伊藤銀次作詞・作曲『幸せにさよなら』。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm23434366
私はこの曲をかもめ児童合唱団によるカバーで知った。彼らのアルバム『インターネットブルース』に収録されている。
原曲は大滝詠一・山下達郎・伊藤銀次によるナイアガラ・トライアングルのアルバム『Niagara Triangle Vol.1』(1976)に収録。『幸せにさよなら / ドリーミング・デイ』としてシングルカットされている。
私が大好きなのは曲が1分を過ぎたくらいの頃からのCメロ。コード進行に「ナイアガラ感」というか、たとえば具体的にいうなら大滝詠一『スピーチ・バルーン』のコーラス部のマイナーコードの使い方のようなセンスの妙を感じる。
こういうCメロのようなふわっと雰囲気の変わる部分は多くの曲ではもうちょっと、曲全体の尺に対して後ろの方に置かれると思う。こんなに前半に「変化」を感じる部分が挿入されるのはやや少数派か。この部分のあとにハーモニカ・ソロ→ギター・ソロとしっかり間奏に尺がとられている。後奏もハーモニカ・ソロにボリュームがある。歌のある部分だけを中心に他をカットしてパフォーマンスしたらかなりコンパクトにもなる曲だ。
自分の身に、その人生に、かなり影響が大きく感情を揺さぶることが実際に起きでもしないことには、なかなかこういう彩気を放つ曲は書けそうにない。実際、当時の伊藤銀次の身にも、彼のバンド「ココナツ・バンク」の解散や、実際の彼の恋愛の出来事として影響の大きいことがあったのではないか。消耗材のような紋切り型の音楽を垂れ流すようなやり方で生み出せる歌じゃないと思う。素敵で大好きな歌だ。
もちろん、泣き言いわずに紋切り型だなんだと揶揄をいくらされようとも生み出す手を止めない、たゆまぬスピードの中でしか生まれないものもあるだろう。当時の伊藤銀次にしたって、それくらいのスピードの中にいたかもしれない。その実感はご本人のみぞ知るところだ。
常におのれの最前線で音楽を生み出し続け、その日々の中に感情の動く出来事が異軸として絡む。いくつもの糸が織りなす人生こそが、おいしい音楽そのものだ。愛は音楽で、音楽は愛である。『幸せにさよなら』は、真(まこと)を体現した美しいポップソングだと思う。
青沼詩郎
『幸せにさよなら』を収録したアルバム『Niagara Triangle Vol.1』
かもめ児童合唱団『幸せにさよなら』を収録したアルバム『インターネットブルース』
ご笑覧ください 拙カバー
青沼詩郎Facebookより
“『幸せにさよなら』作曲・作詞は伊藤銀次。ウルフルズのプロデューサーとして私はその存在をしたためましたが、ご自身も歌手、シンガーソングライターでいらっしゃる。
検索を重ねていてさっき気づいたのですが、『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ、1982〜2014)のオープニング・エンディング曲『ウキウキWATCHING』の作曲者も伊藤銀次。…そうそう、確かに! 番組の音楽担当として「鷺巣詩郎」とともに「伊藤銀次」の名前をエンドロールでいつも見ていたのを猛烈に思い出しました。鷺巣詩郎の下の名前が私と一緒で、そのすぐそばにいつもあったお名前、「伊藤銀次」。急に現在の私にとって意味のある情報として浮かび上がりました。
伊藤銀次の組んでいたバンド「ココナツ・バンク」の解散が『幸せにさよなら』が生まれたいきさつのひとつとも。曲はナイアガラ・トライアングル(大滝詠一、山下達郎、伊藤銀次)名義のアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』、シングル『幸せにさよなら/ドリーミング・デイ』(1976)に収録されます。
私がこの曲の存在を知ったのは最近のことで、かもめ児童合唱団のカバーでした。”
https://www.facebook.com/shiro.aonuma/posts/3476178755809107