複雑な身のまわりの近況があるのかもしれません。それでも、総合して「元気」といってしまってやっぱりいいんだよ。おれは、結局は元気だといえるんだよ、と想像するとグっときます。

それは単に自分の近況の総合的な評価でなく、相手に対する思いやりがにじんだ様相なのです。「元気じゃない」とか、「元気とは一言では言い切れない」ことをだらだら書いたら、まるで梅雨のパッとしない空模様と心身のけだるさの権化ではないですか。そんな手紙を、君に送るのは許せない。君への思いやりがうかがえる気がするのです。愛情あってのことではないでしょうか。

もちろん、ありのままの複雑な近況を、難解なままに正直に吐き切ることも、ある手の相手への敬意と信頼のあらわれかもしれません。それはどっちの態度が尊いわけでもない。どっちも尊いと思います。

青沼詩郎

参考Wikipedia>TIME (スガシカオのアルバム)

スガシカオ 公式サイトへのリンク

参考歌詞サイト 歌ネット>June

『June』を収録したスガシカオのアルバム『TIME』(2004)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『June(スガシカオの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)