恋人への贈り物
恋人ができると指輪など贈りたくなるのが初々しい少年心です。少年でなく、むしろオトナでしょうか。より強くお互いが恋人であることを象徴するシンボリックなアイテムを贈りたいと欲する情熱は、若ければ若いほど高いもの、という気もします。そこ割ける予算は若いほどに低そう……という現実も。
指輪など贈りたいとなるとぶちあたる問題がサイズです。相手の指のサイズがわからない。でも調べようと思ってもふつう個人の指輪のサイズなんてどこにも公開されていません。図書館に行ってもネット検索してもそんなデータはありません。ネット上に自分の指輪のサイズを公開する人が……世界中のどこにもいないとはいえないでしょうが……
相手の指を計ろうなんてしたら、指輪を贈りたいコンタンがみえみえです。結婚することが二人の間で決まったならもちろんその手はずをとればいいのですが、ギフトで驚かせたい初期の恋人のあいだで相手の指のサイズなんて測れやしません。
現実的な手段は、なんとかして、相手がすでに所有している、その身(指)に合ったサイズの指輪を拝借することです。でも盗むみたいになってしまいますね。「これ借りる」と告げたらそれこそコンタンが(以下同文)。
しかも少年心としては贈った相手に自分が贈った指輪を左手の薬指とかにはめて欲しいと願うでしょうが、左手の薬指にあうサイズですでに相手が所有している指輪となるとそれは過去の恋人から贈られたものか? なんて思うと複雑かもしれません。結婚の約束とかする前の恋人から贈られた指輪だったら左手じゃなく右手の薬指にするものでしょうか? よくわかりません。
とにかく指輪はハードルが高い。そこでブレスレットだとかネックレスだとか選べば無難なのです。無難じゃイヤなのだ! という少年(なぜか少年にこだわる)はもう苦労するとか冒険するとかしかない。どうぞ旅をし冒険をせよと少年に願うばかりの私です。
銀の鎖 ザ・リンド&リンダース 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:利根常昭。ザ・リンド&リンダースのシングル(1968)。
ザ・リンド&リンダース 銀の鎖を聴く
ハスキーは言い過ぎですが、ボーカリストのちょっとがんばってる感じのコシとわびさびのある声質・歌唱が恋にその身をささげている感じが出ていて魅力です。
右から聴こえるベースがブイブイ。ドライブ感があるサウンドですし、頻繁にしゃくりあげるようなグリッサンド。ニュアンスをめちゃくちゃ出してくる雄弁なベース。ドラムスはダカッと硬派でガッツのあるサウンド。右からきこえます。いわゆるこの年代特有の、ベースやドラムスといった地盤楽器(勝手に命名)が左右に開いた現代の常識で考えるとアンバランスな定位ですが『銀の鎖』の音源を聴くにちっともそれを感じさせません。むしろ良い。
左からはチラチラとグロッケン。輝きを添える埋もれない帯域と衝突音、金属質の響きがバッチリです。ホエ〜とゆらいだトーンのオルガンは右。好き。
ボーカルのディレイが奥にぬけていき、ゴーゴー喫茶なのかダンスホールなのか知りませんが当時のGSの聖地とかフィールドを思わせます。ストリングスがこれに対してドライな質感なのがなんか良い。お互い相容れないようでいて、聴き分けがしやすいです。ストリングスの音質が個人的に好み。
間奏で12弦ギター、それからピアノの低音のソロが目立ってきます。『サボテンの花』(TULIP)とか『空に星が綺麗』(斉藤和義)とかを思い出すピアノの低域。こういうのも一度は私もやってみたくなる定番なピアノづかいです。
銀の鎖は恋人がギフトするブレスレットの描写でしょうか。もし主人公が男性だとすれば、女性のお相手がつけてくれたシーンなのかもしれません。
歌謡臭というのかGS臭というのか、マイナーのじっとりした調性もありますが描いていることは恋にときめいている初々しい心のように思えます。こういうのをメンバーが演奏する竿物・ドラム・オルガン編成でやる。ストリングスやらパーカスやらブラスやらが足される。もう定番ですね。時代のサウンドの鑑です。ザ・リンド&リンダースは関西のスパイダースと呼ばれたとか呼ばれないとか? 最近まで知りませんでしたがいいGSバンドです。アルバムが出ていないのがGS七不思議だそう。そんな七不思議もあるのですね。
青沼詩郎
『銀の鎖』を収録した『ザ・リンド&リンダース Meets ザ・ヤンガーズ コンプリート シングルズ』(2000)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『銀の鎖(ザ・リンド&リンダースの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)