ペッパー警部 ピンク・レディー 曲の名義、発表の概要

作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一。ピンク・レディーのシングル(1976)、アルバム『ペッパー警部』(1977)に収録。

ピンク・レディー ペッパー警部を聴く

非常に勇ましいアレンジです。キックで8つ打ちを出してしまう忙しさ。バイテン(倍のテンポ)の様相です。ベースは2拍目裏で移勢をしてうねるグルーヴ。ハイハット16分割を用い、サイドのエレキギターのカッティングもピタっとタイトです。

エレキギターの逆サイドのオルガンが妙味で、タイトなメリハリで演奏します。なぜか猛烈に「コナン君」的なものを思い出します。名探偵コナンのアニメが放送され出すのはピンク・レディーのペッパー警部の発表よりずっと後年なので明らかに私の時代錯誤なのですが……警部、警察じみたものが登場するエンターテイメントを思い出させるオルガンプレイなのです。実際に「コナン」に使われている音楽のキモがオルガンにあるのかわかりませんが、不思議と私にそれを感じさせます。ほかにもさまざまあるミステリーものやサスペンスものの音楽のイメージが私の中でごちゃまぜになっているでしょう。

ピンク・レディーのおふたりの声をうしろからバックグラウンドボーカルが熱く背中を押します。ミュートの効いたトランペットがエレキギターの近くのサイドから立ち上がります。ストリングスも疾走するベーシックの間に垣間みえます。

ジワーンというのかミョーンというのか、現代のサウンドの感覚からするとどこかチープな感じもするシンセサイザーの音がアクセントになっています。いなたさの香るSF感がたまりません。発表当時のリスナーには果たしてどのような印象を与えたのでしょうか。あるいはこうしたいなたいSF感は、ピンク・レディーのほかの楽曲にも及んで、彼女たちのサウンドのはんこのような機能を果たしていたかもわかりません。クセになるサウンドです。

ペッパー警部がまるで巡査のような役割をしているというツッコミがWikipediaにみられます。なるほど、そのような瑣末な仕事といったら失礼でしょうし重要な仕事でしょうから不適切な表現かもしれませんが、少なくとも街をみまわって、問題のある人の行動を注意する、あるいはこれから問題を生じてしまいかねなさそうな人に注意をあたえて犯罪やトラブルを未然に防ぐ……という役割・業務を警部という重役がするのはおかしいということですが、確かにそうで、そこがおかしみといいますか、ツッコミどころであり愛嬌です。大衆歌に大事なものは愛嬌だと思います。現代のポップミュージックにはこうしたツッコミを受容してくれそうな楽曲が少ないと思います。もっとツッコませてくれよと私個人としては思います。たとえばGS(グループ・サウンズ)なども、盛大にツッコミを受容してくれるので私は大好物なのです。私の感覚はもう現代とだいぶズレてしまっている……のか? もちろんどんな音楽も、それなりの良さがあるのはわかっているつもりです。

ペッパーという固有名詞には当時の世の中で認知されていたいくつかの固有名詞や時事的な観念が入り混じってドリップされていたのかもしれません。破裂音の「ペ」の語頭に、「っ」の促音(つまる音)、「ぱー」の破裂音に「あ行」の開いた母音の組み合わさった固有名詞、「ペッパー」。それに「警部」がつきます。なんだかいかめしい感じです。これがサビの情報量のほとんどです。「ペッパー警部」。しかも、「ぺっぱーーーーー」……「警部!」と、「ペッパー」をめっちゃ伸ばした末に短くキレよく「警部!」とつくのです。クセになりますね。これをなんだかスラっとした美貌のふたりが艶めいた衣装で踊って歌ってパフォーマンスするのです。それはインパクトであり認知を免れないでしょう。さぞ世に衝撃とともに広がった歌なのじゃないかと想像しています。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ペッパー警部 ペッパー警部 (アルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>ペッパー警部

ピンク・レディー ビクターエンタテイメントサイトへのリンク

『ペッパー警部』を収録したピンク・レディーのアルバム『ペッパー警部』(1977)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ペッパー警部(ピンク・レディーの曲)ギター弾き語り』)