小椋佳さんに私の関心が向いたきっかけは、私の住む西東京市の市歌(市歌なるものがあることに驚きます)『大好きです、西東京』の補作詞と作曲をしていることです。

YouTube『西東京市歌「大好きです、西東京」字幕&ふりがな付き (東京都西東京市)4k』へのリンク

どこか童謡の『』(作詞:武島羽衣、作曲:瀧廉太郎)を思い出させます。歌い出しが付点のリズムで、メロディの跳躍音程が分散で長和音の調和した柔和な響きを表現しているからでしょうね。

小椋佳さんの作で私の好きなもの 『不思議な顔』

1975年のアルバム『夢追い人』に収録された『不思議な顔』。作詞が小椋佳さん、作曲が星勝さんです。セブンスを多様したおしゃれなコードの響き。サビ頭の“Hah”の強起の長い音符が、小椋佳さんを思うとき私の頭のなかにまず立ち上がるのです。愛燦燦、シクラメンのかほりなど、小椋佳さんは有名な提供曲の多いことを匂わせる旨が西東京市の市歌のページにも書いてありましたが、その楽曲が有名かどうかをとっぱらったところで私の抜群のお気に入りが『不思議な顔』です。共演している女声のシンガーは誰なのでしょう、気になります。

白い一日

『白い一日』は作詞が小椋佳さん。作曲が井上陽水さんで、彼のアルバム『氷の世界』(1973年)に収録されています。このアルバムの白っぽいジャケットと、『白い一日』が絶妙に調和しており、このアルバムに必須の役割を果たしている気さえします。「白」の色のイメージと曲名が合っていることによる先入観が強いせいだとは思いますが、『白い一日』のぽかんとした背筋が冷え込む短調の響き、アコースティック・ギターのアルペジオとオブリガードのアコースティックギターと、柔和で可憐なニュアンスの井上陽水さんの歌唱が楽曲のサウンドのほとんどを占めるアレンジは、アルバムの表題曲『氷の世界』の攻め攻めで全力投球のバンドサウンド、ピッチもテンションも高らかな歌唱と非常に好ポジションの対比になっており、アルバム『氷の世界』に『白い一日』が必須との私の安易な評価はあながち馬鹿にできないものだと思います。

小椋佳さんのパフォーマンスする『白い一日』

映画音楽のようで、まるでスタジオジブリのスケールの大きい世界観のファンタジーものでも始まりそうな、繊細な叙情の機微を表現する揺らぐストリングスの響きに冒頭から心とらわれます。小椋佳さんの歌唱は響かせるところと抜くところの表現のメリハリが聴かせます(エエ声……)。

こちらは1976年のライブアルバム『遠ざかる風景』に収録された演奏です。

ちなみに『不思議な顔』の作曲者の星勝(ほし・かつ)さんは、井上陽水さんのアルバム『氷の世界』(Wikipediaページへのリンク)の収録曲の編曲を全面的に手掛けています。井上陽水さんと忌野清志郎さんの合作で『氷の世界』収録曲でもある私の大好きな楽曲『帰れない二人』では“もう星は帰ろうとしてる”とネタにされた(?)のがこの星勝さんだといいます。

青沼詩郎

小椋佳倶楽部 へのリンク

井上陽水 公式サイトへのリンク

井上陽水『氷の世界』(1973年)

小椋佳『遠ざかる風景』(1976年)