くるりが主催した京都音楽博覧会2020(9月20日)。

毎年、京都・梅小路公園で開催してきたフェス式のおまつり。地域を尊重するポリシーを映したその催しも、今年(2020年)はコロナ禍で、例年通りの梅小路公園での開催ができなかった。

京都のライブハウス・拾得で収録した映像の配信という形で実現した2020年の音博。観覧チケットやプラスアルファでTシャツのつくクラウドファウンディングのチケットの収益は京都・梅小路公園の芝生の養生につかわれるという。くるりをきっかけに巻き起こる風が、京都・梅小路公園(の芝生)や、そこから生じる文化を「育てている」という構図と解釈できる。もちろん本人たちは謙虚な態度で、「開催させてもらっている」という気持ちをいっぱいに持っているに違いない。

そのクラウドファウンディングのリターンのTシャツが、昨日私のもとに届いた。サイズはばっちり。手触りもしなやかで気持ちがよい。日常着にしようか。浮かれて写真まで撮った。

うかれている人

鼻歌でもしたくなる気持ちとともに思い起こすのは『ロックンロール』。2004年2月に出たシングル、同年3月に出たアルバム『アンテナ』に収録されている。ほか、ベストにも収録。

ところで最近私は、その作を出したときのつくり手の年齢に注目することがある。2004年2〜3月の時点で、『ロックンロール』作詞・作曲者の岸田繁27歳だった。

一方、27歳の私は何をしていただろう。結婚して身のまわりに変化を迎えたときだった。ひとり暮らしをしたことのない私は、実家を出て寝食する生活、その最初のときを過ごしていた。

『ロックンロール』リリースの2004年春頃は何をしていたか。ちょうど高校3年生になるところだった私は音大受験に向けて勉強していた。バンドもやっていたので軽音部室に入り浸ってもいた。くるりの存在を知ってファンになったのも高校生(1年か2年)の頃だった。

その時代前後のくるりの様子を思ってみる。4番目のアルバムにあたるのが『THE WORLD IS MINE』で、2002年3月。『ジョゼと虎と魚たち』サントラ(2003年11月)があって、5番目のアルバム『アンテナ』(2004年3月)があって、6番目のアルバム『NIKKI』のリリースが2005年11月。こちらはアメリカ、イギリスでレコーディングがおこなわれた。世界を舞台に飛び回っていらっしゃる。

『ロックンロール』は当時のくるりメンバーでドラマー、クリストファー・マグワイアの存在が目立つ。この曲の着想や経緯のみなまでは知らないが、彼の存在がバンドにある種の生命をもたらしたのは間違いない。1年にもぎりぎり満たないようなクリストファー・マグワイアの短い在籍期間が、くるりやリスナーにもたらした影響は甚大だろう。

最近のくるりのライブでは、サポートメンバーのギタリスト・松本大樹のエンディングでのギターソロが見応えある。今年(2020年)7月のLIVEWIREでも観たし、9月の音博でも観た。7月のほうはソロを岸田繁ギターにバトンタッチしてもいた。ドラマーは7月も9月もBOBO。バンドの体制もばっちりだ。『ロックンロール』・イズ・ライブ。

歌詞は、『ロックンロール』の名の如く、転がり、導かれるように出てきたんじゃないかと思わせる。スムーズに、雲が流れるみたいに、ずっとそこにあったかのように、ふわっと舞い降りたかのように。

岸田さんが歌詞をどうやって書くかについて語るとき「思いつき」という言葉を用いているのを見かけたことがある。彼の本人アカウントのTwitterだったと記憶している。「思いつき」を私の表現に置き換えると「自然に出てきた」ともいえそうだ。狙ってデザインするとか、自分と聴き手の関係を鋭く精確に考察して、どのように受け取られる可能性があるかを見据えて狙い撃ちするようにデザインする……そういうつくり方があってももちろんいいと思う。が、「思いつき」はそのあたりを空中からトレースしたうえで超越する手法だ。『ロックンロール』もきっとそんな風にしてやって来たと、私にそう思わせてならない。

ふわっときっかけが着床し、あとはある意味「自動運転」。もちろん、激しい戦いを何度も乗り切ったからこそ至る境地なのかもしれない。かつていろいろあった・やったからこそ、空中を滑りながら眺める景色が格別なのかもしれない。まっすぐな一本の糸のようなものも感じる。空気の新鮮さがピリリと澄み渡る、そんな響き。

青沼詩郎

https://www.youtube.com/watch?v=VrWDy6sCkEw

こちらでも松本大樹のギターソロが観られる。ドラマーはクリフ・アーモンド(という映像が見られたが非公開に)。

このMVのビジュアルのイメージが強い。空をいく線のようななめらかさ、神妙さと響きあう映像。ライブでは熱いのに。

くるり 公式サイトへのリンク

『ロックンロール』を収録したくるりのアルバム『アンテナ』(2004)。クリストファー・マグワイアのドラムスが堪能できる。エンジニア・高山徹によるレコーディングとマスタリング。

くるり『ロックンロール』MVを収録したくるりのMV集『QMV』(2020)。映像を見ながら撮影時の話、当時のくるりの様子などを語るメンバーらのオーディオコメンタリが楽しめる。 

ご笑覧ください 拙演