Do Wah Diddy Diddy Manfred Mann 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Ellie Greenwich、Jeff Barry。 Manfred Mannのシングル、アルバム『The Manfred Mann Album』(1964)に収録。

Manfred Mann Do Wah Diddy Diddyを聴く

ピーピーとオルガンの音色。頭がぐらぐらするような魔力的な……麻薬的な音色です。インスタントラーメンの味を知ってしまった原始人の気分。

褒め言葉として、チープでインスタントな味わいなのです。工場メイドの大量生産品が社会を嬉々として回しはじめる高度経済成長の黎明期みたいな気分です。世の中が活気づいて、どんどん良くなって、信じられない魔法みたいなことが次々に起こって実現していくみたいなそんな気分。

Singin! と呼びかけてバックグラウンドボーカルがレスポンスします。グループ音楽はこうでなくちゃ(ソロ名義のシンガーだってそういうスタイルの音楽を数多やりますし)。

主題の“Do Wah Diddy Diddy”からして、ほとんど思想めいたものを排除する趣です。今この瞬間の体感覚、感情の爆発。チョコレートで舌がとろける恍惚感(逆か……舌でチョコレートがとろける……)。それをそのまま「言葉」で言わないように、感覚や本能のバチバチ火花をそのままリスナーにぶつける主題が“Do Wah Diddy Diddy”だと思います。どろっどろの得体のしれない物体X(固形だか液体だかもわからない)を両手からしたたらせながら満面のハッピーフェイスで「はい、コレ!♪☆」と渡されるような気分。

「なにこれ?」

「おいしいんだよ!」

「おいしいの?」

「きもちいいよ!」

「きもちいいの?!」

「なんなのソレ?!」

「“Do Wah Diddy Diddy……”」

答えになってない。いいんですそれが。「それでいい」じゃなく「それがいい」。

歌詞の内容をざっくりみるに、起伏とか起承転結のあるドラマだとかじゃなさそう。浮き沈みや光と影のコントラストで魅せる類の詞じゃない。彼女にシビれた! ぼくらはハッピーだ! 的な、光や幸福や本能の歓喜一辺倒に思えます。

音楽的にしいていえば、演奏時間1分30秒頃からの展開が単純明朗な曲想にちょっとしたワビサビを呼び込んでいる感じもします。

ティンパニがドンドコなるのがいいですね。ドラムとのかけあわせというよりは、どっちかが出るところではもう一方はひっこむ感じでしょうか。ドラムトラックのバッサリした編集のしかたなんかがヘッドフォンで聴くと観察できてその大胆さといいますかけんもホロロなザックリ感に私は笑かされる。いいですねこういうの。包装をやぶいて板チョコレートをむさぼり食う感じです。

甲本ヒロトさんが、音楽と出会う衝撃について語るとき『Do Wah Diddy Diddy』を挙げるエピソードをなにかしらのメディアで知っている人も多いのではないでしょうか。私がはじめて甲本さんのこのエピソードを見知ったのは『ロックンロールが降ってきた日』っていう本だった気がします……(記憶を混同していなければ)……ほかにもいろんなメディアが同一のエピソードを取り上げているかもしれません。

チョコレートウマイなー。インスタントラーメン最高だなー。そういう感覚と重なる気がするんですよね、『Do Wah Diddy Diddy』の魅力って。

いまでこそ、チョコレートもインスタント麺もその存在が私にとって当たり前だし、むしろそればかりを毎日大量に食べ続けて幸せで健康でいられるかといえばそれは違うと思うのでむしろ自分とは距離をおいている存在でもあるのですが、私が原始人で、はじめてこれを知る瞬間の衝撃と来たらそれは宇宙から啓示がふってきたかと思うくらいの恍惚だと思うんですよね。妄想過多ですが……

青沼詩郎

参考Wikipedia>Do Wah Diddy Diddy

参考歌詞サイト GENIUS>Do Wah Diddy Diddy

『Do Wah Diddy Diddy』を収録したManfred Mannのアルバム『The Manfred Mann Album』(1964)

ロックンロールが降ってきた日 (P-Vine Books、2012) 

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Do Wah Diddy Diddy(Manfred Mannの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)