投げキッスってする?
投げキッスって日常生活でしますか? しないですよね。いつします? ふざけてする? 友達にならできる? 恋人だったらできるでしょうか?
ふつうはしないよね、というアクションが通じることを確かめ合うのが投げキッスです。というか、その前提が共有できているから投げキッスできるのです。というのが私の思う投げキッスです。
アーティストからファンに対するパフォーマンスこそ、投げキッスのおあつらえ向きの活用シーンでしょう。みんなは、注目を浴びて活躍する、ステージでかがやくあなたを見たい。それに応えるアクションが投げキッスです。あなたが歌手とかステージに上がる人気商売の類の身柄の人であれば、投げキッスも日常のアクションたりうる。その可能性があります。
もちろん、話は戻って愛情表現というのがひとつあります。しないよね? 的なスタンスをとったように見えたかもしれませんが、私もパートナーにだったら茶目っ気でやったことがあります。白状。
いずれにしても、不機嫌で、悲観に浸っている人は投げキッスしません。
投げキッスできる精神衛生の良好さに感謝の投げキッスを。
曲についての概要など
作詞:千家和也、作曲・編曲:穂口雄右。キャンディーズのシングル、アルバム『年下の男の子』(1975)に収録。
年下の男の子を聴く
ダウンビートがブンブンおしりをふってご機嫌に歩く曲調です。ベースの4分音符がずんずんと楽曲を前にひっぱっていきます。ドラムスのシックスティーンがこまかい。ベースも、16分割でハネたような装飾的なストロークをひっかけて細かいノリを出します。
ユニゾンが基本になっているボーカル。“年下の男の子”のキメぜりふのあたりで一瞬ハーモニーになるくらいです。踊りながら3人で歌えそう。
”私のこと好きかしら はっきり聞かせて”のところで、スネアドラムがシックスティーンのストローク。細かくアクセントを移動させてニュアンスに富んだ分割です。「好きかな~、きらいかな~?」と花びらをつまみとる占いを、ドラムロールの末に「ダラララララ……ジャーン!」とシンバルがなる音効が演出するみたいに思えて微笑ましいです。
金管楽器がスウィングした印象をくれる要因でしょう。いかにも楽し気にブイブイとにぎやかします。ストリングスがうしろのほうでサァーっと脇役にまわっている印象です。
左から、ごく短いキレでエレキギターがリズムをタイトに。右にもいるギターはオブリ。ハイハットのシックスティーンが右のほうに振られています。リズムを印象付けるパートで左右に広げている印象です。
子供なの?
“真赤な林檎を頬ばる ネイビーブルーのTシャツ あいつはあいつは可愛い 年下の男の子”(『年下の男の子』より、作詞:千家和也)
Tシャツの色とリンゴで視覚的に対色の効いた映像を喚起します。子供って林檎の丸かじりが好きです。幼児なので食べきれないのが目に見えているのに、丸かじりをしたがる。絶対残すでしょ、切ってあげるからそれ食べてよとお願いしても絶対譲らない子を身近で見た記憶があります。
“忘れん坊でわがままで 意地悪だけど好きなの L・O・V・E 投げキッス 私のこと好きかしら はっきりきかせて 片方なくした手袋 ほどけたまんまの靴ヒモ あいつはあいつは可愛い 年下の男の子”(『年下の男の子』より、作詞:千家和也)
子供なの?と立てた問いを取り下げさせていただきたい。「幼児なの?」です。いえ、まあ、年齢にかかわらずいろんな人がいていいと思いますが……抜け切っています。身近な人に世話をさせる星の人もいるでしょう。「星の人」なんてのもレッテルっぽくて嫌な言葉です。いろんな人がいていいでしょう(あえて2回目)。
主人公は好きなのです。いいじゃないですか。当事者がいいって言っているんだ。幸せにしてくれよ。
つっこみどころがありすぎで楽しい傑作です。最高にごきげんに演出した作詞作曲編曲、歌ったキャンディーズに讃辞の投げキッスやろうぜ。
青沼詩郎
参考Wikipedia>年下の男の子 (キャンディーズの曲)
『年下の男の子』を収録したキャンディーズのアルバム『年下の男の子』(1975)
『年下の男の子』ほかを収録した『CANDIES 1676 DAYS〜キャンディーズ1676日〜』(オリジナル発売年:1977年)