まえがき

キングダムハーツというゲームソフトで遊んだ記憶があります。いつだったか検索してみると私の遊んだシリーズ作品の最初の『キングダムハーツ』が2002年。自分が高校生の頃のゲームソフトだったと気づきます。

主人公を操作して、おとぎの世界を駆け回るアクション・ロール・プレイング・ゲームでした。いくつものディズニー作品の世界が出てきます。そのディズニー作品の世界を横断的に冒険し、そのディズニー作品に出てくるキャラクターと主人公たちが関わりながらストーリーが進行します。

「ファイナルファンタジー」シリーズを展開するスクウェアのRPGらしい刺激的で着実な楽しさと「ディズニー関連作品」としての世界美や可愛らしさを両立した大変面白いゲームで、ゲームのメディアでファンタジーを実現した傑作でした。

私がディズニー関連音楽に触れた記憶って、意外とこの「キングダムハーツ」をプレイしたときの記憶が分量の多くを占めていることに気づきます。

「くまのプーさん」の世界もこの「キングダムハーツ」シリーズの最初の作品に出てきました。世俗の猥雑さと遠く離れた癒しキャラたちが可愛く動く世界に、主人公(ソラ、という少年でした)を通して没入したのをぼんやりと記憶しています。

 Winnie the Pooh リスニング・メモ

作詞・作曲:Richard M. Sherman、Robert B. Sherman。A. A. Milne(Alan Alexander Milne)の児童小説『Winnie-the-Pooh』(1926)を原作とするディズニー・アニメーション・スタジオの短編作品『プーさんとはちみつ』(1966)に用いられたのが楽曲の最初か。リンクのSpotify音源はタイトルから察するに『くまのプーさん 完全保存版(The Many Adventures of Winnie the Pooh)』(1977)に基づくもののようです。1966年の短編に用いられた可能性がある音源と違いがあるのか未確認。

複数のボーカルのハーモニーがあたたか。二分半ほどの尺でいくつもの展開がパックされています。

オープニングは調がふらふら。D♭調かな?と思ったらD調のドミナントにふわっとずれた?私のあたまのなかを「おやおや?」で満たしつつ、本編はCメジャーにおちつきます。

6/8拍子ふうでうるわしく導入を歌い上げると、ピョンピョンと跳ねた2/4拍子でしょうか。導入は1拍を3分割した流れるような拍感でしたが、コミカルな空気が一気に立ち込めます。8分音符をさらにトリプレットさせたようなハネたノリです。

このあたりで低音のダブルリード……ファゴットでしょうか。私に「イーヨー」を思わせます。作編曲者のなかで、このキャラはこのパートといった具合に担当楽器が割り振られているのかもしれませんね。ウッドブロック、フルートやピッコロ、フレンチホルン、クラリネット……キャラが花咲いたようにいっぱい登場します。かわいいofかわいい。

“Winnie the Pooh”の主題を跳ねたノリで唱えるコーラス。折り返すとテンポアップです。

エンディングで活躍する目を引くリードトーンはエレキギターでしょうか。クリーンであたたかなストロークです。ハープが支えます。ハープはグリッサンドすれば絢爛さが一瞬で顕現する楽器ですが、こうした穏やかなバッキングの表情も魅力的。

エンディングの乾いたサウンドはシロフォンの高い音域のあたりでしょうか。キランとグロッケンで決め。もっと前のほうにも登場していたかと思いますがグロッケンの音がまろやかでやさしく気持ち良い。

あたまの中が「かわいい」でいっぱいになる演奏がモノラルで詰まっています。ストリングスがみずみずしくうるわしい。

アニメ、原作の絵本からゲーム「キングダムハーツ」まで、また個別の楽曲をこうして味わって……100エーカーの森から出て来られなくなりそうです。

青沼詩郎

参考歌詞サイト JOYSOUND>Winnie the Pooh

参考Wikipedia>くまのプーさん(ディズニー)

参考Wikipedia>くまのプーさん 完全保存版

参考Wikipedia>キングダム ハーツ シリーズ

『くまのプーさん』ほかディズニーの有名曲を多数収録した『ディズニー・ベスト 英語版』(2018)

『くまのプーさん 完全保存版』(オリジナル劇場公開年:1977)

シリーズ一作目の『KINGDOM HEARTS』相当の『KINGDOM HEARTS FINAL MIX』含むシリーズ6作品がPS4で遊べる『キングダム ハーツ – HD 1.5+2.5 リミックス』(2017)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Winnie the Pooh くまのプーさん ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)