悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE) 桑田佳祐 不可侵の夏を胸に共に歩く
桑田佳祐さんのソロ第一弾作。
「夏の女神に」……と歌い出しますが続くのは「最後のKissを 抱き合うたび溶けそうな 瞬間(とき)にお別れ」。夏まっさかりの曲かなと一瞬思えば、どうやら夏をふりかえっている、回顧している曲なのではないかと。話を本曲からそらしますが、稲垣潤一さんが歌った『クリスマスキャロルの頃には』という曲名と同じフレーズをサビに含む有名曲は冬まっさり・クリスマスまっさかりな印象を一見リスナーに与えますが、よく歌詞をみると、クリスマス真っ只中がやってくるのを少し事前の立ち位置から見ている晩秋〜初冬くらいの歌なのではないかと思えます。本曲『悲しい気持ち』も、夏まっただなかではなく、すこしずれた距離から夏へ慈愛のまなざしをやるような哀愁の風がとおりぬける時空の隙間を感じるのです。
かちっとしたプログラミングのサウンドにはタイム的に・グルーヴ的にスキがなく、あの人の寂寥には誰しもが立ち入れないという・儚さ・遠さを思わせます。尊び、遠ざける位置どりです。
心の夏、胸の中にある夏と向き合えるのは本人だけ。そこに立ち入れはしないが、孤独に夏を胸に持っているあなたの隣に立ち、一緒に似た方向をこころざして歩んでいくパートナーシップ・友好関係は、他者とも結ぶことができるはずなのです。
ソングライティングやサウンドメイキングのかっちりした完璧さに映り込むのは厳しくも緻密な人間の普遍。1987年のリリース曲(来年になったら40周年!)、時空を超えた悲しみの普遍が本曲にはパックされています。
悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE) 桑田佳祐 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:桑田佳祐。桑田佳祐のシングル(1987)、アルバム『Keisuke Kuwata』(1988)に収録。
桑田佳祐 悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)を聴く
全体がコントロールされた印象を受けます。ドラムトラックが打ち込みなのが大きいでしょう。右にハイハットが寄っていて、左でクラッシュシンバルがはじけます。生ドラム特有のダイナミクスのピーク感は本曲においてはかえって邪魔になったかもしれない。桑田佳祐ソロならではの独特の境界、個の輪郭の強さの表明なのかもしれません。ドゥリドゥリっとベースが深く色っぽい。
余韻のあるエレピと木琴の音がピタリと重なりあったみたいな音色が伴奏の印象を牽引します。エアリードのような音がオブリガードを加え、後ろ髪のながい感じのストリングスがエンディングに残ります。
桑田さんの歌唱が制動された空間に孤独にはまります。前面におおいかぶさるような音像ではない。輪郭と聴き手の間に距離があります。響きをまとっていてハーモニーのトラックを伴う部分もあります。
ビートにあまり極端なセクション分けはなく、さらっと一方向に流れていきます。俺の悲しみを分かってくれよ、というにじり寄りは一切ない。いつもあなたはなんにも言わずに行ってしまうんだから……というオトコの背中を感じさせる妙味があります。
青沼詩郎
参考Wikipedia>悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)、Keisuke Kuwata
参考歌詞サイト サザンオールスターズ 公式サイト>悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)
『悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)』を収録した桑田佳祐アルバム『Keisuke Kuwata』(1988)