恋の汽車ポッポ 大滝詠一
作詞:江戸門弾鉄、作曲:多羅尾伴内(それぞれ松本隆、大瀧詠一の変名)。大滝詠一のシングル(1971)。大滝詠一のアルバム『大瀧詠一』(1972)に『恋の汽車ポッポ第二部』を収録。
大滝詠一 恋の汽車ポッポ(第一部)を聴く
クラップが時空に穴を開けそうなくらいポッカリ・くっきりとアクセントします。
大瀧さんがベースを演奏し、細野晴臣さんがドラムスだとか。ダカダカダカ!とツッコンだイントロのスネアのオルタネイトストロークの勢いが傑作です。
ロックンロール伴奏の定型、根音から5thと6thを交互に行ったり来たりする伴奏形。スタイルばっちり。ギターには鈴木茂さんも参加。伴奏のギターが大瀧さんで、オブリガードしている鋭い音色が鈴木さんのギターかもしれませんね。
“走れベイビー 急げベイビー
野を越え 山越えて
ルイジアナまで ひとっとび
急いで 恋の汽車ポッポ”
(『恋の汽車ポッポ』より、作詞:江戸門弾鉄(松本隆))
メンフィスやルイジアナとかいった地名の固有名詞。“ボビーに首ったけ”といった人名の固有名詞。音楽スタイルもわかりやすくロックンロールですし、大衆音楽のツボを押さえに行った……というかむしろ大衆音楽のツボだけで構成しに来ているアティテュードを感じます。
演奏メンバーがたとえば普段ベースの細野さんがドラムでふだんギターなどを演奏して歌う大瀧さんがベースを引くといった具合に、「遊んでいる」とまでいっていいかわかりませんが、とにかくカジュアルで、気楽というか気さくというのか、「あそび(ヨユウ、余白、趣向)」を強く感じるのです。短くてパっと終わってしまう曲ですが私が強く惹かれるのはこういう姿勢・態度が原因かもしれません。
間奏がしっかりあって2分程度ですから、歌詞のあるところのみの分量はさらに絞られます。
ルイジアナとか、歌詞のリズムが急いている、突っこむ感じのところが好きです。
恋の汽車ポッポ第二部を聴く
こういうバックコーラスを聴いたのはなんのアーティストだったけか……ジャン・アンド・ディーンとかなのか、ビーチ・ボーイズとかだったか、ニール・セダカとかそのあたりだったか特定できませんが「第一部」バージョンになかった女声コーラスが入ります。
ボーカルの音像の近さとか質量感もボリュームアップして感じます。リードのエレキギターもよりリッチな響きです。オケやボーカルの質量感がマッチョになったので、良い意味でクラップ(拍手)がオケの中に落ち着きました。エンディングは大瀧さんの声をふくむコーラス・スキャット?のフェイドアウトの趣向です。アルバムに放り込むならこのフェイド・アウトバージョンも良い演出です。
エンターテイメント音楽のおいしいところがぎゅっとつまった快作ですね。ごきげんに音楽の線路を行けます。
青沼詩郎
『恋の汽車ポッポ』を収録した大滝詠一の『Best Always』(2014)
『恋の汽車ポッポ第二部』を収録した『大瀧詠一』(オリジナル発売年:1972、再発年:2012)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『恋の汽車ポッポ(大滝詠一の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)