作詞・作曲:Andrew Joseph DiTaranto, Guy Hemric。レイフ・ギャレット(Leif Garrett)のシングル『Feel The Need』(1979)のB面に収録された『New York City Nights』の田原俊彦によるカバー。日本語詞:小林和子。田原俊彦のシングル、アルバム『TOSHI’81』(1980)に収録。
『ハッとして!Good』を聴いたときにも思ったのですが、トシちゃんの歌唱が青青として非常にかわいい。愛嬌たっぷりです。最近まで(今も?)少年だった子が、遊んでる大人の社交場にデビューした。そんな様相を思わせます。
リズムを重視して、キレよく歌唱するアクセントを感じます。なにせ、タイトルが哀愁でいと。“I should date”のしゃれのようです。英語っぽく聴こえる日本語でまっさきに思い出すのは桑田佳祐さん。奥田民生さんの作品からも感じます。私の趣味とするところです。はっぴいえんども大好きで最近もよく聴くのですが、彼らの打ち立てた(?)日本語ロックとソラミミ系・しゃれ系の「英語っぽくきこえる日本語」はまったく違います(いうまでもないでしょうか)。はっぴいえんどの日本語ロックには心から称賛を送りますし心底敬愛しますが、英語っぽい響きを噛み締めて味わう日本語の茶目っ気も私は大好きです。その最高峰のひとつがサザンオールスターズだとここではお茶を濁させてもらいましょう。
レイフ・ギャレットの原曲で、サビ(コーラス)のところで“I should date”などという表現はないようです。楽曲を日本語にして田原さんに表現させるうえで、制作陣や日本語詞を書いた小林和子さんが発想したアイディアが“I should date”だった、といったところでしょうか。ざっくり恋だか愛だかを主題にすれば、原曲のディティールはよくもわるくもかなり「無視」が効くかもしれません。わるくいう意図はありません。ベイシティ・ローラーズのヒットソングなども思い出す、ぶんぶんとベースが昇降するグルーヴの大衆が楽しめる歌ものの流れを見事に組んでいると思います。
トシちゃん(愛称で失礼)の青青とした歌唱をささえるのは、先述のベース、しゃらしゃらとはなやかなアコースティックギターのストラミング、ピアノのストロークが私としては顕著で重要な比重に感じます。バック・グラウンド・ボーカルのはつらつとしたエネルギッシュな合いの手も、社交場に来る新参の青年をがっつりと支えています。エンディングで歌唱のニュアンス、ダイナミクスを使い分けている感じがするのも好きなところです。これがトシちゃんのデビュー・ソングだったのですね。1980年6月のリリースが『哀愁でいと』で、約3ヶ月後の1980年9月にかの『ハッとして!Good』のリリースが来ます。いや〜、楽しい。
青沼詩郎
2010年に新版をリリースしています。歌唱の練磨、キャリアの功を感じます。
オリジナルバージョンをリマスターした『哀愁でいと (NEW YORK CITY NIGHTS)』を収録した田原俊彦の『オリジナル・シングル・コレクション 1980-2021』(2021)
『哀愁でいと (NEW YORK CITY NIGHTS)』を収録した『BEST OF 田原俊彦』(1998)
2010年のNEW RECORDING(新版)の『哀愁でいと (NEW YORK CITY NIGHTS)』を収録した田原俊彦の『35th Anniversary All Singles Best 1980-2014』(2014)
田原俊彦が歌った『哀愁でいと』の原曲『ニューヨーク・シティ・ナイト』を収録した『The Leif Garrett Collection』(1998)
ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『哀愁でいと (NEW YORK CITY NIGHTS)(田原俊彦の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)