ONE LIFE the pillows 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:山中さわお。the pillowsのシングル(1997)。アルバム『LITTLE BUSTERS』(1998)に”album mix”を収録。
the pillows ONE LIFE(アルバム『LITTLE BUSTERS』収録)を聴く
the pillowsの歌詞が好きです。サウンドが理想だから素直にそう思えるのでしょう。
青い芥子の花びらが 風もなく揺れてたら 僕のタメ息のせいだ 憶えてないけど きっとそうさ
『ONE LIFE』より、作詞:山中さわお
風もなく物体が揺れるには人為的な何かが必要です。あるいは、「青い芥子の花びら」は観念上のものなのかもしれません。胸の奥深くの情景かもしれない。そこに吹くのは、この自然界の気圧の差異が誘う気の流れでなくて、心の揺らぎ、移ろいの息吹……「僕のタメ息」なのだと。the pillowsを心底詩人だなと感嘆します。こう感嘆に詩人だなんてホメてしまっては、いかにかれらの言葉に私が感動を覚えているか実直に伝えてくれない。もっとほかにいい言葉があるだろうに私はそれを知らない。私の感性を素手で掴み、揺さぶるのが私にとってのthe pillowsの音楽なのです。
ギターが左右で鳴ります。歪みのある倍音の豊かな音でストラミングし、リズムと響きを織りなす。言葉を載せるのにこれ以上の貨車はありません。
漂うベース。ハイフレットまで自分の庭のように浮遊します。ベースがリズムのエッジを……庭園の領域に杭を打ち縄を張っていきます。
心に直接ながしこむ音楽にこれ以上のフォーマットがあるでしょうか。私にとってバンドの音ってthe pillowsなのです。ひとつの理想形なのですね。
汚れた僕の鏡で 写せるたった一つの 偽者じゃない光 キミは僕の光
『ONE LIFE』より、作詞:山中さわお
鏡が汚れていたら、ろくに姿や空間をうつしてくれやしません。それでもそこに存在を主張するものと来たら、やはり観念上の何かでしょう。それを主人公は強く意識しているし、いつも自分を導く方向のたよりにしている。「キミは僕の光」。自分に由来する方針、つまり自分の意思や理想かもしれません。the pillowsを聴いていてよくその魅力だと思うのは、自尊心:プライドです。青々と、はつらつと、音にそれをほとばしらせる潔さです。
ONE LIFE。「ひとつ」ということで、完結したものをフレーミングする趣を感じます。主観的で感情的でもあるのですが、どこか達観、諦観したさびしさ、哀愁がたまりません。
ギターソロに泣きました。タメ息。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ONE LIFE (the pillowsの曲)
『ONE LIFE (album mix)』を収録したthe pillowsのアルバム『LITTLE BUSTERS』(1998)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ONE LIFE(the pillowsの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)