なんて美しい曲なんだろう。ポール・マッカートニーのアルバムはいくつも聴いている(そのすべてをすり切れるほどに聴くには未到だけど)。日々、ポールの関連作を漁りながら「うわぁ、これもいい」「こんなのもあった」「あのときのこれだ!」といった具合に出会い直しながら魅力を発見し続けている。そんな風にして、最近改めてその美しさ、精緻な味わいを実感している曲が『Warm And Beautiful』。

Wings名義でリリースされている。アルバム『At the Speed of Sound』収録。11曲目でアルバムを締めるクローズィング・ナンバーでもある。邦題『やさしい気持』の名にふさわしい。あたたかでやさしい速度感のサウンド。

音数を絞ってある。ピアノはポール・マッカートニー。低音とトップ・ノートの2音だけで伴奏している瞬間も聴き取れる。歌を含めれば3音。これで十分なんだなと、音楽の奥深さを思い知る。(私はしばしば自分の録音作品において、足し算で得られる質量に頼りがち。)

間奏のハーモニックなスライド・ギター。コーラスがかった感じのサウンドが同音連打のモチーフを潤す。雲間を割って光が射すように入ってくるホルン。ストリングスで気分もさらに潤う。

強拍に堂々とあらわれる非和声音がまぶしい。4分音符単位の動きを主にしたメロディ。同音連打と跳躍、大胆な非和声音とその解決が色彩豊か。これで十分。いや、これが十分。あったまるし、美しい。

青沼詩郎

・2020/12/18発売『マッカートニーⅢ』に関わるニュース https://www.universal-music.co.jp/paul-mccartney/news/2020-10-22/

Paul McCartney: Warm And Beautiful · Loma Mar Quartet from Working Classical

弦カル版もある。

『Warm And Beautiful』を収録したアルバム『Wings at the Speed of Sound』(1976)

『Paul McCartney’s Working Classical』(1999)

『ポール・マッカートニー作曲術』私の持つビートルズやポール・マッカートニーに関する知識のほとんどはこの本の著者の野口義修氏からいただいている。愛と知見と好奇心と発想のお人。

ご笑覧ください 拙カバー

青沼詩郎Facebookより
“ウイングス『スピード・オブ・サウンド』(1976)に収録された『やさしい気持(Warm and Beautiful)』。
なんて美しい曲なんだろうと前から思っていました。
ヴァースの同音連打とそれを破る跳躍。クリシェでトニックからサブドミナント・マイナーへ。属音上のⅡdimの響きからの解決。
コーラスでは跳躍しながら倚音(非和声音)を多用、それも経過的に美しく。滑らかに順次したり、ささやかにはみ出したり戻ったり。
音楽を彼が導いているような、音楽に彼が導かれているような神妙さ。
ホルン、ストリングス、スライドギターの演出も吉。
12/18に『マッカートニーⅢ』が出ます。新作です。ほとんどの曲で、弾き語りを録ったあとにベースやドラムをダビングするという制作法を採っているそう。このやり方で私も日頃制作をやっているので高関心です。
78歳でいらっしゃる。近年、『エジプト・ステーション』(2018)出したばっかりじゃないですか。やっぱり終点じゃなかったんですね。”

https://www.facebook.com/shiro.aonuma/posts/3475310295895953