Mr.Children『彩り』（『HOME』収録）に寄せて　〜継ぐ者たちの「家」〜

家って、なんだろう。

家族のことか。

家族をいれる「うつわ」、屋根とか壁とかで出来た「いれもの」のことか。

あと、脈脈と受け継がれるものを指して「家」ということもあると思う。「本家」とか「家元」とかいうでしょう。

「音楽家」「武道家」「美容家」。家がつく「人」をさす呼称は多い。

ラーメン屋にも「○○家」は多い。

家は、個人を指すこともあるけれど、ある範囲内の人たちを指すこともある。

また、その範囲にいる人たちを収める「いれもの」のことを指していう場合もある。その場合は、あくまで中身の存在が前提となるだろう。

Mr.Children『HOME』から思う当時

私の人生のどれくらいを、Mr.Childrenが占めているだろう。

それは、すごく小さい範囲かもしれない。けれど、少なくとも楽曲『彩り』が収録されたアルバム『HOME』CDを持っているくらいだから、聴いたこともソフトを買ったこともないミュージシャンよりは、圧倒的に大きな割合で、私の人生の一部を占めている。

『彩り』は、アルバム『HOME』をPRするCMトラックになっていた。テレビでコマーシャルを見て、いいなと思って当時このアルバムを買ったんだったと思う。2007年だ。

13年くらい前になる。その頃の私は…21歳の誕生日を目前にした青年だった。

アルバムのリリース日が、Mr.Childrenホームページによれば3月14日。ホワイトデーに合わせたのかな。

21歳になるかならないかくらいのとき、すごく楽しかった。いや、正確には、21歳になってからかな。

「20歳になること」には、特別な意味があると思う。

その意味から開放される感じが、「楽しさ」の原因だった。

その「意味」は、ときに「重圧」だったのかもしれない。

それから開放されたうえで、限りなく若いのが21歳だから。…というのが、当時の私の思うところであった。

東京音楽大学の学生をしていた頃だった。ろくにバイトもせずに、声楽やピアノや学問のことをやりながら、多重録音で曲作りなんかを実家に住んで好きなだけやっていた。恵まれすぎて阿呆かと思う。いや、ホントありがとうございます、父さん母さん。それもまた、『HOME』。

日常を労う『彩り』

Mr.Children『彩り』　MUSIC VIDEO

楽曲『彩り』のテーマとして大きいのが、「日常」だと思う。

自分で滑稽に思ってしまうような、日常における瑣末な繰り返し、その労力。

そうしたものを、私服で労ってくれているような曲だ。

それでいて、全身で祝福しているし、親身になっている。やっぱり『HOME』という単語が持つ意味を、それが含む概念のある側面をよく表現している。アルバムのコマーシャルトラックに用いるのも納得だ。

音楽的なうんちく

バンドの編成は、アコースティックギター、エレキギター、エレキベース、鍵盤（ピアノ＆オルガン）、ドラムスそして歌。素朴な編成。過不足なしの豊かさよ。

Gメージャー、４拍子。コードチェンジを１小節単位でしたり、ところどころで頻繁にしたりしてメリハリを出している。メロでⅠはじまり、サビでⅣはじまりの好例だ。

シンプルなメージャースケールによるポップでメロディアスな桜井和寿のボーカル。素朴な曲の味わいに対して、意外にもその最前面であるボーカルの使用音域は広い。これで、曲に華やかさをもたらしている。サビの最高音はAで、メロで低いB。１オクターヴと短７度になる。あと全音ひとつで２オクターヴにまたがる使用音域。「カラオケで人気なのに難しいミスチル」と聞いてウンウンと首肯してくれる人は多いのじゃないか。