大宮エリーさんがMCをする、トークと生演奏の収録形式の音楽番組『アーティスト』(TBS)というのがありました。ムッシュかまやつさんが「ローディー」という設定でちょい役出演していました。番組のオープニング付近に使われていたファンキーなBGMが、かまやつひろし氏の『MUSIC, MUSIC』だったと思うのです。近年しばしば、かまやつひろし作品を聴き返していてふと『MUSIC, MUSIC』に行き当たったとき、「そういえばあの番組で流れていたよな」と思い出したのです。
MUSIC, MUSIC ムッシュかまやつ 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:かまやつひろし。かまやつひろしのライブアルバム『ムッシュ・ファースト・ライヴ』(1978)に収録。アルバム『Gauloise』(1994)収録のスタジオ録音がある。
ムッシュかまやつ MUSIC, MUSIC(1994年のアルバム『Gauloise』収録)
いんや〜、かっこいい of かっこいい。再発CD封入の中村俊夫さんによるライナーノーツによれば“ロンドンはウエスト・エンドのデンマーク・ストリート(楽器店の多い一角でもある)もある、その名も「アシッド・ジャズ・スタジオ」でスタート”とあり、トシ矢嶋氏がサウンドプロデュースを手がけた作品だといいます。かまやつさんと、海外勢のミュージシャンらを引き合わせてレコーディングの機会を実現した一番の功労者、と解釈してよいのかもしれません。
このアルバム『Gauloise』は、楽曲によってはかまやつさんご自身がほとんど参加されている様子がない(アルバムブックレットのクレジット表記によれば、ですが)インストゥルメンタルトラックも収録されています。『MUSIC, MUSIC』にみられる、フェンダー系ギターを思わせるクリーンクランチのファンキーでマッドネス(?)な冴えまくりでクールなカッティングギターもSimon Bartholomew氏によるもののようです。
オープニングのナインスの響きのオルガンがデューティ、いい意味で汚らしい緊張のある宙吊りな響きです。ハモンド・オルガンはJames Taylor氏による演奏。有名なシンガーソングライターにJames Vernon Taylorがいますが、同姓同名なだけのようです。
楽曲の構成やパーツ自体は至ってシンプル。ナインスの宙吊りなワンコードが尺を占めるオープニング。歌詞のあるヴァースやコーラスもコード進行自体はシンプル。ヴァースがIでコーラスがⅣ、イントロがⅤという様相です。つまりセッションにうってつけの楽曲ですね。
海外勢ミュージシャンのバックグラウンドボーカル、コーラスもクールです。
海外勢パワーじゃないかともおもうのですがセッションはその魂柱のテクスチャに左右されます。熱気もクールなシビレも、オリジナル、もとになる楽曲が、広くミュージシャンに共鳴するアティテュードがなければ発生しません。いちミュージシャン個人としてもソングライターとしても秀でたかまやつさんですが、それに他の実力のあるミュージシャンが響きあって相乗するとなおすごいものがうまれるのです。ほとんど内容があってないようなもの(けなしてるみたいな言い草ですがその意図はありません)の歌詞、主題(music, music)だからこそ、出自が違う者同士でもfree rideできるのです。
私もかまやつさんとセッションしてみたかったです。
青沼詩郎
Monsieur Kamayatsu Forever | ムッシュかまやつWEB記念館Memorialと称した、ムッシュかまやつが被写体の貴重な写真や映像をつないだ動画が公開されている“現在進行形の未完のサイト”。
『MUSIC, MUSIC』を収録したかまやつひろしのアルバム『Gauloise』(1994)。「+1」版には“ムッシュかまやつとコーネリアス・ロックン・ロール・オーケストラル・サーカスによるライヴ・ヴァージョンの「ゴロワーズ」を収録”。
『MUSIC, MUSIC』を収録したかまやつひろしのライブアルバム『ムッシュ・ファースト・ライヴ』(1978)。最初に発表された音源がこちら。尺も短めです。構成もちょっと『ゴロワーズ』収録バージョンと違います。