私ごとながら、2010年からbandshijinというソロユニット名をつかって音楽活動をしている。だから2020年は10周イヤー。ひとり「ああそうか」である。テン・イヤーズ・アニバーサリィ・全国ツアーをやろうか。記念にベスト盤でも出そうか。ニーズは聞こえてこない。いずれも妄想のまま2020年もあと4か月を切った(当記事執筆時)。
過去につくったアルバムを配信しようと思って作業をした。今年の2月にも『TORCH』という6曲入りの過去作のEPの配信作業をしたからそれ以来だった。こういう事務っぽい作業はチマチマしてつまらない。でも間違いがあってはならない、そのまま配信されてしまうから。厳しくチェックを重ねてくれる共同作業者もいない(もちろんガイドラインに抵触しないか的な面や最低限の品質チェックみたいな配信会社によるチェックは通る)。ひとりレコード会社。いや、ひとりじゃぁ「会社」じゃない。だれとも会うことも集まることもないし、社屋もないし……と言って気付く。この頃は、そんな会社でいっぱいじゃないか? 誰とも会わないし、特に社のビルに日常的に集うこともない。そういうスタイルの会社、たくさんあるんじゃないか。レコード会社がそうかどうかは知らない。私はぽつんとした個人のただの音楽愛好者だから。音楽を仕事にするとかしないとかそれ以前の次元でずっとやってきた。
音楽をずっとやってきたとかいう割には、私がまともに音楽を「聴く」ようになったのはこのブログを始めて以降(2020〜)だと最近頻繁に思う。
自分の過去のアルバムを、配信のためにアップロードするファイル形式に変換した音楽データにおかしいところがないか、また歌詞の入稿もミスがあってはならないので改めて間違いがないか、入念にチェックしながら、送信する音源を聴きながら作業をした。
今回作業したのは自分が一度「Go」と判断して、会場手売りで発表したことのあるアルバムだった。それにしたって、やっぱり不細工で、許しがたいところがあるのだ。でも、それを改めてそのまま配信することにした。それでいい。
いまの自分だったら、このことばづかいで歌詞を書きはしないだろうという点もたくさん見つかる。それだけ私が変化したのだろう。それはサウンド面でもそうだ。今ならこういう音にはしないのにというところがたくさんある。それを聴くに、嫌だなぁとその瞬間は思う。けれど、直そうとは思わない。その頃の自分の記録だから。これは、職務でもなんでもなく自分の表現としてやったことだから。もしこれが「商品」だったら? レコード会社の社員を、バンドに関わってくれるミュージシャンを、ライブハウスの人を、流通や運営にかかわるあらゆる人を食いつながせる、その利益を生み出すための商品だったら? こんなものは実現しなかったのではないか。……いや、案外そこまで違うものになってはいないのかもしれないが、それは今の私にはわからない。
この配信のための作業した私の作品のタイトルは『奏詩曲集』。万が一聴いていただけることを願って、アルバムの配信先リンクとSpotifyリンク、その中の1曲、YouTubeにあげている曲を貼っておく。
ブログを書くネタにするために、音楽をよく聴くようになった。記事を書くためにそれをする。書いて伝えるためには、ある程度の解像度で聴く必要だし、それは私自身が新しい音楽・楽曲をつくるヒントにするためでもある。そうして、少しでも個性的な音楽との出会いを望んで、欲している。ずっとこのままでいいとも思わないし、自分を更新しながらだけど今を尽くす私がいる。
昨日聴いた南佳孝の『スローなブギにしてくれ(I want you)』が素敵だった。これを斉藤和義がカバーしていた。私はそっちを先に知った。『紅盤』に入っている。南佳孝の原曲はシングル、アルバム『SILKSCREEN』(1981)に収録。ドアタマの長3度をかさねたオーギュメントの響きと歌詞“I Want You”が悩ましい。ブルーノートをつかったメロディが最高。昨日は『SILKSCREEN』をかけながら食事した。いつも家族を巻き添えにしている。
青沼詩郎
『スローなブギにしてくれ(I want you)』収録アルバム『SILKSCREEN』(1981)
『スローなブギにしてくれ(I want you)』が入った斉藤和義のコンセプト・アルバム『紅盤』(2007)
ご笑覧ください 拙演