私が高校生のとき大好きでよく聴いていたゆらゆら帝国。
『恋がしたい』
『ゆらゆら帝国のめまい』(2003)に収録。作詞:坂本慎太郎、作曲・編曲:ゆらゆら帝国。
澄み渡るゲストボーカルは武田カオリ。ダブリングしてある。最小限の回数歌っているよう。ワンコーラス目の途中から坂本慎太郎も1オクターブ下でユニゾンしたりハーモニーしたり。
ワウペダルでこもり・ひらきを繰り返しシックスティーンを刻むエレキギターはドラムスのハットとコンビネーション。二つのパートがシックスティーンを埋めても、ギターはニュアンスが常にワウワウと移ろうのでぶつからない。ベースは打点の数を抑えている。
ミュートしたトランペットが妖しい。間奏・後奏でミュートを外したオープンなサウンドで高鳴る。
左にコーラスがかったさびしげなギターの単音。歌詞“探しているよ”で、持ち替えたようにピアノが入ってきてアタマとウラを移勢でアクセント。
Ⅰ Ⅵm Ⅱm Ⅴ のコードの繰り返しだけど、「恋がしたい」のフレーズを繰り返すコーラスに入る前にⅡm——Ⅴ——の引っぱりが入る。ミュートしたトランペットとエレキギターがミャウミャウいう。
最後のコーラスでオルガンが入って、エンディングにボンゴ(?)も入る。オープンなトランペットとボンゴが、フェードアウトするベーシックリズムに取り残されて終わる。
1コーラス目のあとの間奏、後奏の部分はⅤmのコード。トランペットのスケールは主調のスケールに対して、「シ」(ⅶ)が「シ♭」(ⅶ♭)になる。ブルージーで独特なもどかしい響きに聴こえる。シンプルなコード進行の繰り返しを中心に、違和感のスパイスで引き締める。
「恋がしたい」とリフレイン。嘆くようで、平静。
「花や草」は現実で目の前にあってもおかしくない。ありふれた身近な存在。一方、「飼いならせない白馬が」「童話の海で人魚が」などと、現実を越えて夢を見ているような、まどろんだ意識の中にいるような表現も入り交じる。
「格子のなかで 閉じ込められてるそいつの鎖を ほどいて 鍵をはずしてほしい」
「氷のなかで 閉じ込められてるそいつの鎖を とかして 鍵をはずしてほしい」
(『恋がしたい』より、作詞:坂本慎太郎、作曲:ゆらゆら帝国)
抑圧や拘束を思わせる表現。白紙の感情のような歌。美しく気持ち良い。絶妙。もちろん、底には主観的な願いや望み・欲の類が沈んでいるのかもしれない。
美しいものは、深層に不気味さを隠している。そう感じることがある。
青沼詩郎
ロフトグループのメディア、Rooftopによる坂本慎太郎へのインタビュー。ありがたし。
『恋がしたい』を収録した『ゆらゆら帝国のめまい』(2003)
ご笑覧ください 拙演
“高校生のときに聴いて好きになったゆらゆら帝国。
『バンドをやってる友達』『ボタンが一つ』そして『恋がしたい』とゲストボーカル成分多めのアルバム『ゆらゆら帝国のめまい』(2003)収録。
久しぶりに『恋がしたい』を聴いた。
セブンスの音をメロディにつかっていて洒脱。
淡白なゲストボーカルは武田カオリ。まっすぐで力の抜けた発声。でも息がコントロールされている。それを感じさせないのが巧い。
作為の効いたダブリング、匿名性のあるボーカルは、聴く人がいろんな色をのせられる。それはつまり偏見とか願望が映るということなんだけど、それでいい。
ミドルテンポのファンクなかんじの曲調。ワウペダルのギターカッティング、ミュートあり・なしのトランペット、ピアノ、オルガン、ボンゴだかのラテン太鼓と音の演出がきもちいい。
という曲の拙演、ご笑覧ください。”