ティアーズ・イン・ヘヴン Tears in Heaven Eric Clapton エリック・クラプトン

ソフトなボーカルの発声がせつない。指に引っかけて「ふし」:ハンマリング・プリング奏法で装飾をつけたアコースティック・ギターが伴奏でありメインでもあり、歌とギター一体の至高である。フレットレスベースがふわふわと幻想的。

ボトルネック奏法のエレキギター、それからリード系のオルガンなのか、蛇腹楽器の類なのか、その両方なのか。フレットレスのベースも同じく、フワーッと立ち上がってサスティンするこれらのパートのアタックが至極やさしい。

リズムはボンゴもしくはコンガのラテン・パーカス。こちらもコンコン・もしくはパカポコとアタックが丸く、やさしい。トライアングルが遠くに光る低等星のように奥ゆかしく輝きを添える。

アコースティックで耳ざわりのやさしい質感が徹底されている。これ以上何もいらないし、引いてもいけない。質素なのにリッチ。一番身近なのに、来世かと思うほど遠くもある。

息や子音を感じる高域のむこうにやさしく低く響く肉体の存在感。

黙って目を閉じて涙がこぼれるようである。

2:05頃にふわっと転調する。救いのような、新しい境地に向けたまなざしのような。雲間から挿す陽光のようである。

作詞:Will Jennings,Eric Clapton、作曲:Eric Clapton。1992年のシングル曲。映画『Rush(ラッシュ)』の主題歌。

Wikipedia>ティアーズ・イン・ヘヴン

1991年に息子を亡くしたというエリック・クラプトン。有名な話だろうか。

階段の先はどこなのか。いずれ誰もが行き着く。ときには一段・二段を飛ばし駆け上がることもあるかもしれない。昼と夜を繰り返すように、徐々に徐々に自分の足と意思、あるいは意思の如何によらず、ときに非情に自然の摂理で上がっていく階段。

階段には、あちらこちらに窓がある。どれもが出口で、どれもが入口。夕陽を迎えて、朝陽を迎えて、また少しずつ最上段を更新する。今日のこの一歩は、透明な階段かもしれない。ここにまた一段あることを確かめる喜びはこの世のものだ。

その一段はどんな色、質感なのか。振り返ってみたり、先を望んでみたりしながら、そこここに開く風の通り道の先を行く人の見る景色を想像している。

青沼詩郎

『Tears in Heaven』を収録した、映画『Rush』サウンドトラック(1992)。