Wonderboy The Kinks 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Ray Davies。The Kinksのシングル(1968)。
The Kinks Wonderboy(『The Kinks Are the Village Green Preservation Society (50th Anniversary Deluxe Edition) [2018 Remaster]』収録)を聴く
子の性別は親の思い通りになりません。パートナーが妊娠した子が男であるのを期待したことがこの楽曲の背景だといいます。実際は女の子だったようです。
右のほうから古楽器。チェンバロでしょうか。パリパリと弦が弾かれるサウンドがきらびやかです。
左から「La la la……」と唱えるサイドボーカル。バックグラウンド(背景)ボーカルというにはかなり音量バランスとして存在感が大きいです。リードボーカルを凌駕するくらいのバランス感ではないか。
このサイドボーカルと古楽器のきらびやかな音色が相まって、お花畑の不思議ちゃんな印象を私に与えます。
ふわふわとした和声感覚が独特です。Gメージャー調で長閑なフィールを基本にしますが、“Wonderboy”と歌う演奏時間0分41秒あたりのところでG→E♭→Gの動き。準固有和音の響きで、まったく血縁のない世界の召喚ではないのですが子が思わぬ顔つきをしていた! という意外性があります。隔世遺伝みたいな感じでしょうか。
ポコポコとラテンパーカッションがぽつねんとした衝突音とヌケる響きでアクセント。テシテシと鳴るスネアの輪郭とコンビネーション。ベースは輪郭やアタックよりも質量感や重心重視の役割でズモっと底のほうを支えます。胎盤みたいな存在感です。
ピアノが真ん中付近で和声とリズムの中心を担います。ピアノだけで伴奏してもだいぶ格好のつく楽曲です。
エンディングで意識がぐらつくようなねじ曲がり感。いよいよWonderboyが生まれちゃうよ! 陣痛が来ちゃったみたいな錯覚がします。ⅴからⅳへと低音がぐにゃんと下行する感じです。
自然の蠢きの神秘と絶対的な導線が“wonder”の観念でしょうか。おいでおいでこの世へ。日本の歌謡の『こんにちは赤ちゃん』的なポジションにも思えるロックレジェンドソングです。
キンクスって雑食。ラウドで刺激的なレパートリーもあるかと思えばカワイイのも不思議なのもある。ヘンテコなグループで惹かれます。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Wonderboy (The Kinks song)、ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ
The Kinks – The Kinks Official Site
デラックス・エディションとして『Wonderboy』を収録した『The Kinks Are the Village Green Preservation Society』(オリジナル発売年:1968)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Wonderboy(The Kinksの曲)ピアノ弾き語り』)