秋に君の影

『結婚するって本当ですか』『宗谷岬』『野に咲く花のように』など有名曲の実演の多いダ・カーポのデビュー曲はこれ。オカリナっぽいエアリードの音色が印象的(動画中ではリコーダーかと思ってしゃべりました)。

ご結婚されるので結果夫婦デュオとなりそれ以降のキャリアが続いていくグループの編成。リードボーカルが刻々と入れ替わったりハーモニーしたりします。ダ・カーポが登場してのちの時代のアーティストですとハンバート・ハンバートの存在なども私のなかで重なります。

夏が終わる気持ちのかげり、感傷、センチメンタルは格好の歌の題材。ハイシーズンの象徴が夏であり、その回顧は恋愛そのもの懐かしみ、慈しみにも似ますしその夏に実際に恋愛の記憶が含まれていればなおさらです。

9月に入ると一気に夏が遠ざかります。そんな日にふと夏のニオイをむんむんに憑依したままのそのシーズンを終わりにするときに片付け・仕舞い損ねたレジャーアイテムなどが部屋の集積所から出てくると「うわ、夏がとりのこされてる……!」などと己の現在地との距離をしみじみ実感します。

夏の日の忘れもの ダ・カーポ 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:榊原政敏。ダ・カーポのシングル、アルバム『歌う風たち=ダ・カーポ アルバムVol.1』(1973)に収録。

ダ・カーポ 夏の日の忘れもの(アルバム『歌う風たち=ダ・カーポ アルバムVol.1』収録)を聴く

おふたりの声のビブラートの振幅が非常に細かく、まっすぐに伸びる印象とゆらぐ印象が同居して純白な印象です。ハーモニーで重なるオカリナの音色がお二人の存在に重なります。あるいはふたつの旋律の線が夏と秋の距離感を表現して思えます。姿がかすんでみえなくなるほど遠くはないが、手が届くほどに近くもない……そんな距離、時空の隔たりが本曲の哀愁です。

左と右にマリンバとビブラフォンでしょうか、マレットパーカスの類が定位を分けて対になっていてカウンターの挙動。こんこんと胸の扉をたたく、弾む音色が深く余韻します。

ストリングスの高域が澄み渡る流麗な印象を演出し、パサパサっとブラシでさわったようなリズムセクションがかろやかです。グロッケンとヴァイオリンが高いところから吹き下ろしてくる風のようにながく連なる下行音形。高い秋空から手のひらに夏の残り香をふわっと伝授するみたい。

「青い空、青い海」と歌い出すBセクション。青で海と空を括り清涼感のある景色を提示。まぶたのなかでだけ、日に焼けた夏の人がその青につつまれて立っているのでしょう。青は青春、若いことの象徴でしょうか。距離があくほどに尊くなっていく記憶です。

青沼詩郎

ダ・カーポ オフィシャルサイトへのリンク

参考Wikipedia>ダ・カーポ (歌手グループ)

参考歌詞サイト 歌ネット>夏の日の忘れもの

ダ・カーポのアルバム『歌う風たち=ダ・カーポ アルバムVol.1』(1973)

『夏の日の忘れもの』を収録した『ベスト ・ オブ ・ ダ・カーポ』(2023)

DA CAPO

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『夏の日の忘れもの(ダ・カーポの曲)秋に君の影【ギター弾き語り・寸評つき】』)