手と手 手と手 ザ・フォーク・クルセダーズ 曲の名義、発表の概要

作詞:きたやまおさむ(北山修)、作曲:加藤和彦。ザ・フォーク・クルセダーズのアルバム『若い加藤和彦のように』(2013)に収録。2008年のオリンパスのCMに使われた。

ザ・フォーク・クルセダーズ 手と手 手と手を聴く

加藤和彦さんの歌声が沁みます。特に2コーラス目のAメロに何かが憑依したみたいに沁みるニュアンスが歌声に宿ります。

時代を問わず、永遠に青々とした春のような曲でそれこそ若い頃のフォーククルセダーズがこの曲をパフォーマンスしていても不思議はないようなシンプルな構造の楽曲だと思います。故に、いつまでたってもその時代の人の唇に宿るのです。そう、いつの時代の楽曲なのかわからない。今この瞬間私の鼻歌として生まれたような気もしますし、100年以上前からイングランドの土地の人の口口を渡っていたような気もする。そんな普遍を感じます。

アイルランド音楽を感じる印象的な笛はティンホイッスルでしょうか。映画『タイタニック』で有名な『My Heart Will Go On』でも聴くことのできる音色です。これ以降、日本のアーティストの音楽作品にティンホイッスルが取り入れられているのに出会うたびにタイタニックを思い出します。影響が強いですね。

『手と手 手と手』で耳を引く楽器がまだあります。マンドリンでしょうか。ちゃかちゃか、ぱらぱらとした乾いた草原のような音色。複弦といって、1コース(ひとつの筋)に対して2本以上の弦が張ってある竿物(指板があるギター系の楽器)、撥弦楽器です。ミャンマーをビルマと呼んだような時代を生きた日本人には特になじみのある楽器なのかもしれませんが、1986年生まれの私は音楽鑑賞が大好きになった大人になってから意識するようになった楽器です。

意識するようになってみると、案外あちこちに遍在していることに気づきます。音楽における特定の楽器の話ですが、実はそれ以外のあらゆる物事にあてはめても同じことがいえるでしょう。その固有の存在を強く認知してみると、以外と身近にありふれて存在していたという気づきがあると思います。

間奏で近親調に転調して歌に戻る時に調も戻るのが好きです。長2度などの転調で歌の緊張感を高める転調が世のポップスには多いですが、クラシック曲などではむしろ近親調への転調が多いでしょう。学が深い……。

『手と手 手と手』の男声ボーカルのやさしくはかなげなハーモニーが可憐です。最後期といいますか、むしろオリジナルのフォークルのずっとあとに生まれ直した2000年代〜のフォークル作品ですからこのやさしげな男声の加藤和彦さん以外のハーモニーの声は、坂崎幸之助さんなのか、あるいは北山修さんなのか。

2008年にオリンパスのCMソングとして使われたとのことですが、書き下ろし(そのために新たに書いたもの)なのかわかりません。非常に普遍的な歌詞と音楽性ですので、適合する先を選ばない曲想です。カメラなどを想起させるメーカーのオリンパスですから、思い出を抽出・表現する道具としてのカメラだと思うと、『手と手 手と手』の普遍的な歌詞と音楽性がこのタイアップのための書き下ろしであっても当然納得のいく内容でもあります。「書き下ろし」と明記した広報が確認できないので、もともと曲は生まれ済みの状態でタイアップの話が舞い込み、相性のよいものが手持ちにあるからと采配したのかもわかりません。2008年にCMがOAされてから公式アルバムで円盤に収録されるまでに約5年。

「しれっと世の中にフィットしていつのまにか存在していた」(私がそう思うだけかもしれませんが)みたいに思える『手と手 手と手』の存在感は、まるで口伝えの民謡そのものです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・フォーク・クルセダーズ

参考歌詞サイト KKBOX>手と手 手と手

参考リンク ザ・フォーク・クルセダーズ ユニバーサルミュージックサイト>第4次フォークルのニューアルバム、誕生!「若い加藤和彦のように」3月30日発売決定!!

ザ・フォーク・クルセダーズのアルバム『若い加藤和彦のように』(2013)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『手と手 手と手(ザ・フォーク・クルセダーズの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)