Sing Carpenters 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Joe Raposo(ジョー・ラポソ、もしくはラポーゾ)。アメリカの子ども向けテレビ番組『Sesame Street(セサミストリート)』の挿入歌として1971年に書かれる。Carpentersの実演が有名。シングル、アルバム『Now & Then』(1973)に収録されている。
Carpenters Sing(アルバム『Now & Then』収録)を聴く
歌唱の子音の一つひとつにウットリします。ボーカルミュージックに親しむことで英語を学習しようという非ネイティヴにとって、ザ・ビートルズかカーペンターズかというくらいに定番ではないでしょうか。
上行音形のアルペジオをピアノがひたすら繰り返します。上への視線。天真爛漫な心。純粋な気持ちの恒続を想起させます。アコースティックピアノもいるし、エレクトリックピアノもいるでしょうか。
ポーポポ……とイントロから可愛い音色。リコーダーの音でしょうか、エアリード系の楽器です。このモチーフの提示を受け取ってオクターブ下の音域で金管がレスポンスします。これくらいの音域は……トランペットなのかな。世にも柔和なブラスサウンドです。2本(以上)の描線の綾を感じます。

カーペンターズらしいといいますか、ベースとドラムスのサウンドがフェザーのように軽い。ドラムスはカレンの演奏でしょうか。2・4拍目、スネアをオープンで鳴らすとうるさくなりすぎるポイントでハイハットを使うのも私の思うカーペンターズ印のサウンドです。
ハープのグリッサンドの余韻が飛び立つ鳩の群れが落としていくひらひらと舞う羽根の如し。バンドが止まった時にもスポットライトを引き寄せるハープ、MVPを贈りたし。
E♭メージャーの本編、1コーラス目を経て間奏の途中でイントロのモチーフを受け取ったかと思えば唐突にCメージャー調に転調します。唐突といいつつも、E♭にとって平行調の同主長調がCメージャーですから唐突さにも品があります。ウィットのあるジョークみたいに、会話の中での連続性を尊重しながらも意表を突く流れです。
その流れでリードボーカルは児童合唱へタッチ。可愛らしくも瑞々しく凛とした溌剌とした児童らの歌唱です。ヴァースを経て元調のドミナントを経て元のE♭調に戻る流れ。ウィットのあるジョークをきっかけに記憶に残る旅のエピソードを披露したかと思えば目の前のテーブルの上の美食の話に戻るみたいな。こんな紳士にエスコートされたら惚れてまうやろ構成と呼びましょう。
完全に、生粋のカーペンターズのオリジナルソングだと思い込んでいました。元はアメリカのTVプログラム、セサミストリートの挿入歌だそうでオリジナルアーティストの名義が不明です。番組で使われるときは児童合唱になっている時が多いらしいとか。曲が書かれたのが1971年とされておりカーペンターズのシングルとアルバム収録での『Sing』の発表が1973年ですから、セサミストリートの番組で1〜2年ほど児童合唱などによるパフォーマンスで用いられ視聴者にすりこまれてからのカーペンターズヴァージョンの登場!という経過だったのかな? と察します。
『プリーズ・ミスター・ポストマン』を聴いたときにも、カーペンターズのサウンドいかにもこれ!という気がしていましたが、正確にはカバーソングだった……という「へぇ」の記憶があります。カーペンターズにかかると、兄妹グループのオリジナルのサウンドになってしまうのです。
Singを収録したアルバムの後半(B side)はカバーのオンパレードになっています。ラジオDJがしゃべりでつないでいくみたいな演出になっていますね。
時代を超えてもうっとりする音楽をたくさん残したカーペンターズ。賞賛に値します。
青沼詩郎
参考Wikipedia>シング (セサミストリートの曲)、ナウ・アンド・ゼン (カーペンターズのアルバム)
参考歌詞サイト KKBOX>シング – Album Version
『Sing』を収録したCarpentersのアルバム『Now & Then』(1973)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Sing(Carpentersが歌ったSesame Streetの挿入歌)ピアノ弾き語り』)