カクテルの主題歌 ココモ

『HIPPY HIPPY SHAKE / ヒッピー・ヒッピー・シェイク(チャン・ロメオを原曲とするThe Georgia Satellitesによるカバー)』、『DON’T WORRY, BE HAPPY / ドント・ウォリー、ビー・ハッピー(Bobby McFerrin)』なども使用していて、『Kokomo』以外にも音楽との出会いをたくさんくれた映画『カクテル』。

1980年代後半を10代後半あるいは20歳代前半くらいで過ごした人、あるいはそれ以外の年代にさえ、『Kokomo』がビーチボーイズの代表作だという認識でいる人も多いのではないでしょうか。

私も正直、初めてビーチボーイズをちゃんと認識した機会は映画カクテルにともなう楽曲『Kokomo』がそうだったと思います。1990年代後半〜2000年代前半くらいに、夜21時くらいの日本のテレビで映画『カクテル』が放送されたことがあったと思うのです。来週は『カクテル』をやるよ、近日は『カクテル』を放送するよ!ということで、放送日以前にも、劇中使用歌や主題歌をふんだんにつかった予告がテレビでふんだんに流れるわけですよ。そうして、私に『カクテル』の音楽カッケーな!!と刷り込んだわけです。高校生くらいで音楽にかけられる予算もごく限られるその頃の私はツタヤに借りにいきました、確か『カクテル』のオリジナルサウンドトラックを無事借りられたんだったかな。

そんなわけで私にとってビーチボーイズの「The これ」感ある1曲が『Kokomo』なのですが、バンドを語るうえでのキーパーソン、ブライアン・ウィルソンがこの楽曲『Kokomo』には参加していないと今回改めて情報を漁っていて知りました。

1966年の傑作アルバム『ペット・サウンズ』はビーチボーイズ史上の語るべきハイライトのひとつだと思いますが、その後のキャリアの中でもいろんなことが起きているのだと今回知りました。

Kokomo The Beach Boys 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Mike Love、Terry Melcher、Scott Mckenzie、John Phillips。映画『カクテル』主題歌。『Cocktail (Original Soundtrack)』(1988)に収録。The Beach Boysの(スプリット)シングル。The Beach Boysのアルバム『Still Cruisin』(1989)に収録。

The Beach Boys Kokomo(コンピ盤『50 Big Ones』収録)を聴く

バミューダ、バハマ……と地名がたくさん出てくるスウィートでなめらかな旋律のコーラスのおしりあたりに、「Oooh, I wanna take you down to…」とリードボーカルがかぶさってくる。これは名ボーカルが複数いる編成だからできるアレンジ・曲構です。そのリードボーカルが出るのとクロスして、また別の低いボーカルがコーラスの終りと次のヴァースあるいは間奏とのあいだを間断なくつなぐ。ハナのある複数のキャラが折り重なり、カメラのスイッチングを忙しくさせます。はなやかな曲たる所以の1つです。

スティールパンが駆け上がるさわやかな音形と音色。トレモロストロークにアコーディオンののびやかな複音の綾。左右に広くひらいたアコギのストラミングがしゃわしゃわと風にそよぐヤシの木立のよう。

右にシェーカーかマラカスの類が開いていますが、トライアングル、タンバリン、クラヴェス(拍子木)、コンガ、ティンバレスなどのパーカッション一群は意外と中央付近の奥のほうにまとめられて、ドラムスのスネアなんかと定位が近いところにある印象です。スネアのドザーッと幅のあるサウンドとゲート感ある切れ際、パワーのあるサウンドも耳にいたくない絶妙な奥まりかた。その対比に、バスドラはこれでもかと前に出ていて音量、輪郭、アタック感とも圧倒的です。

そんな絶対安心な極楽オケに乗って、ハナのリードボーカルやボーカル群からバトンを受けとってサックスソロ。もう失敗するわけがない。

シンプルなコード進行ですがⅤmとかⅡ7などの副次調和音を随所に効果的に用いていて、複数の著名ミュージシャン・ソングライターによるチームワークを複雑にしすぎることなく和声の響きの面でのワビサビ・起伏をもたらしながら極楽の美メロを紡いでいきます。この極楽のフィルムのおわりにはフェイド・アウトが似合います。現実に戻りたくねぇな……日曜日などよりも、金曜や土曜の夜に『カクテル』を観てみたい。テレビ放送の予告やらなんやらで音楽は刷り込まれたのですが、映画のほうは案外記憶していないんですよね。テレビ放送当時、ちゃんと観たのかすら怪しい私です。公開年の1988年は私は2歳ですから、当然劇場でも観ていません。

どこかにあるようで実在の地名ともちがうKokomoを探してさまよう人生はつづく。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ココモ (曲)カクテル (映画)

参考歌詞サイト KKBOX>Kokomo

The Beach Boys 公式サイトへのリンク

『Kokomo』を収録した『Cocktail (Original Soundtrack)』(1988)

『Kokomo』を収録したThe Beach Boysの『50 Big Ones』(2012)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】どこかにある極楽 ココモ Kokomo(The Beach Boysの曲)ウクレレ弾き語り』)