作詞・作曲:ばんばひろふみ。バンバンのシングル、アルバム『永すぎた春』(1973)に収録。編曲:木田高介。(参考Wikipedia

こういうスカっとした印象のシンプルで実直なサウンド、コンパクトな構成が私は非常に好きです。私の好みの引き出しでいうと、井上陽水『夢の中へ』、沢田研二『危険なふたり』など思い出します。

作詞・作曲:井上陽水。編曲:星勝。(参考Wikipedia
作詞:安井かずみ、作曲:加瀬邦彦、編曲:東海林修。1973年の沢田研二のシングル。(参考Wikipedia

『永すぎた春』『夢の中へ』『危険なふたり』にサウンドの共通点を感じる私ですが、編曲者はそれぞればらばら。悪い言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、ありのままの意味として、ありふれた、普遍的な楽器編成だったりアレンジメントだったりするのかもしれません。それこそが私の何よりの好物なのです。

『永すぎた春』は、アコースティック・ギターがジャカジャカと入っていても良さそうな楽曲の音楽性・ジャンルにも思えますが、意外にも入っていない?あるいは入っていてもかなりうっすらな感じがします。リズムはあくまでベースとドラム。ベースはなんといいますか、アタックがまろやかで音の伸びに非常にコシがありまして私の出身地域の名物の武蔵野うどんみたいな感じがします。ドラムスはミュート感・タイトめな音の余韻、まろやかな衝突音の塩梅がコシの強いベースと相まって、ボーカルを引き立てる風通しの良さを確立しています。この曲がもたらす爽やかな印象として、大きく貢献しているでしょう。

アコギがジャカジャカとしゃしゃらないぶん、コード感はオルガンが担います。ウーウーウー、といったコーラス(バックグラウンドボーカル)も貢献しているでしょうか。アコギがリズムとコードを兼ねる役割の按分を広く持っていってしまうと、ボーカルを多少マスクしてしまうおそれがありますが、アタック感の少ない、サスティンに肝のあるパート(オルガン、コーラス)がコード感を担うことでやはり風通しの良さを私に覚えさせます。

大きい印象は何よりリードギターでしょう。ギスっと歪み感のある強いサウンドで、リードプレイでは存在感ある高めの音域でリスナーをリードします。オクターブ違いで2本のエレキが同じメロディを奏でているところなど私の耳福であります。歌がメインのところではキレよく・短くカッティング。出たり引っ込んだりが好感です。

ばんばひろふみのボーカルが颯爽としていて実直で好印象です。ウーウーウー、永すぎた春がおーわーるー……のところのファルセットがまじったような可憐な歌唱が繊細な光陰を宿します。イイ声ですね。ニュアンス、情感に富んでいます。ファンになりました。バンドがつくる風通しのよい空間を抜けて行く、曲の主題:永すぎた春そのもののような颯爽としたボーカルが好感です。

青沼詩郎

参考歌詞サイト:J-Lyric>永すぎた春

『永すぎた春』を収録した『GOLDEN☆BEST バンバン+ばんばひろふみ』(2009)

ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『永すぎた春(バンバンの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)