SMAPのアルバム版とシングル版、槇原敬之さんのセルフカバー版を聴き比べてみます。

世界に一つだけの花 SMAP 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:槇原敬之。SMAPのアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』(2002)収録後、シングルバージョン(2003)をリリース。作詞・作曲者:槇原敬之のアルバム『EXPLORER』(2004)にセルフカバーを収録。

槇原敬之 世界に一つだけの花を聴く

ギター類の演奏がすごく良いです。左にいるのはマンドリンか何かでしょうか。右にはアコースティックギター。左右いっぱいにひらいて、16分割のストラミング奏法なのですがアクセントのつけかたが細かくて躍動的で極めて生き生きとしています。

マッキー(愛称で失礼します)のバックグラウンドボーカル、ハーモニーワークと左右のギター類、それからエレキギター。これらのステムデータだけでためしに聴いてみたいと私に妄想させます。

そう、このエレキギターの宇宙的な深く壮大な響き、空間へのアプローチがめちゃくちゃいいですね。アルバム『EXPLORER』のジャケットイメージに引っ張られているせいでしょうが、きわめて「宇宙的」なスケールの大きいサウンドのエレキギター。好いですね。

ギター類とマッキーの声以外はおおむねプログラミングのサウンドでしょうか。

先日、赤い鳥の『みちくさ』という楽曲を聴いて、そのサウンドの良質さと、それぞれのサウンドの質感、分離のよさと空間に余裕のあるサウンドにたいへん感動したのですが、それとは対極に、マッキーの『世界に一つだけの花』はひしめきあうサウンドの集合による華々しさを感じます。

まるで花束のように、手元の空間に多様な個性が調和してぎっしり詰まっているのです……なるほど、さすがです。これは「世界に一つだけの花」というテーマの縮図ですね。素晴らしい、さすがです。あるいはところせましと並ぶ、歌詞の通り、「花屋の店先」ですね。そこここに注目すべきひとつひとつの個性と彩りがひしめきます。

印象的なトーンは映画『タイタニック』のイメージを象徴するあの曲『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』にもつかわれている『ティンホイッスル』でしょうか。宇宙的な規模感をイメージさせると同時に、いまここに自分が足をつけている地面、その限定的な土地を想起させます。ここからどこへ歩いていこうと、その未来が祝福されている。友愛に満ちた傑作です。マッキーありがとう……(;_;)(勝手に愛称で失礼しました)。

SMAP 世界に一つだけの花 CDアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』(2002)を聴く

歌い手が部分によってどんどん変わっていくスタイルの楽曲を私はあまり聴き慣れていないのですが、殊に『世界に一つだけの花』という個性を肯定する傑作においては、アイドルグループが歌うパートを分担する様式がばっちりハマっていると感じます。歌い手が頻繁に変わると落ち着きのない印象を抱いてしまいがちな私ですが、この楽曲においては成功していると思えるのです。

エレキギターののびやかなストラミングの緩急がリズムとサウンドの腰をつくります。

キックの四つ打ち、強拍をこれでもかと強調する特性は日本人の国民性とか「音頭」を私に思わせます。これは絶対的に、オモテ拍四つ打ちでハンドクラップするタイプの楽曲ですよね。指揮棒でいったら「叩き」のグルーヴです。

エレキギターのつくる「コシ感」のなかで、マンドリンらしき撥弦楽器のトレモロが長く尾をひくように漂っていきます。

エンディングはフェードアウトですね。どう処理するかでかなり印象が変わります。アルバム中の3曲目に収録されており、次への流れがあるところに構成された『世界に一つだけの花』なりの意匠をほどこされています。

SMAP 世界に一つだけの花 シングルCDバージョンを聴く

さまざまなサウンドが走馬灯(不謹慎?)のようにめくるめく登場して意表を撫でていきます。感動が深いです。シングルバージョンがより好きかもしれません。比べるものじゃないって?

アコースティックの撥弦楽器のストラミングが絢爛です。それからピュンピュンとうごめくプログラミングの音? は、膜につながった棒をこすって不思議でコミカルな「うなり声」「うめき声」のようなサウンドを出す打楽器「クイーカ」にも似ています。果たしてなんのサンプル音なのか、あるいはシンセの音でしょうか。このトーンはマッキーのセルフカバーバージョンのオケサウンドにおいても名脇役です。また、絢爛なアコースティックの撥弦楽器のストラミングも、マッキーバージョンのオケに共通します。スマップのシングルバージョンは、マッキーバージョンとオケの要素が似ています。私の中でもあいまいな実感ではありますが、『世界に一つだけの花』といえばこのSMAPシングルバージョンを自分の記憶に刷り込んだ回数が多めかなという気がします。

エンディング付近でこんなギターソロ(ソロじゃないけど、リードフレーズ)を弾いていたんだと気づきます。シンガロングのラララ……で大団円です。

ストリングスの伸びるコシ感がエレキギターのサスティンと相乗して至極華やかで厚い音の層をなします。門倉聡さんがストリングス・アレンジにクレジットされています。

むすびに

スマップのシングル版がマッキーバージョンと通ずるものを多く感じたので今一度マッキーバージョンを聴いてみましたがやはりこれはこれでまた全然印象が違います。やはりサイドの撥弦楽器かき鳴らしがリッチで比重多め、豊かな響きとリズムのエッジと肉迫感に秀でます。地平に朝が来るようなボーカル始まりのアレンジと歌唱が秀逸です。

青沼詩郎

参考Wikipedia>EXPLORER (槇原敬之のアルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>世界に一つだけの花

槇原敬之 公式サイトへのリンク

SMAP ビクターサイトへのリンク

『世界に一つだけの花』を収録した槇原敬之のアルバム『EXPLORER』(2004)

『世界に一つだけの花』を収録したSMAPのアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』(2002)

SMAPのシングル『世界に一つだけの花』(2003)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『世界に一つだけの花(SMAPの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)